ゆうちょ顧客データ、かんぽ営業に不正流用 郵便局で保険業法違反か

日本郵便近畿支社が各郵便局で「感謝デー」を企画するよう指示した2024年4月の内部文書。「定額貯金満期」などの条件で顧客をリストアップし、保険を売り込む事例が挙げられている

 郵便局が「お客さま感謝デー」と銘打ったイベントなどで、ゆうちょ銀行の個人データ(非公開金融情報)が顧客の同意なしにかんぽ生命の保険営業に流用されていたことがわかった。かんぽ生命は20日、保険業法違反の恐れがあるとして、金融庁に報告。日本郵便は同日、全国の郵便局に対し、銀行データを使ったイベントは企画中のものも含めてすぐに中止するよう指示を出した。

 日本郵便の20日付の指示文書などによると、保険勧誘が目的の来局誘致に銀行の顧客データを使った不正が全国で見つかっている。銀行システムで貯金残高や年齢が条件に合う顧客を検索・リスト化し、一時払い終身保険などを売るために来局を促すのが典型だ。景品をプレゼントするイベントや、銀行キャッシュカードのIC化を口実に来局させる手口もある。

 ただ、ゆうちょ銀行の口座開設時に保険勧誘の同意を原則的に求めるような仕組みはない。

 日本郵便は指示文書のなかで、顧客が来局したあとに同意を得れば問題ないと認識していたとしている。かんぽ生命は金融庁へ問題を報告し、今後、調査を続けて再発防止策を検討する。

 郵便局が来局を促す「お客さま感謝デー」などのイベントをめぐっては、近畿支社が金融商品を売り込むために実施するよう指示していたことが9月初めの朝日新聞報道で判明した。商品販売の目的を隠した勧誘を禁じる自治体の消費生活条例に反する恐れがあるのに、社員の通報を受けた日本郵政の社外通報窓口は「問題なし」として取り合わなかった。

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