使い始めて17年!「ユキワ M-5」はコーヒー沼にハマるきっかけを作ってくれたコーヒーポットの定番
<編集長の愛用品 Vol.2>
コーヒーを淹れる時、ドリッパーさえあればひとまずコーヒーの抽出はできますが、“より美味しく淹れたい”と、こだわり始めるとコーヒー道具を揃えたくなります。コーヒーサーバー、コーヒーポット(ドリップポット)、コーヒーミル、スケール、温度計と抽出に欠かせない道具はいろいろありますが、揃える順番は人それぞれ。とはいえ、まずはドリップポットという人も多いのではないでしょうか。
私もその1人で、きっかけは2007年、コーノ式珈琲塾という私塾に入門したことにあります。ここはコーノ式コーヒーフィルターという円錐形ドリッパーを発売する珈琲サイフオンの社長が運営する塾で、コーヒーを学びに全国各地から多くの人が門を叩き、座学でコーヒーの基本的なことを、実践で抽出方法、焙煎の仕方などを学びました。
そんな珈琲塾で出会ったコーヒーポットが、今も愛用する三宝産業の「YUKIWA(ユキワ) M-5」です。
コーヒーについて右も左も分からない素人にとってポットの必要性は分かりませんでしたが、授業は全員同じモノを使って行うということで購入。当時、1万円ほどした(気がします)ポットは高いな〜という感想しかありませんでした。
そんな意味も分からず注文したポットが到着すると、塾長がペンチでギュッと注ぎ口を曲げたのです。その理由はのちに分かることになりますが、これがコーヒー沼にハマる分水嶺になりました。
&GP編集長|澤村尚徳
月刊『GoodsPress』の編集長を経て、『&GP』の編集長に。趣味は旅行、キャンプ、コーヒー焙煎ほか多岐に渡る。捨てられない性格で、部屋にはモノが溢れている
■18-8ステンレス製で重厚感のある作り
YUKIWAは、新潟県燕市に本拠を構え、ステンレスを材料とした業務用卓上器物を得意とする三宝産業のブランドです。その中でM型コーヒーポットは、当時、喫茶店のマスターが使うポットといえばYUKIWAが思い浮かぶほど、印象深いプロ御用達の逸品。
18-8ステンレス製の重厚感ある作りで、容量の違いでM-7(1000cc/1万8400円)、M-5(750cc/1万6900円)、M-3(400cc/1万4400円)がラインナップされていますが、3〜4杯まで淹れるのにちょうどいいのがM-5です。
本体は約529g(実測値)で、湯を入れれば1kgにもなる重量級。当初は手がブルブルし、湯量の調整も注湯する位置のコントロールもままならないほど。それでもこの重量に慣れると安定して注げるようになります。
持ち手は中空で上下左右に空気孔が開けられており、湯の熱さが伝わりにくい仕様。また適度に太さがあるためしっかりと握れ、注湯のコントロールがしやすいのです。
ノズルは、付け根が太く先端に行くにつれスリムになる形状で、大きく傾ければお湯を太く大量に、小さく傾ければ細く少量の湯を注ぐことが可能。ポットの特性を知り、湯量のコントロールができれば抽出がブレないことを学び、次第にポットの必要性を感じるようになったのです。
■同じM-5なのに、似て非なる2台
▲左が後から手に入れたノーマルのYUKIWA M-5。右がコーノ式珈琲塾で購入したもの。外観に違いはないものの、左はたまにしか使わず、右は家を留守にする時以外、17年間ほぼ毎日使っているためくすんでいます以後17年間使っている愛用品なのですが、実はもう1台所有しています。
塾で購入したものは塾に置いておくため、自宅で練習ができない…ということで自宅で練習用にもうひとつ購入。ところが、ポットのことをあまり知らなかったので普通に注文したところ、微妙に違ったのです。
左のノーマル版は目皿(中の網)があり、右の珈琲塾で購入したものは最初から付いていません。目皿が付いていない分、傾けた際、手の動きに合わせてダイレクトに湯量が反映されるのです。
注ぎ口の先端は、左がノーマル版で右が珈琲塾版。右は先端をペンチで曲げたものでわずかながら下向きになっています。これには理由があり、コーノ式で習う淹れ方はコーヒー粉の上にポタポタと湯を置くように落とす点滴抽出という方法。
ノーマル版はスーッと細く弧を描くように注湯できますが、ポタポタと抽出するには先端を曲げてある方が落としやすいのです。
今では注ぎ口が最初から曲げられているモデルが、「コーノ特別仕様ユキワポットm-5」(2万3600円)として出ているようです。
ちなみに塾で使用するのは皆同じポットなので、分からなくならないよう底部には名前を記載。とはいえパッと見で分からないので、当時ハマっていた革細工の端切れをハンドルに巻いていました。
※ ※ ※
今は軽く、注ぎやすそうなおしゃれなポットがたくさん出ており、心が動きますが、コーヒーの奥深さを教えてくれたのはこのポットからは、離れられそうにありません。
>>YUKIWA
(写真・文/澤村尚徳)
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