「今日、ケンタッキーにしない?」KFC絶好調を支える名コピー

コロナ禍でも絶好調のケンタッキーフライドチキン

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、軒並み外食産業が苦境に喘ぐなか、「ケンタッキーフライドチキン」(以下KFC)を展開する日本KFCホールディングスが絶好調だ。5月13日には、4月の既存店売上高が前年同月比33.1%増と発表。実に17か月連続で前年同月比売上増となっている。

【写真】今や「特別な時の食事」ではない?(ケンタッキーのオリジナルチキン)

 広告業界では、高畑充希が登場するCMの「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーが相当効いていると分析している。同CMシリーズは2018年6月から開始されている。そして今、KFCの好調とともに、広告業界では外食チェーン担当者から「KFCのようなキャンペーンをやりたい」という声が頻繁に出ているという。

 元々、KFCのメニューと言えば、「クリスマスの時期に家族で食べる特別なもの」といったイメージが定着していたが、「日常食」として利用できるセットメニューを強化。ランチタイムには500円でオリジナルチキンにドリンク、ビスケット、ポテトが付いてくる「Sランチ」などを展開するなど、割安なセットなどもふんだんに用意している。

 そうした「日常食」戦略と合わせて企画されたのが、高畑を起用するCMだった。大手広告代理店のプランナーは「今日、ケンタッキーにしない?」がいかに優れているかを、こう語る。

「まず、見事なコピーです。KFCは誰もが食べたことはあるし、好きだけど『そういえばあったな』といった感覚を持つ人が多かった。誰もが美味しいことは分かっているけど、“特別感”がありました。だからこそ『今日軽い気持ちであのおいしい味を食べようよ』というコピーに多くの人がハッとし、KFCを食べたくなったのでしょう。久々に食べたらやっぱりおいしかったことから、コピー通り『今日、ケンタッキーにしない?』を実践する人も増えているのではないでしょうか」

 CMでは、家族の夕食の場にフライドチキンが登場するものもある。この時、家族はご飯と一緒にフライドチキンを食べているのだ。こうした「日常食」として表現することによって新たな需要を喚起したという点でも、KFCのCMは高く評価されている。

 広告業界のクライアントからは、成功している企画を例に“○○みたいなことをしたいんだけど……”という声がよく聞かれる。たとえば今回のコロナ自粛期においては、ポカリスエットがウェブ会議ツールのZoom風画面で高校生が歌うCMをスピード感を持って発信したが、実際に他のメーカーから「ポカリスエットみたいな企画をしたい」といった声も出ているという。

 そして、外食産業からは、「KFCみたいなことをしたい」という声が数多く出ているという。それこそ、ファミレス、回転寿司、牛丼、ハンバーガー、うどんなど、ありとあらゆる外食産業の巨大資本が「日常食」「そういえばあったな」といった感覚を消費者に持ってもらいたいと考える状況にあるからだ。

 元々KFCはテイクアウト向け需要が多かったことは事実だが、コロナ禍でも好業績を続けていることから、前出のプランナーは、「KFCのこのコピーが、今後ますます“神格化”していくのでは」と見ており、次のように続ける。

「コロナが収束した後も、外食産業をクライアントとする場合は、『KFCはこの状況下でも大成功した。同じようなことをできないか?』といったオーダーが出てくると思います。我々もそれに応えられるものを考えたいですが、『今日、ケンタッキーにしない?』を超えるものを作るのはけっこう難しいですよね……。

 KFCの業績がコロナでも良かったことを考えると、皆さん『ホッとできる味』を求めていたということもあるでしょう。今回、私も『定番商品』の強さを感じましたし、これからの提案に繋げられる勉強になりました。宣伝に関わる人たちは、これを超える提案をしたい、と発奮していると思います」

 高畑CMと今回のコロナ禍を経て、KFCは「(クリスマスなど)特別な時の食」という従来のイメージに加え、「日常食」「緊急時の食」という新たなイメージも獲得した。これからの外食産業のマーケティングはますます知恵とひらめきが求められることになるだろう。

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