半導体調達で日本をモデルに、ドイツが中国念頭に経済安保強化へ
日独の首脳と閣僚が出席し、18日に初めて開かれた「政府間協議」で、両国は対中国を念頭に協力強化を確認した。5月に広島市で開催される先進7か国首脳会議(G7サミット)まで2か月に迫る中、日本政府は議長国として欧州の盟主・ドイツと連携を密にし、G7サミットで中国に対して一致したメッセージを打ち出したい考えだ。
岸田首相は共同記者会見の冒頭、「(日独)両国は不透明な開発金融に対する懸念を共有し、全ての関係者に、国際的なルールに従うことを求める」と述べた。中国の名指しこそ避けたものの、中国が対象国を借金漬けにし、港湾などの使用権を得る「債務の罠(わな)」を意識した発言だ。
ドイツのショルツ首相も「日独はルールに基づく国際秩序を標榜(ひょうぼう)する」と強調。共同声明には、G7の下で経済安全保障に対する課題に対処すると明記した。
G7サミットに向けて、岸田首相は1月に欧米のG7メンバー国を歴訪したが、ドイツは政府間協議の開催を控えていたことから訪問を見送っていた。今回のショルツ氏の来日によって、G7の首脳らとの「腹合わせ」は終えたことになる。
ドイツとの政府間協議で議題となった経済安保は、サミットでの議論も見据えたテーマだった。日本の外務省幹部は「経済を中心に対中政策をすり合わせる狙いがある。中国との経済関係が深い日独が経済安保を巡って足並みをそろえないと、G7の結束が乱れる」と解説する。
一方、ドイツもロシアのウクライナ侵略を受け、民主主義などの価値観を共有する日本との結び付きを強めている。ドイツ政府筋によると、幅広い政策分野の中で、ドイツ側としても特に注目していたのが経済安保を巡る協議だった。
ドイツは天然ガスを過度にロシアに依存した反省から、エネルギーや戦略物資の調達先の多様化を急ぎ、半導体などの調達で中国偏重の解消も目指している。ショルツ政権は、半導体の生産・備蓄支援などを通じ、特定国への依存度を引き下げる日本の取り組みがモデルになるとみている。(政治部 依田和彩、ベルリン支局 中西賢司)
03/19 10:28
読売新聞