年金、将来見通し「改善」 ただし現状維持なら「2割減」 厚労省検証

年金額改定通知書(画像の一部を加工しています)

 公的年金の将来見通しを厚生労働省が3日、公表した。女性と高齢者の就労が予想以上に進んだことなどを反映し、給付の見通しは改善した。一方、労働参加や賃金上昇のペースが鈍ければ、給付水準は今より2割減となる。将来は楽観できず、政府は対応策の検討を本格化させる。

 5年に1度の財政検証の結果を示した。この検証は100年先までの財政状況をチェックする「定期健診」だ。今の年金制度は、現役世代の負担が上がり過ぎないよう保険料の上限を固定。収入の範囲内で将来世代の年金を確保するため、人口減少や長寿化に応じて、今の年金を抑える仕組みを発動させる。

 給付水準を測る「ものさし」となる所得代替率は、平均的な会社員と配偶者の「モデル世帯」の年金が、現役の手取り収入に対しどの程度の割合かを示す。2024年度の所得代替率は61.2%で、前回の19年度よりも0.5ポイント下がった。

 そのうえで、「高成長」から「1人あたりゼロ成長」まで、賃金上昇や労働参加の前提が異なる4ケースについて将来、年金を抑える仕組みを適用することで、給付をどこまで下げれば収支が均衡するかを試算した。

 その結果、4ケースの上から2番目の「成長型経済移行・継続ケース」では、労働参加がさらに進み、経済成長が軌道に乗る想定で、37年度に所得代替率57.6%で下げ止まる。5年前の類似ケースでは50.8~51.9%となり、年金水準は2割減だったのに比べ、6%ほどの減少にとどまり、改善した。

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