未知なる鍾乳洞の探検ツアー、鍾乳石の隙間を腹ばいで進む…ケイビングという新たな「観光の形」

未公開部分を探検するモニターツアーの参加者ら(7月17日、田村市のあぶくま洞で)

 福島県田村市のあぶくま洞で今秋にも、未公開部分のケイビング(洞窟探検)ツアーが始まる。日本洞穴探検協会(千葉市)の指導でケイビング技術を身につけた市滝根観光振興公社の職員がガイドを務め、珍しい鍾乳石なども見ることができるという。市は観光の起爆剤としても期待している。(井上大輔)

 「ここから狭いので気を付けて」「不安があったら遠慮なく近くの人に声をかけてください」

 未公開部分で先月行われたモニターツアーでは、公社の職員2人がガイドとなり、新潟大探検部の学生ら3人を先導した。3人はいずれもケイビング未経験者。前日に講習を受け、短い距離の洞穴で経験を積んだ。

 この日は、約3時間かけて洞穴内を探検。整備された足場や照明がない中、ヘッドライトの明かりだけを頼りに、鍾乳石の隙間を四つんばいや腹ばいになりながら奥へと進んだ。

 参加した同大の男子学生(19)は「最初は不安だったが、慣れてくると未開の地を探検しているみたいでワクワクした。日常では味わえない体験」と笑顔を見せた。ガイドを務めた公社の伊藤勝成さん(32)は「初めてのガイドで緊張したが、楽しんでもらえたようで安心した。ツアー化に向けて見えた課題を修正していきたい」と手応えを語った。

 全長が3キロ以上のあぶくま洞は「一般コース」(約600メートル)と「探検コース」(約120メートル)が一般公開されており、それ以外は、安全確保や環境保全などの理由から立ち入りを禁止している。だが、近年のアウトドアスポーツの多様化により、未整備エリアでのケイビングに注目が集まり、あぶくま洞を管理運営する公社もツアー実施に向けた準備を進めてきた。

 日本洞穴探検協会の指導を受け、職員は約4年がかりでケイビングの技術を習得し、鍾乳石や洞穴に関する勉強会を重ねてきた。コースについては、初心者と一緒に潜りながら検討を重ね、高低差の少ないルートを選定。今秋までに、未公開部分で約30~80メートルの比較的簡単なコースからツアー化を進め、将来的には約770メートルの上級者向けツアーも実施する考えだ。

 公社の伊藤敏男事務局長(51)は「観光客が年々減少しており、客層も団体客から個人客に移行している。ケイビングという新たな観光の形に挑戦して観光誘客につなげたい」と語った。

 また、白石高司市長は「体験型観光という現代の需要に合致する取り組みで大いに期待している。魅力を最大限に引き出せるよう磨きをかけ、積極的にPRしていきたい」と話した。

 あぶくま洞は、鍾乳石の種類と数で「東洋一」とも言われている。ツアーでは、鍾乳洞に関する勉強会を実施し、ガイド中にも洞穴や鍾乳石の特徴などを解説する予定という。

 鍾乳洞は、地殻変動で隆起した石灰岩帯にできた隙間が、雨などによって広がってできる。鍾乳石は、石灰岩帯からしみ出した炭酸カルシウムが冷え固まったもので、カルシウムの濃度や洞内の気温によって様々な形になるという。

 地下水や洞穴学に詳しい国立研究開発法人・産業技術総合研究所の丸井敦尚・招へい研究員は「鍾乳洞や鍾乳石を見るだけで、昔の環境や洞穴の歴史を読み解くことができる。地質学や洞穴学につながる『勉強の場』としての効果も期待できるだろう」としている。

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