UBSがクレディ・スイス買収へ、4300億円で合意…将来損失の場合は政府が1・3兆円保証

クレディ・スイス本社(1月、スイス・チューリヒで)=中西梓撮影

 【ロンドン=中西梓】スイス政府は19日、記者会見を開き、スイス金融大手UBSが、経営不安の広がるクレディ・スイスを約30億スイス・フラン(約4300億円)で買収することで合意したと発表した。スイスの2大銀行が統合する大型再編になる。

 UBS1株とクレディ22・48株を交換し、全事業を買収する。クレディ株を1株あたり0・76スイス・フラン(約109円)で買い取るのと同等で、17日終値の1・86スイス・フラン(約265円)から6割程度割り引いた価格になる。

 政府は緊急的な措置として、2社が株主の同意なしに買収を実行できるようにするほか、UBSに対し、事業再編や買収に伴う訴訟などで将来損失が発生した場合の費用として、約90億スイス・フラン(約1・3兆円)を保証する。またスイス国立銀行(中央銀行)もUBSに対し、最大約1000億スイス・フラン(約14兆円)を貸し出す。

 スイスでは金融業は基幹産業で、スイス政府は協議に介入し、両社の統合を後押ししていた。一方両社は事業分野が重なるほか、クレディは投資銀行部門で大幅な赤字を計上しており、UBSはクレディの救済協議が始まる前、統合に後ろ向きだとされていた。

 合意直前には、UBSが最大10億ドル(約1320億円)での買収を提案し、クレディが拒否したと報じられた。UBSは交渉を進める過程で、買収金額を3倍以上に引き上げたとみられる。

 UBSとクレディは、いずれも創業160年以上の名門銀行で、富裕層向けの運用を強みとする。従業員数はそれぞれ約7万4000人と約5万人。主要国の金融当局で作る金融安定理事会(FSB)によって、金融システムの安定上で重要な銀行に指定されている。

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