三菱の4年ぶり新型車にみる、中堅メーカーの生きる道

日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)が主催する「2019年次RJCカーオブザイヤー(国産車)」に三菱自動車のエクリプス クロスが選ばれた。12月9日には、自動車系媒体や選考委員らにより「2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー」が決まるが、その候補である10台「10ベストカー」のなかにも、エクリプス クロスはノミネートされている。 不祥事に伴い経営危機に直面した三菱自動車が、勝負の一手として投入したエクリプス クロスは、じつに同社4年ぶりの新型車だ。パジェロの血をひく車両は、三菱自にとってみればこれ以上ないポジショニングにある。そして、ユーザーはコネクテッド機能と相対し車両を操作していく。走る、止まる、曲がるといったクルマの基礎に加え、コネクテッド機能を読み解くことは、三菱自の意思を読み解くことにもつながる。

エクリプス クロスに込められた三菱自動車のグローバル戦略

 自動車業界では、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)という名称が定着する以前から、アクティブな走りや豊かな乗り心地といった利便性を追求するSUV的なものへの需要は高かった。2013年頃からグローバルでのSUVブームが起こり、コンパクトSUVと呼ばれる市場の拡大傾向は続いている。

 三菱自動車には、パジェロというSUVの先駆けを世に送り出した自負がある。ウイリスジープのノックダウン生産まで遡るオフロード4WDのノウハウ、A73ランサー、ギャランVR-4、ランサーエボリューションと続く海外ラリー、そしてパリダカ参戦パジェロのラリーレイドでの信頼性と耐久性といった実績も十分だ。こうした名車には今でもカルト的な人気があり、三菱自動車のブランドを支えている。

 一方、事業面では2000年代以降、リコールスキャンダルに端を発した経営危機に直面。この危機を、ルノー・日産とアライアンスを組むことで脱した。あらためて世界に打って出るための戦略車として、エクリプス クロスを投入したというわけだ。

エクリプス クロスが搭載するディスプレイオーディオ

 エクリプス クロスは、2017年に欧州とオーストラリアで発売がスタートし、その後北米、日本へと投入されたSUVだ。日本でのお披露目は2017年の東京モーターショーで、ワールドプレミアからは1年が経とうとしている。この車両の特徴のひとつは、コネクテッド機能を強く意識している点だ。

 そんなエクリプス クロスの車載端末は、いわゆるディスプレイオーディオ(音楽再生などが操作できるただのスクリーン)ではないかという意見もある。日産のカーウィングスやトヨタのT-Connectとは違い、通信モジュール(DCM)の設定がなく、ネットワークへの接続については手持ちのスマートフォンを利用するためだ。この方式は、クルマ用に新たなSIM契約の必要がなく導入のハードルが低い。

「DCM方式」と「手持ち端末方式」のどちらが良いかは判断が難しい。メーカー側の事情でいえば、大手はDCMでユーザーを囲い込みたいだろうが、そこまでリソースを持てないメーカーはスマートフォン利用がベストとなる。

携帯経由でネット接続するエクリプス クロス

 エクリプス クロスのディスプレイオーディオは、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応している。iOS、Androidどちらでも、CarPlay、またはAndroid Autoのアプリをインストールしたスマートフォンを接続すると、タッチパネル、ステアリングボタン、シフトレバー横に設置されたタッチパッドを使って、地図アプリや音楽アプリなどを操作できる。もちろん、SiriやGoogle Assistantを使った音声操作も可能だ。

 スマートフォンの接続は簡単だ。センターコンソールにUSBポートがふたつついている。どちらかにUSBケーブルで対応スマートフォンをつなげばよい。Bluetoothでも接続可能だが、ケーブルでつないだ方がスマートフォンの充電もできるので、有線接続がオススメだ。

 念のためCarPlayやAndroid Autoの機能を解説しておくと、これらはスマートフォンのアプリをクルマの中で使うためのアプリランチャーの一種である。普通のスマートフォンをクルマの中で使うことももちろん可能だが、画面が小さかったり、操作が運転を想定していなかったりする。

 CarPlay/Android Autoは、ディスプレイオーディオや車載カーナビと接続し、クルマ側の画面やタッチパネルなどで、ナビやインフォテインメントアプリを操作できるようにしたものだ。

タッチパッドは便利だが、
操作時に手首を固定するもうひと工夫が欲しい

 エクリプス クロスのスクリーンは、センターコンソールの上部にあり、視認性はいいのだが、タッチ操作にはやや遠い。そのため、運転中はシフトレバー付近に設置されたタッチパッドを使うと便利だ。

 パッドで指を動かして、画面上のフォーカスポイントを指定する。選択するにはパッド中央を「クリック」する。Macbookのタッチパッドのように中央付近が押せるようになっている。地図のスケールを変えたり、アプリを切り替えたりするのはタッチパッドだけでできるようになる。

 スマホやPC感覚で操作できるのはうれしいが、残念な点もある。それはパッドの中央が指ではわかりにくい点だ。パッドの中央付近が少し盛り上がっているが、手首を固定するところがないので、指で探す必要がある。メルセデスのジョイスティックのようにパームレストがあれば、そこに手をおくだけで指のポジションが決まるのだが、それもない。

 慣れの問題でもあるのだが、手のひらを浮かせた状態で指だけでタッチパッドを操作するのは意外とストレスだ。動いているクルマの中だとなおさら。せめてパームレストは欲しかった。

音声認識できること、できないこと

 CarPlay/Android Autoでは、以下の操作が音声で可能だった。

・目的地の検索(周辺のファミレス、○○まで、など)
・検索結果の目的地設定
・目的地の消去
・ルート上の施設検索
・予定の作成(カレンダーに日時、場所、要件などを登録)
・予定の読み上げ
・ニュースの読み上げ
・メール・メッセージの作成
・メール・メッセージの読み上げ
・音楽の検索・再生・停止

 音声操作でうまくいかなかったこと、その他できないことは以下。

・音楽再生プレーヤーの切り替えがうまくいかないことがあった
・ルートガイドの中継地の設定ができなかった。Googleマップは、PC版やタブレット版だと中継地の追加、設定など編集が可能だが、Android Autoではできなかった。

限られた予算の中で何を組み合わせるか

 ユーザーインターフェースは、顧客満足度に直結する重要な要素だ。三菱自動車の規模で、ここにかけられる予算は限られている。この分野に関しては、AppleやGoogleをはじめとするIT巨人の外部サービスをいかに組み合わせるか、という発想がカギで、中堅メーカーだからこそ選択しやすい合理性が武器になる場合もある。ユーザーの反応には注視する必要があろう。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストに選出されたエクリプス クロスが最終的に、どのような評価をされるか。研究者やジャーナリストからなるRJCカーオブザイヤーと、自動車系媒体が主導する日本カー・オブ・ザ・イヤーそれぞれの価値判断やその存在意義も含め、見直すべき部分は多いが、ここでの評価は1つの指標として、多少の意味を持つだろう。

(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)

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