2021年5月時点の出前館の加盟店数は、2020年2月末時点と比較して3倍以上となっている。出前の日常利用も大きく進みつつあるようで、2020年9月〜2021年2月末の商品やサービスの総売上高は、前年同期比78%増となった。一方、外資系の新規参入も進みつつあり、地方ではシェアを奪われているところもある。そこで、地方に営業拠点の新設したほか、加盟店へのコンサルティングを強めて、加盟店とユーザーの満足度の向上により力を注ぐ。

執行役員で営業本部副本部長を務める、大枝千鶴氏に聞いた。

――2020年の市場を振り返っていかがでしたか。

加盟店数は倍どころではない状態です。2019年時点で2万店だったのが、2021年5月末時点で7万店以上まで伸長しました。コロナ拡大以前は月に2〜300店ずつの増加という状況でしたが、今は多い時だと月に約6,000店ずつ増えているような状況で規模感が違います。私が出前館に参加したのは2020年からですが、コロナ以前の状況を聞くと全然違います。

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出前の頼み方も変化しました。今までは寿司やピザをハレの日に注文する、という使い方が多かったと思います。最近はご飯を食べたいときに使うという風になったと思います。また、日本では中食市場が拡大しています。将来的には、家ではご飯を用意して手間のかかるおかずはデリバリー、ということになれば嬉しいですね。

――現在注力している取り組みは。

中期経営計画(2020年10月発表)では加盟店数の目標を10万店と掲げています。想定以上のペースで参加していただけております。

これからは加盟店を増やすだけではなく、加盟店へのコンサルティングをより強化する方針です。社内的にも地場の飲食店を大切にしていくという考えから取り組んでいきます。

また、今までは加盟店数の獲得を重視していたところもありました。しかし、せっかく加盟してもらったのにデリバリーにどう取り組むべきか分からず、売り上げにつなげられなかったとしたら、もったいないです。

そこで、個人店やローカルチェーンなどに、デリバリーで支持される商品やのノウハウなどを提供し、1店舗当たりの売上の向上につなげたいですね。デリバリーで売れる商品は、店舗とは異なる部分があります。こうした部分を伝えて、店舗の売上向上に寄与し、ユーザーにとっても魅力ある内容にできればと考えています。

――2020年3月にLINEグループと資本業務提携を締結しました。変化はありましたか。

大きな変化としては、社内の体制ですね。一つは、2021年5月から新たにフードデリバリーの盛り上がっている7カ所に新たな拠点を立ち上げました。

地場のローカルチェーンが人気のエリアもあります。こうした人気の店舗にもっと加盟していただくことと、店舗のコンサルティング強化のため、新しい拠点を立ち上げました。今回、スタートメンバーを社内で公募したところ、全員自分から行きたいと言ってくれて驚きました。5月から本格稼働を開始しましたが、成果も出始めています。

もう1つは、人数が増えて開発や企画の体制が強化されました。ユーザーに見えるものと、見えない部分も含め、細かなアップデートを毎週のように行っています。レコメンド機能も改良を続けています。基幹システムも将来的には強化していければと思います。

――Zホールディングスのグループにも入りました。進めている取り組みはありますか。

これについてはトライ&エラーですね。色んな可能性がある一方、ありすぎて社内でも迷っています。今のところ、「Yahoo!JAPAN」のトップページへの掲載などは実施しました。協議をしながら様々なパターンを検討したいと思います。

――他のデリバリーでは日用品などグロッサリーの扱いを強めつつあります。出前館ではどうするのでしょうか。

日用品についてはずっと議論をしています。ただ、やはりフードが重要です。ユーザーにとっても需要があるのは分かっていますが、色々な可能性があるとは思います。

――ただ、配送料などが日常的な利用にはネックとの声もあります。

効率よく運ぶことができれば配送コストを減らすこともできると思います。市場が一定以上の規模になればこうしたことも可能になるのではないでしょうか。今のところは、定額パスのような仕組みや、多く利用されている方がお得になる制度も検討しています。

――決算を見ると、売上は伸長し続けているものの、利益面では苦戦しています。

流通取引額などは当初の計画を上回っています。そのため、利益面も支出を抑えれば黒字化も可能ですが、今は投資を続ける時と捉えています。中期経営計画でも2023年に営業利益120億円を目指しております。その達成が見通せていないならば、ここまでのことはやれません。

――今後注力する取り組みは。

加盟店のコンサルティングが大きいですね。2020年は外資系のフードデリバリーの参入が活発で、2021年に入ってからも新たな動きがあります。インパクトのあるプロモーションの展開も見られます。地方からローンチするケースが多く、そのエリアでの人気を獲得していることが多いです。私たちもエリアそれぞれでの提案により力を入れていきます。

また、一言で「デリバリーに取り組む店舗が増えている」と簡単そうですが、実際には増えた分だけサポートを行う店舗も増えています。店舗によって課題も異なるため、加盟していただいた後、問題点をどう解決するのかも勝負になっています。

ただ、私たちは日本国内で20年間出前を手掛けてきており、成功事例のノウハウも着実に蓄積できています。加盟店のコンサルティングは他社との差別化にもなり、加盟店とユーザーからも喜ばれる取り組みだと思います。

配達代行のカバー率は39%で、まだまだ取り組めていない地域がたくさんあります。2020年は営業の年でしたが、2021年は企画開発の年として、ユーザーと加盟店にとって利便性を高められるよう取り組んでいきます。

〈冷食日報2021年6月17日付〉