イートインスペースを持たない「ゴーストレストラン」が増えている。メニューのバリエーションも広がっている。その中で、席を持たない飲食店が複数入居する「クラウドキッチン」も増え始めている。出前館では、同社の販路を使って事業のトライアルを行える「インキュベーションキッチン」として、クラウドキッチンを運営している。清村遥子取締役に聞いた。

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――フードデリバリーの現状などお聞かせください。

新型コロナウイルスの拡大以降に、飲食店とエンドユーザーの双方でデリバリーへの印象が大きく変わりました。私たちは「デリバリーの日常化」を掲げていましたが、コロナ以前は「ハレ」の日に使うものという意識が強く、ピザや寿司の利用が多かったです。

飲食店やユーザーにとっても、デリバリーをしなくてもイートインで十分という意識が強かった。また、ゴーストレストランもコロナ以前からありましたが、多くは寿司などで、配送網も自社で持っていました。

そこがコロナ禍でぐっと変わりました。多くの飲食店でデリバリーが導入され、「デニーズ」など大手チェーンによるデリバリーやテークアウト専門店の立ち上げが目立ち始めました。「そろそろデリバリーを検討している」とコロナ前に言っていた企業も、飲食店の休業要請をきっかけとして参入し始めました。

ゴーストレストランも増えました。一般的な店舗と比べてコストは10分の1程。立地も一般の飲食店とは異なり、駅前など人通りの多いところに出す必要がない。キッチンさえあれば良いので費用を大きく抑えられます。

――クラウドキッチンの場合は。

クラウドキッチンの場合、設備がそろっているなどのメリットがあります。出前館の施設では、入居した企業にデリバリーで売れるためのコンサルティングも行っています。国内で20年取り組んできた情報の蓄積があり、売れている商品や、不足しているメニューなどをアドバイスし、売上につながっています。リピーターも着実に増えています。例えば、高級なローストビーフ丼を販売しているところに、少し価格を下げて量を抑えた商品を販売したほうが良いとアドバイスし、販売数は増えました。

また、インキュベーションキッチンには冷凍のパンやケーキを扱う企業も参加しています。拠点によってはストッカーを置いて販売をしています。

――イートインとの違いは。

多くの飲食店は現在、夜間の営業ができず、その分をデリバリーで賄っています。ただ、デリバリーの場合、店舗の協力が無ければ美味しい料理を届けられない。調理を終えてから届くまで約20分のラグがあります。利用される方に料理を届けるまで、イートインとは違いタイムラグがあります。配達員が到着するより早く作りすぎても、届くころには冷めてしまいます。チェーン店のオペレーションはその辺りとの親和性が高く、対応できているように感じます。一方で、お好み焼きなど苦労されているところもあります。

デリバリーは、空間や接客の勝負ではなく、味だけの勝負です。そこにこだわることが大切です。また、評価はアプリ上で分かるので、それを改善に役立てています。また、露出が埋もれてしまいやすいメニューもあるので、どうすればアクセスを伸ばせるかというアドバイスなどもしています。

――様々な店舗がある中でどのように認知向上につなげていますか。

我々ができるのは、頑張っている加盟店の背中をしっかりと押していくことだと思う。加盟していただく店舗は、独自の審査基準をクリア店舗なので、店舗が評判になるよう我々も取り組んでいければと思います。その中で、出前館のアプリやサイトは一種の集客ツールと考えています。アプリには「注目の店」というコーナーがあり、その辺りを活用してまずは一度利用してもらうことが大切だと思います。そこを使ってキャンペーンなどを通じて認知を広げられればと思います。

――今後の取り組みは。

いかに拡大するかと言うこと、店舗あたりの売り上げもそうですが、売れるブランドを作ることも大切です。また、加盟いただいているところの満足度もあげていきたいです。育ったブランドは今の3拠点にとどめず、様々なところで展開できればと思います。

デリバリーは、料理を色々な方に食べてもらうための枠組みでありたいです。コロナが収まっても需要は落ち込まずにまだ広がると思っています。ユーザーも「出前って便利」と気付いてもらえたのではないでしょうか。飲食店でも「利益になる」という意識に変わりつつあると思います。

日本のデリバリー市場はまだ小さく、まだまだ伸びしろがあると感じています。それを分かっているからこそ、海外から競合が参入しているのではないでしょうか。ただ、これはマーケットが広がる良いきっかけです。品質の高いサービスを提供し、ユーザーと飲食店、配達員のそれぞれに喜んでもらえればと思います。

〈冷食日報2021年8月18日付〉