苦境のパチンコ業界 人気機種の設置期限延長は救世主となり得るか

設置期限が延長されることになる『ぱちんこCR真・北斗無双』

 5月14日、新型コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態宣言が39県で解除された。これを受け、それまで休業していたパチンコ店も次々と営業を再開している。パチンコ業界に詳しいフリーライター・藤井夏樹氏はこう話す。

【写真】パチンコ店でも新型コロナウイルス対策

「いち早く休業に踏み切った全国規模の大手チェーンの店舗を含め、緊急事態宣言が解除された地域での営業が再開されています。営業を再開した多くのホールは、来客にマスクの着用を求めたり、手袋を無料で配布したり、遊技台を1台空けて稼働させたりと、様々な形で感染防止の対策を実施しているようです。

 とはいえ、今回のコロナ禍によって、パチンコ業界に対する世間の風当たりが強くなったのも事実。休業によるダメージも大きいですが、むしろ大変なのはこれからではないのでしょうか。さらなるバッシングや、それを起因とした客離れといった現象も予想されます」

 厳しい状況にあるパチンコ・パチスロ業界主要6団体は5月1日、警察庁に対して、5月以降に撤去する予定の検定・認定切れとなった“旧規則機”の設置期限延長を求めた。そして、これを受けて、警察庁は5月14日、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」及び「遊技機の認定及び型式の検定に関する規則」の一部を改正。“旧規則機”における検定・認定の有効期限の1年間延長を認めることとなった。

“旧規則機”とは、2018年の規則改正前にホールに導入された、現行機種よりも比較的出玉性能が高いとされる機種のことだ。

 具体的には、パチンコの『ぱちんこCR真・北斗無双』、『CR大海物語4』、パチスロの『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』、『押忍!番長3』など。全国のホール情報を発信するポータルサイト「P-WORLD」の設置台数ランキングでは、『ぱちんこCR真・北斗無双』がパチンコの1位、『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』がパチスロの1位なっている。

「規則改正から2年ほど経っていますが、旧規則機は今でもホールのメイン機種です。それら人気がある機種の設置期限が延長されるということで、ホール側のメリットも大きいでしょう」(藤井氏)

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【5月22日、編集追記】

 業界14団体からなる「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」は5月20日、設置期限が延長される旧規則機の取り扱いについて、以下のように決議した。

●2020年12月末までに検定・認定が切れる遊技機
・「高射幸性遊技機」については当初の検定・認定切れの日付までに撤去
・パチンコの羽根モノ、ちょいパチ、甘デジ、パチスロのノーマルAタイプは当初の検定・認定切れの日付から7か月以内に撤去
・上記以外は2020年12月31日までに撤去

●2021年1月1日以降に検定・認定が切れる遊技機
・「高射幸性遊技機」については当初の検定・認定切れの日付までに撤去
・上記以外は2021年11月30日までに撤去

 となっている。すべての旧規則機の設置期限が延長するのではなく、機種のタイプや検定・認定切れの時期によって、撤去されるタイミングが異なる。

「高射幸性遊技機」とは、旧規則機の中でも射幸性が高いとされている遊技機のこと。本文中に登場する機種の中ではパチスロの『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』が該当する。つまり、『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』については、設置期限が延長されることなく、当初の予定通り2020年11月に撤去される見通しだ。
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 パチンコ・パチスロの遊技機は、保安通信協会(保通協)という国家公安委員会の指定試験機関で行われる「型式試験」で適合だと判断され、さらに国家公安委員会による検定を通過した機種のみが、ホールに設置できる。検定の有効期限は3年。3年経過後はホールが国家公安委員会に申請し、“認定”を受けることで、さらに3年間の設置が可能だ。

「基本的に、パチンコ機、パチスロ機は、検定申請から最大6年間設置できるというルールですが、検定・認定の期限が過ぎた機種も“みなし機”と呼ばれて、実はホールに設置してあったんです。

