新型コロナ 10都府県に緊急事態宣言

企業業績が二極化する「K字回復」の様相、株式市場も業績相場に移行か

猛烈なスピードで3万円を突破した日経平均株価(写真/時事通信フォト)

 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第13回は、株高に沸く市場の「潮目の変化」について分析する。

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 日経平均株価は2月15日、ついに30年半ぶりとなる3万円の大台を突破した。コロナ禍にもかかわらず勢いを増す現在の株高は、各国中央銀行が行っている大規模な金融緩和によって、株式市場に大量の資金が流入したことによる「金融相場」そのものとされてきた。しかし、ここにきて企業業績が改善し、「業績相場」へと移行する兆しが見え始めている。

 東証1部上場企業の3割以上が、今年3月期決算の業績予想を相次いで上方修正し、さらに2020年10~12月期の実質GDP(国内総生産)成長率も市場予想を上回るなど、業績相場への移行を示唆する指標が目立ちつつある。個別企業に目を向けても、ソニーや任天堂などコロナ禍の“勝ち組”企業は過去最高益を更新し、東証1部上場のある素材メーカーによると、「中国をはじめアジアを中心に需要が拡大しており、コロナ前の水準を上回るほど」という声も聞かれるようになった。景気低迷で落ち込んでいたと見られる鉄鋼需要も回復を見せ始め、日本製鉄などの鉄鋼株は2月に入って上昇している。

 もちろん、日本経済全体を見渡すと、2度目の緊急事態宣言で人の動線が抑えられたことで、飲食店や宿泊施設、交通機関などは厳しい状況が続いているが、製造業を中心に一部の分野では景気回復が現実のものとなりつつある。経済全体が「V字回復」というわけにはいかないものの、上がるところと下がるところが二極化する「K字回復」の様相を呈しているのだ。これまで、「コロナは未だ収束の見通しが立たず、景気回復などまだ先の話」といった見方が強かったが、一概にはそうとも言えない状況になってきていると言えるだろう。

 こうした動きを受けて、株式市場の潮目も変化している。行動経済学の観点で言えば、従来の「フレーミング効果」が崩れ始めている状況だ。フレーミング効果とは、簡単に言えば物事をある“枠”に当てはめて“思い込む”こと。株式市場はこれまで、コロナ禍で「企業業績は低迷」という“フレーム(枠)”をはめ込んで、「業績が回復しないのが当たり前」、「しばらくは金融相場が続く」と思い込んできたが、少しずつ状況が変わり、「どうもそうではなさそうだ」という思惑が広がり始めたことで、業績相場へと移行する新たな局面を迎えているようだ。

 実際、株式市場ではそうした「潮目の変化」にいち早く気付き始めた買いが広がっている。日経平均株価が昨年11月に2万4000円を超えてから、わずか3か月で6000円も値上がりし3万円の大台を超えてきたのも、それが一因だろう。株価は、金融相場から業績相場に移行することで上昇をより確かなものにしていく。まだ楽観視はできないが、業績相場へのシフトが進んでいけば、さらなる株高も予想される。

 コロナの収束次第ではあるが、日経平均株価が3万円の大台を超えた今、少なくともそこからさらに5~7%の上昇、つまり3万1500~3万2100円程度までには達することが予想される。日本経済を覆っていた「フレーミング効果」が崩れ始めた以上、早い段階で「日経平均3万2000円超え」があってもおかしくはないだろう。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。

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