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モンキーBAJA、モトコンポ、GAG… ミニだけど超個性的なバイクがありました

超小型だけど個性的な50ccバイクといえば、ホンダの「モンキー」を思い浮かべる人が多いでしょう。新型の「モンキー125」も魅力的ですが「あの小ささが良かった」という昔からのファンも少なくないはず。そこで、車体サイズは小さくてもユニークなデザインや装備でバイクファンの記憶に残るモデルを振り返ってみます。

 

■モンキーから派生した多くの個性派モデルがあったホンダ

1967年に発売された「モンキー」は、50年に及ぶ歴史の中で多くの派生モデルを生み出してきました。

▲1991年発売の「モンキーBAJA」

大柄のタンクを装備した「ゴリラ」は知っている人が多いと思いますが、インパクトという意味では1991年に登場した「モンキーBAJA(バハ)」を外すことはできません。一度見たら忘れられない2灯式のヘッドライトは、メキシコのバハ・カリフォルニア半島で開催されている「BAJA1000」というオフロードレースに参戦するマシンを模したもの。約1000マイルを不眠不休で走り切るという過酷なレースのため、参戦マシンは夜間走行に備えて大型のライトを装備するのが常でした。そんなスタイルを50ccのミニバイクで再現した遊び心あふれるマシン。ちなみに、このマシンで実際に「BAJA1000」に参戦した強者もいました。ライダーは、後にダカール・ラリーで2輪・4輪の両部門で活躍する三橋淳選手でした。

▲1982年発売の「モトラ」

同じく「モンキー」の横型エンジン(元は「スーパーカブ」のエンジン)を搭載し、オフロード走行に対応していたユニークなモデルが、1982年発売の「モトラ」です。前後に大型のキャリアを装備し、アウトドアでさまざまな道具を積み込んで走れるマシンというコンセプトでした。エンジンの最高出力は4.5馬力ですが、トランスミッションは通常の3速に加えて3速のサブミッションを搭載し、登坂能力は約23度という走破性の高さを実現。今の「モンキー125」にも、こんな派生モデルがあったら面白そうですね。

▲1981年発売の「モトコンポ」

横型エンジン搭載の個性派モデルという意味では、1981年発売の「モトコンポ」も忘れられない存在。小型自動車「シティ」に搭載できるバイクとして、同時に開発されたという逸話を持つモデルです。

▲ハンドルとシートを収納した「モトコンポ」

四角い箱のような形状で、ハンドルを折りたたんでシートを収納すると、コンパクトカーのラゲッジスペースに収められました。最高出力は2.5馬力でしたが、重量が45kgしかないので近所の足としては十分ですね。こちらも現代の技術で作ってもらいたいところですが、今の法規では折りたたみ式のハンドルが認められていないのが残念です。

▲1986年発売の「ジャズ」

このエンジンを搭載したアメリカンも存在しました。1986年発売の「ジャズ」というモデルです。排気量は50ccですが、アメリカンらしい長く傾斜したフロントフォーク、ティアドロップ型タンク、クロームメッキのリアサスやバッテリーケースを採用するなど、本格的な作り込みが目を引きます。リアホイールは量産車としては日本初のミラードホイールにワイドなタイヤを装着するという、原付とは思えないほどの本格装備でした。50ccモデルが売れていた時代だったので、ここまで手を掛けたモデルが出せたのでしょうね。

▲1987年発売の「NSR50」

「モンキー」系の4ストモデルのイメージが強いホンダですが、2ストの本格的なレーサーレプリカもリリースしていました。それが1987年発売の「NSR50」。水冷2ストローク単気筒のエンジンは、このクラスの自主規制値上限の7.2馬力を発生し、当時盛んだったミニバイクレースを席巻しました。もちろん、公道でも原付免許で乗れる“最速”モデルとして大人気。筆者が免許を取って最初に乗ったのもこのマシンでしたが、整備性が素晴らしく良かったことも印象に残っています。1999年に排出ガス規制によって2ストのナンバー付き市販車が姿を消してからも、「NSR-mini」の車名でサーキット専用車は販売が続けられたほど完成度の高いマシンでした。

 

■ユニークな2ストモデルでライバルに対抗したヤマハ

▲1980年発売の「Pocke」

このクラスの人気モデルである「モンキー」に対して、ヤマハは得意とする2ストエンジンで対抗しました。それが1980年発売の「Pocke(ポッケ)」と「VOGEL(フォーゲル)」です。エンジンは空冷の単気筒で、同社の「GT50(ミニトレ)」に搭載されていたものを3馬力にデチューンして搭載。「ポッケ」は6インチホイール、「フォーゲル」は8インチホイールに大きめのタンクを装備していたので「ゴリラ」の対抗モデルといえるかもしれません。

