最小回転半径4.8mの取り回しのよさ! スズキの“扱いやすい”クーペスタイルSUV「フロンクス」
スズキが2024年10月16日に発売した新型SUV「フロンクス」は、乗ってみるとバリューフォーマネー、払った金額に見合う価値が十分ある1台とわかります。
「扱いやすいクーペスタイルSUV」というのが、スズキによるフロンクスのコンセプト。全長4mを切るサイズに抑えられた車体に、1.5リッターマイルドハイブリッドエンジン搭載。車重は1トンそこそこと軽量です。
■ウリは最小回転半径4.8mの取り回しの良さ
スズキの技術陣が、加えて強調するのが、取り回し性の良さ。ホイールトゥホイールの最小回転半径が4.8m。サスペンションシステムをはじめタイヤまわりのレイアウトとともに、195/60R16サイズのタイヤを組み合わせることで、小回りの効く回転半径を実現したと、担当開発者は語ってくれました。
小さな回転半径は、日常使いにおいて、たいへん重要だと私は思っています。ボディサイズがそれなりに大きくて、前後席が広くても、ステアリングがよく切れれば、どんな場所でもすいすいと走れるからです。
思い出すのが、昔(80年代)所有していたフランスのシトロエンのGSという4ドア車です。前輪駆動なのですが、凝ったジョイントを使って前輪がよく切れ、街中で実に扱いやすいクルマでした。当時のメルセデス・ベンツのミディアムクラス(W124まで)も驚くほど切れました。
フロンクスでは、狭い道がくねくねと続くような市街地を走る機会はありませんでした。でも、大きなホテルの駐車場ではたしかに、90度よりきついターンとか、車庫入れとか、やっぱり便利だなあと思わせるような“性能”ぶりを体験させてくれたのでした。
フロンクスでもうひとつ驚いたのが、後席スペースの広さ。メルセデス・マイバッハか? と思うぐらい(ちょっとおおげさですが…)足もと空間に余裕があります。ホイールべースは2520mmで、ヒップポイントで測った前後乗員距離は885mmも確保されているのです。パッケージングがいいのでしょう。そのぶん荷室は210リッターとやや小さめなので(後席シートにスライド機構はありません)割り切りの良さが特徴です。
■高速の回転の伸びはいまひとつながら十分な性能
1.5リッターエンジンは、ターボを持たない自然吸気型。マイルドハイブリッドシステムが組み合わせてあり、発進加速でのもたつきは感じられませんでした。昨今よくあるのは、この程度の排気量のエンジンにはターボチャージャーを組み合わせて、中間加速の伸びをよくする設定ですが、フロンクスはノンターボでも高速の合流でかったるさを感じることはありませんでした。
ただ高速での回転の伸びはいまひとつ。さっそうと交通の流れをリードするというわけにはいかなそうです。もちろん不安はなく、高速では必要十分の性能であります。
■ステアリングは操縦しやすく乗り心地しっかり
▲座り心地のよいシートに、チルト&テレスコピック機能のついたステアリングホイール
ステアリングフィールは、過敏ではないけれど、しっかり中立ふきんで反応してくれます。広いマーケットを担当するSUVのなかには、中立ふきんでハンドルを動かしたときに車体の反応をあえてやや鈍くする設定もみられますが、フロンクスはいい感じです。操縦しやすく、しかも楽しさまで感じられます。
乗り心地も同様で、しっかりとしていますが、路面からの突き上げは抑えられています。スタイルはSUV的ですが、クーペライクなデザイン性をうたうだけあって、乗用車的です。シートの出来もよくて、からだによくフィットしてくれ、振動吸収性にもすぐれていました。とりわけ感心したパーツです。
安全支援システム、「スズキコネクト」というスマートフォンと連動した各種サービス、スマートフォンの画像もみられるインフォテイメントシステム、さらにルーフキャリアやカータープなど豊富なオプションの数々と、日常的な使い勝手をよくしてくれそうな装備がそろうのも、フロンクスの魅力でしょう。
価格は、今回乗った前輪駆動モデルが254万1000円、4WDが273万9000円。2トーンルーフ仕様は5万5000円からのオプションです。
▲スマホ連携メモリーナビゲーションが組み込まれたインフォテイメントシステム
【Specifications】
Suzuki Fronx FWD
全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm
ホイールベース:2520mm
エンジン:1460cc直列4気筒(マイルドハイブリッド)
駆動:前輪駆動
最高出力:74kW@6000rpm
最大トルク:135Nm@4400rpm
変速:6段オートマチック変速機
車重:1070kg
燃費:19.0km@L(WLTC)
価格:254万1000円
>> スズキ
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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