セブンの「敵対的買収は計画にない」 クシュタールの会長語る

取材に応じるカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールの創業者で会長のアラン・ブシャール氏=2024年11月21日午後3時47分、モントリオール郊外、真海喬生撮影

 セブン&アイ・ホールディングスに買収提案しているカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールの創業者で会長のアラン・ブシャール氏が21日、朝日新聞などの取材に応じた。「敵対的な買収は計画にない」と述べ、セブン側の同意を得られなければ買収は強行しない考えを示した。一方で、「小売業界で世界のチャンピオンが必要だ」などとして、現在の友好的な買収提案の実現にあらためて意欲を示した。

 両社ともに米国でコンビニ事業を展開しており、クシュタールの買収提案の狙いはその規模拡大だとみる向きがあるが、ブシャール氏はそうした見方を否定した。「2社が統合することで、業界を変革できる」と話し、企業規模を巨大化することで商品の調達や配送、開発などの面で利点があると主張。日米のコンビニやスーパーマーケットなど、セブンの事業をすべて買い取りたいと説明した。

 人口密度の高い地域でのコンビニ運営など「セブンから学ぶことがある」として、「買収が成立したら両社の文化を融合させるよう努める」などと述べた。

 セブンに対しては「約20年前に創業家に買収を打診した」ことも明らかにし、「その時も今も、友好的な関係だ。これからもそうありたい」と話した。

 クシュタールは8月、セブンに対して約6兆円での買収を提案。セブンから企業価値を「著しく過小評価している」などとして拒否されると、9月に買収額を7兆円規模に引き上げた。

 一方、セブンの創業家側は対抗策として経営陣による自社買収(MBO)を検討している。これを受けてクシュタールが買収額をさらに引き上げる可能性があるかについて、ブシャール氏とともに取材に応じたアレックス・ミラー最高経営責任者(CEO)は明言せず、現在の自社の提案が「最も魅力的なものだ」と述べるにとどめた。

 創業家側が検討しているMBOについては、クシュタールの買収提案に対抗できるだけの巨額の資金を調達できるかどうかが課題だ。関係者によると、伊藤忠商事などからの出資や、メガバンクからの融資を受ける計画だという。今後の展開次第では、創業家側とクシュタールとの間で買収合戦となる可能性もある。(真海喬生=モントリオール、井東礁)

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