納車1~2か月後の悲劇! テスラEV「サイバートラック」のボディに、突如「オレンジ色の斑点」が現れ始めたワケ

「サイバートラック」にさび発生

サイバートラック(画像:テスラ)

サイバートラック(画像:テスラ)

 テスラは、先進的な電気自動車(EV)の開発・生産で世界的に注目を集めている。そんな同社が発表した意欲的な新製品「サイバートラック」は、米国だけでなく日本でも正規ディーラーが販売するEVピックアップトラックだ。

 サイバートラックはEVピックアップトラックという珍しいコンセプトだが、テスラはサイバートラックの先進性を表現するため、ボディ全体に高強度ステンレスを採用した。ボディに塗装を施さず、シルバーのメタリックな光沢を放っているのもサイバートラックの大きな特徴だ。

 ステンレスは一般的にさびない金属とされており、待ち望んでいたユーザーは、永久に美しいシルバーボディを期待していたことだろう。

 ところが、サイバートラックの納車直後から車体にオレンジ色の斑点が発生するという不具合がユーザーから報告されており、2023年末に納車が始まってからわずか1~2か月でこの不具合が発生したということが相次いでいる。

 斑点は車体表面の金属さびが原因で、無塗装のステンレスむき出しの車体にさびが発生した結果である。テスラの先進EVが原始的なさび問題に悩まされていることを残念がる声は多いが、先進性と環境性能を両立させたサイバートラックも実用面ではやや不便なようだ。

さび発生の要因

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)

 ステンレスは一見さびない金属のように見えるが、実はある条件下でさびが発生する。ステンレスは「Stainless-Steel」(染み、汚れのない鋼材)という名前を持つ非常にさびにくい合金で、家庭の台所のシンクや食器などでおなじみの金属である。

 毎日台所で水にぬれても赤さびが出ないことから、ステンレスはさびない金属と思われているが、実はステンレスは製造段階からすでにある意味で「さびている」のだ。

 ステンレスの表面には、含まれるクロムの効果で不働態皮膜という薄い膜が形成され、あらかじめ表面全体が一種のさびで覆われているような形ため、他のさびが発生しにくくなっているのだ。

 ステンレスの表面が傷ついても、傷ついた部分にすぐに不動態化皮膜が形成されるため、乱暴に扱っても水に対する耐久性を失わない。

 ただし、酸性の液体や薬品と反応すると赤さびや茶色のさびが発生することがあり、ステンレスはさびないわけではない。また、金属間の電位差によって発生する“電食”と呼ばれる、他の金属と接触することで発生するさびもあり、表面に異なる金属が接触していてもさびが発生することがある。

 テスラのサイバートラックは通常、駐車中や走行中に炎天下や雨天、過酷な条件にさらされることが多く、道路に巻き上げられた金属くず、他の車両のブレーキダスト、オイルや排ガスに含まれる酸性成分など、ステンレスをさびさせる要因は多い。

 また、テスラは取扱説明書のなかで、サイバートラックのステンレス製ボディの取り扱い方法について、腐食性物質が接触した場合は直ちに洗浄するよう指示している。しかし、ボディにさまざまな物質が付着することは日常茶飯事であり、日頃からボディを洗浄しておかなければ、さびの発生を完全に抑えることはできない。

 サイバートラックを日本で手に入れることは可能だが、その魅力のひとつであるステンレスボディの維持には相当な苦労を強いられることになるだろう。

修理の際にも要注意

2024年3月25日発表。主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)

2024年3月25日発表。主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)

 ステンレスによるさびの問題は、サイバートラックだけの問題ではなく、実は私たちが日常的に乗っている車にも発生する可能性がある。

 ステンレス製品は身の回りにあふれており、普段はさびない便利な製品として扱われている。しかし、機械部品としてのステンレスには前述の“電食”の問題が残っており、自動車部品としてステンレスが使われることはほとんどない。

 また、自動車のカスタマイズや修理の際、特にその問題を知らない人が作業した場合、ステンレス部品を不用意に取り付けてしまうことがあるので注意が必要だ。

 一般的な車のボディやエンジンなどの部品は、ステンレス以外の高張力鋼や炭素鋼で作られていることが多く、最近ではアルミニウムも多用されている。

 これらの部品を組み立てる際には、一般的に鋼製のボルトやナットが使用されるが、自動車メーカーは“電食”を考慮して材料を選定しているため、一般的には電食が大きな問題となることはない。

 しかし、カスタムパーツの取り付けや後々の修理でボルトを紛失したり、さびの心配からステンレスボルトを組んだりすると、それが弊害となり、さびの発生を早めてしまうことがある。

 特にアルミニウム製のエンジンブロックにステンレスパーツを装着した場合、電位差が大きいため“電食”の影響が大きくなるため、基本的にステンレスパーツの装着は避けた方がよい。

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