 しかし、2018年2月に規則が改正されると、より射幸性が抑えられた機種でないと検定を通過できなくなるとともに、改正前に検定を通過した“旧規則機”を“みなし機”として設置できなくなった。予定では2021年1月末までに一部例外を除いて多くの旧規則機が撤去されることになっていましたが、それが今回の警察庁の判断によって旧規則機を1年間長く設置できるようになります」(藤井氏)

 旧規則機の設置期限延長はホールにとって、様々な意味を持つようだ。

「新型コロナウイルスの影響で売上が下がっているホールにとって、設置台数が多い旧規則機を撤去して、その代わりに新台を導入するのは、コスト面での負担が大きい。その出費を先送りにできるということです。また、入れ替え時に業者や従業員が感染する危険性を指摘する声もあり、感染防止という点でも一定の意味はあると思います。

 旧規則機のファンを逃さないという効果だけでなく、新規則機への移行期間が伸びるという点でのメリットもあります。向こう1年間で、人気を獲得するような新規則機が登場すれば、旧規則機のファンを繋ぎ留めることもできるかもしれません」(藤井氏)

◆設置期限延長にユーザーは何を思う

 旧規則機の設置期限延長について、パチンコ・パチスロユーザーはどんな感想を持っているのだろうか。

 神奈川県に住む会社員Aさん(30代男性)は、休日や仕事帰りに、週1~2回ほどパチンコを打っている。

「私は基本的に『北斗無双』しか打ってないので、設置期限が延長するのは単純に嬉しいです。『北斗無双』がなくなったら、パチンコをやめようかなと思っていましたが、とりあえずもうちょっとパチンコを楽しもうと思います」

 ちなみに、ホールにおけるコロナ感染についてはどう思っているのだろうか。

「満員電車なんかに比べれば、感染リスクは低いかなあという感じはあります。私がよく行くホールは各台計数(出玉数を自動で数えるシステムのこと。ドル箱は使わない)で、パチンコ玉にもそんなに触らないから、それほど不潔な感じもしない。隣の台との間にアクリル板も設置してあるし、正直そんなに心配していません」(Aさん)

 都内に住む自営業のBさん(40代男性)はパチスロファンだが、2018年の規則改正以降、ホールに足を運ぶ頻度は確実に減っていると話す。

「6号機(パチスロの新規則機のこと)は出玉が緩やかで、“大きく勝てない”という印象で、そんなに打っていません。凱旋(『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』のこと)や番3(『押忍!番長3』のこと)はそれなりに打ってきましたが、そろそろ面白くて出玉がある新機種が打ちたい。これから1年以上、凱旋や番3ばかりを打つということは考えていません(*注)。

【*編集追記:『ミリオンゴッド-神々の凱旋-』は2020年11月に撤去される予定。このコメントはそれが発表される前のもの】

 個人的には、打ちたくなるような魅力のある機種が出てこない限りは、パチスロへはあまり行かなくなると思います。ちょうどこの休業期間で、パチスロに行かない生活に慣れたので、このままやめられそうな気もしています」

 はたして旧規則機の設置期限延長は、苦境のパチンコ業界の救世主となり得るのか。歓迎するという声もあれば、必ずしもそうでもないという声もあるようだ。前出・藤井氏はこう話す。

「たしかに設置期限延長にはそれなりのメリットはありますが、これでユーザーが増えるかというと、それは難しいでしょう。今いる旧規則機のファンを逃さないようにするのが精一杯で、新規のユーザー獲得にはほとんど効果はないと思います」

 新型コロナウイルスだけでなく、パチンコ業界は今、さまざまな課題を直面している。

「4月から始まったホール内での禁煙化の影響も小さくないですし、依存症対策にもしっかり取り組んでいかないと、世間からのバッシングはますます高まっていくでしょう。とにかくパチンコ業界が厳しい状況であることは間違いない。ここからV字回復するには、新規ユーザーを大きく取り込むくらいのヒット機種が登場するような出来事が必要かもしれません」

 新型コロナウイルス、出玉規制、禁煙化、依存症対策、そしてバッシング。果たしてパチンコ業界は、これらの課題や困難を乗り越えることができるのだろうか。

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