▲1980年発売の「VOGEL」

どちらも、折りたたみ式のハンドルと、ガソリンの漏洩防止バルブ付きタンクキャップを採用し、車載を意識したものでした。デチューンされたエンジンとはいえ、ホイールベースが短く、車重も52kgと軽量なため簡単にウイリーしてしまうマシンで、今でも一部マニアに人気があったりします。

▲1986年発売の「YSR50」

コンパクトでパワフルな2ストエンジンを得意としていただけに、50ccクラスのレーサーレプリカを発売したのも早かったヤマハ。1986年に登場した「YSR50」は12インチタイヤのミニバイクレースが盛り上がるきっかけとなったマシンでした。エンジンは空冷ながら7馬力を発揮。デザインは、当時GP500クラスに参戦していた「YZR500」をそのまま小さくしたようなもので、2つ並んだ丸型テールランプの排気口を思わせる造形に、当時の“レプリカ小僧”たちは心を踊らせたものでした。

このクラスに本格的なレーサーレプリカブームを定着させた「YSR50」でしたが、後発の「NSR50」が本気過ぎるスペックだったため、残念ながら短命に終わりました。そして“打倒NSR”のために開発されたのが、1993年にリリースされた「TZM50R」です。

▲1994年の原田哲也レプリカカラー「TZM50R」

エンジンは水冷化され、最高出力は7.2馬力に。フレームやホイールも変更され、「YSR50」との共通パーツはガソリンタンクのみという本気モデルでした。車名はGP250ccクラスで1993年に世界チャンピオンとなった原田哲也が乗る「TZ250M」から取られたもので、1994年には原田レプリカの限定カラーモデルも追加されました。

 

■ミニレーサーレプリカのルーツはスズキ

▲1986年発売の「GAG」

レーサーレプリカの先駆けが「RG250Γ(ガンマ)」だったように、ミニバイクの世界にレプリカを持ち込んだのもスズキでした。1986年に他社に先んじて投入されたマシンの名は「GAG(ギャグ)」。同社の実用バイク「バーディー」の4ストエンジンをツインチューブタイプのフレームにのせ、フロントにはディスクブレーキ、リアサスはモノショックとミニレーサーレプリカと呼ぶにふさわしい構成でした。ヨシムラのスポーツキットも用意され、人気も高かったのですが、惜しむべきは後発の2ストモデルに比べると5.2馬力と非力だったこと。パワーのあるほうがエラかった時代には不遇なモデルでしたが、今こういうマシンがあったらかなり遊べそうな気がします。

▲1972年発売の「Vanvan50」

時代はちょっと遡りますが、スズキの個性派モデルとして忘れられない存在が「Vanvan(バンバン)50」です。極太のバルーンタイヤを前後に履き、空気圧を落とせば砂地なども走れるレジャーバイクとして登場しました。フレームには空気入れが装備されていて、抜いた空気を再び補充できるという設計。遊び心のあるモデルで、排気量は90ccや125ccもラインナップされていました。個性的なルックスは生産終了後にも人気が高く、2003年にはこのスタイルを継承した「Vanvan200」として復活しています。

 

■ミニバイクでも独自の道を行ったカワサキ

▲1990年発売の「KSR-Ⅰ」

50ccバイクのイメージがあまりないカワサキですが、実は個性的なモデルを販売していました。それが1990年発売の「KSR-Ⅰ」。当時、人気だったオンロードとオフロードの混在するコースで行われた“スーパーバイカーズ”と呼ばれたレースをイメージした車体で、ベースとなったのは1987年発売の「KS-1」。こちらは空冷2ストエンジンだったのですが、「KSR-1」は水冷化され自主規制値上限の7.2馬力を発生していました。前後12インチのホイールにディスクブレーキ、オフロードタイプの倒立フォークと装備も豪華。80ccの「KSR-Ⅱ」とともにカルト的な人気を誇り、1999年まで生産されました。その後、2003年に4ストエンジンとなった「KSR110」が発売され、現在も販売が続いています。

*  *  *

近年では販売台数が激減し、かつては“HY戦争”とまで呼ばれたホンダとヤマハが50ccモデルで協業を始めるほどになっていますが、1980〜90年代のバイクブームの頃は、50ccクラスは激戦区でした。そんな時代だからこそ生まれた個性派モデルは、今見てもワクワクするような魅力を持っています。逆に今、元気なのは原付二種と呼ばれる125ccクラス。今度は、このクラスで他にない個性を持ったモデルが生まれるのを期待したいところです。

 

文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

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