エキュートで「エキナカ」概念を創造! 都市開発で輝く「JR東日本」の絶対的実力

都市開発で存在感を見せるJR東日本

JR東日本のロゴ(画像:JR東日本)

JR東日本のロゴ(画像:JR東日本)

 大手鉄道事業者は、歴史的にも都市開発に大きく関わってきた。近年の都市開発シーンで存在感を見せているのが、JR東日本だ。

 2001(平成13)年の完全民営化以降、さまざまな商業施設開発を推進している。2000年代は「いざなみ景気」の真っただ中だったが、バブル崩壊後の長い景気後退を経て消費者の生活志向が変化し、商業デベロッパーは消費者ニーズをなかなかつかめなくなっていた時期だ。

 それまで都市開発をリードしてきた私鉄系デベロッパーもバブル崩壊によるリゾート事業、百貨店事業などの低迷を引きずり、当時の開発シーンでは精彩を欠いていた。

 そんななか、JR東日本系デベロッパーは新しい発想の開発を打ち出して注目され、全国にそのビジネスモデルが拡大するようになっている。

ターミナルに隠れていたビジネスチャンス

エキュート東京のウェブサイト(画像:JR東日本)

エキュート東京のウェブサイト(画像:JR東日本)

 まず、注目されたのは「エキナカ(駅改札内)」開発である。2005(平成17)年にオープンした「ecute(エキュート)」はエキナカの可能性を提示して注目を集めた。そもそも、エキナカという言葉自体、同施設の登場によって一般に普及したものだ。

 駅利用者のための商業施設としては駅ビルがすでに全国で整備済みであり、都心ではファッションビルと化していた。駅改札内の小売り業態としてはキオスクやニューデイズ、駅そばなどの小規模な店舗、外食などのチェーンなどが出店している状況で、それらは主に駅利用者の利便性をサポートするものだった。

 ecuteは駅空間と商業空間を一体化させ、それまでの不動産業的な発想ではなく、マーチャンダイジング(商品化計画)コンセプトも一貫して総合的に構築した点が新しかった。

 現在、エキナカ業態以外の「mAAch ecute 神田万世橋」も含め、15店舗のecuteや「ecuteEDITION」が営業している。

 2005年の12月には東京メトロが同じくエキナカ商業施設である「Echika(エチカ)」をオープンさせた。

 これらのエキナカ開発は、大量の人が行き交う広域交通網のターミナルに大きなビジネスチャンスがあることを示唆した。そして、高速道路のサービスエリアにおける商業施設開発「ミチナカ」、空港ターミナルにおける商業施設開発「ソラナカ」の開発も活発化していくことになる。

注目された高架下開発

日比谷OKUROJI(画像:(C)Google)

日比谷OKUROJI(画像:(C)Google)

 さらに、注目されたのが高架下開発である。

 2010(平成22)年に「2k540 AKI-OKA ARTISAN」、2013年に「CHABARA AKI-OKA MARCHE」を秋葉原駅~御徒町の高架下にオープン。同施設は職人のものづくりをテーマに、クリエイターの工房的店舗を集積させ、CHABARAは日本の食をテーマにした店舗が入居した。

 ワークショップを開催する体験型店舗が含まれたことも特徴である。それまでの都市部の商業施設は人の流れの多い駅周辺の繁華街に集中して開発されていたが、目的性の高い店舗を導入することによって、高架下というデッドスペースを新たな商業立地に変えたと言える。

 さらに2014年には「阿佐ヶ谷アニメストリート」(阿佐ヶ谷駅~高円寺駅の高架下、2019年に営業終了)、2020年には「日比谷OKUROJI」(有楽町駅~新橋駅の高架下)をオープンさせている。

 これらの高架下開発はいずれも地域性を重視した開発コンセプトを設定し、それぞれ独自の特徴があるが、その地域特性を読み間違えると人の多い繁華街でない分、難しい立地であることも提示してくれた。現在、その他の私鉄でも高架下開発が推進されている。

コロナ収束後の商業施設の行方

ウォーターズ竹芝周辺の様子(画像:(C)Google)

ウォーターズ竹芝周辺の様子(画像:(C)Google)

 JR東日本は大型都市開発プロジェクトも推進してきたが、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大によって、国内の都市開発を取り巻く環境も激変している。

 都心では東京オリンピック・パラリンピック開催による国内客やインバウンドの集客拡大を見越し、大手デベロッパーの大型プロジェクトが幾つも進捗(しんちょく)していた。しかし、東京オリンピック・パラリンピックの開催延期とともに大型プロジェクトのオープンも延期され、結局、東京オリンピック・パラリンピックは無観客試合に、大型プロジェクトはコロナ禍でのオープンとなった。

 JR東日本は2020年8月に「JR東日本四季劇場」「アトレ竹芝」「メズム東京、オートグラフ コレクション」(JR東日本グループホテル、265室)などからなる大型複合施設「ウォーターズ竹芝」(東京都港区)をオープンさせている。

 今後、コロナの感染拡大が収束したとしても、オンラインショッピングの台頭などにより、消費者がリアルの商業施設を利用する状況は元通りにはならないと考えられている。リモートワークもある程度は継続され、外出する機会やモチベーションも変化していくだろう。

 そもそも、生活者の意識自体、コロナ禍では仕事より家庭を重視するようになったり、日常生活や地域を重視するようになったりと変化してきている。

 また、商業施設を構成するナショナルチェーンのテナントはコロナ以前から業績を後退させており、コロナを期に大幅に店舗を減少させたり、撤退したりするブランドも相次いでいる。そのため、従来の商業施設開発のスキームではもはや床を埋めきれなくなってきているのが実情である。

非接触型サービスの進化

JR東日本クロスステーションのウェブサイト(画像:JR東日本クロスステーション)

JR東日本クロスステーションのウェブサイト(画像:JR東日本クロスステーション)

 コロナ禍では特に外出を伴うサービス、接触型のサービスが業績に大きなマイナス影響を受けた。

 すでに周知の通り、対面販売を旨とする百貨店などの小売業界や、ホテル・旅館などの宿泊業界、レストラン・居酒屋などの飲食業界への影響が大きかった。さらに劇場・ライブハウスなどのライブ・エンターテインメント業界、カラオケなどのレジャー業界も大きな影響を受けている。

 コロナ禍が長期化するなかで、各業界では事業存続の危機感から、かつてないほど大胆な施策を実行し、むしろイノベーションが急速に進展している。物販でも非接触型のサービスを取り入れた企業では、業績が上がる企業が見られるようになってきている。商業開発も従来にない発想が必要になってきていると言える。

 都心部では依然、大手鉄道系デベロッパーの大型開発プロジェクトが幾つも控えている。JR東日本では中野駅や高輪ゲートウェイ駅周辺などの開発計画が見られるが、社会構造や消費者意識の変化を踏まえた開発が求められるところだ。

 また、話をエキナカに戻すと、2021年4月にエキナカ開発を推進してきたJR東日本リテールネットのほか、鉄道会館、JR東日本フーズ、JR東日本ウォータービジネスの4社が統合され、エキナカ・駅周辺の店舗事業を担うJR東日本クロスステーション(東京都渋谷区)が設立されている。

 事業効率化の一環だが、コロナ禍で鉄道事業者の経営が厳しいなか、かつての私鉄大手のように

「統合 → 縮小」

の流れになっていくのかが危惧される。今までのような発想の開発を持続するのか、注目したい。

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