幸せな在宅介護を導く秘訣 自宅の場所と広さ、そして心構え

急な体調の変化に対応するため、医療機関から車で30分以内に(イメージ)

 いままで、介護の理想といえば、細やかなサービスを受けながら安心して生活できる介護付き有料老人ホームに入居することだった。だが、全国各地の高齢者施設でクラスター(集団感染)が発生し、多くの死者が出た。高齢者が集団で住まう環境下では感染被害が深刻化することが明らかとなり、感染が拡大する地域の施設では、入所者に帰宅を促す動きもある。

【図表】在宅介護を成功させる「介護保険サービス」

 とはいえ、「在宅介護」は家族の仲がいいからといって、必ずしも成功するわけではない。介護保険制度を活用して、お金も手間もかけずに行うことが失敗しない重要なコツだが、公的制度やサービスを使いこなせば必ず成功するわけでもない。家庭ごとに合う介護の形態はさまざまだ。

 ケアタウン総合研究所代表の高室成幸さんも「向き、不向きはある」と話す。

「若い頃、親に迷惑をかけたり、離れて暮らしていて、『いままでの分も親孝行する!』などと気合を入れてケアをする人もいますが、これは自己満足的な介護になりやすい。この構図は夫婦でも同じで、浮気などをして妻を散々泣かせた夫が、妻の介護に没頭するというパターンも多い。自分中心で、“やってあげている”という気持ちがベースにあるので、思いどおりにいかないときに暴言、暴力を起こしやすいんです」(高室さん・以下同)

 介護される側も、する側も納得できる「在宅介護」をするためには、本人とやりとりできるうちに「人生会議」をやっておくことが欠かせない。

「まずはキーパーソンを決めましょう。司令塔となる家族を1人決め、重要な決定は必ずその人を中心に行う。日常の介護にかかわることは、家族それぞれで分担しても構いません。家族は、自分たちの手で介護したいと思っていても、本人は子供におむつを替えられるより、プロにやってもらいたいと思っていることもあります」

◆2LDKより広い家は不要

 場合によっては、住み慣れたわが家を離れた方がいい場合もある。40代女性・Aさんの話。

「うちの実家は田舎の山にあり、父はのどかな環境で最期まで暮らしたいと望んでいます。足腰もかなり弱ってきたので、介護認定してもらって自宅をリフォームしようと思ったのですが、相談窓口では在宅介護ではなく、施設をすすめられました」

 在宅介護の基準として、在宅医療を受けるクリニックが遠くても車で30分以内、距離にしてだいたい16km圏内に存在するという目安がある。それ以上離れると、いざというときに医師が駆けつけられない恐れがあるからだ。

 国が構想する「地域包括ケアシステム」でも、「地域包括支援センター」を中心に、病院や介護施設などの必要な施設は車で30分程度の距離におさまるよう設置される。その距離を超えるなら、転居も手段の1つ。

「在宅介護は2LDKの広さがあれば充分ですから、広すぎる自宅は処分し、駅の近くなど便のいい物件を購入するという考えもあります」(高室さん)

 ひとりで介護を抱え込んだり、金銭面で困窮して生活がままならなくなっては元も子もない。入念なシミュレーションこそが“幸せな在宅介護”を導く秘訣であることに間違いはないようだ。

※女性セブン2020年7月2日号

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