「経済制裁を受けているのに」 ロシアが「中古車輸出先」でトップの謎。今年は輸出先ランキング1位を維持! なぜ輸出が多いのか、経済産業省に聞く

ロシア向け中古車輸出は各月で仕向け先上位1位か2位となっています。経済制裁を受けているにもかかわらずこの状況が起こる背景を、経済産業省に聞きました。

ロシアは日本の中古車輸出の最大市場、2024年4〜7月は輸出仕向け先としてトップ

 品質の割に価格面で入手しやすい日本の中古車は、世界的にも人気です。
 
 とりわけロシアは極東地域が日本と距離的に近いため、主要な輸出先となっています。
 
 しかし、ロシアはウクライナに侵攻し戦争状態となっているため、経済制裁が課せられています。それなのに、なぜ多くの中古車が輸出されているのでしょうか。

経済制裁を受けているにもかかわらずロシアは日本の中古車輸出仕向け先トップ、なぜ?【画像はロシアのナンバープレート・ireshetnikov54 / PIXTA(ピクスタ)]】

経済制裁を受けているにもかかわらずロシアは日本の中古車輸出仕向け先トップ、なぜ?【画像はロシアのナンバープレート・ireshetnikov54 / PIXTA(ピクスタ)]】

 日本中古車輸出業協同組合がまとめた「中古車輸出 仕向け国」の統計によると、2024年4〜7月までロシアが輸出先のトップ、それ以外の月もロシアは2番目に大きな輸出先です。

 しかし、前述のようにロシアは経済制裁が課せられているのにもかかわらず、なぜ多くの中古車が輸出されているのでしょうか。

 その背景を経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 貿易管理課と同省 製造産業局自動車課の担当者に伺いました。

 まず、ロシアに対する経済制裁では、あらゆる物が輸出を制限されているわけではないとのことです。

「経済制裁にはさまざまなメニューがあるのでそのすべてを取り上げるのは難しいですが、わかりやすい例として軍事転用可能な品目が挙げられます」(経済産業省担当者。以下、断りない限り同)

 中古車を含む自動車も、あらゆる車種の輸出が制限されているわけではなく、「ハイブリッド車(HV)」「プラグインハイブリッド車(PHV)」「電気自動車(EV)」「排気量1.9リットル超の内燃機関車」が輸出できない対象です。

経済制裁を受けているにもかかわらずロシアは日本の中古車輸出仕向け先トップ、なぜ?(画像はロシアの首都モスクワ)

 また、完成車メーカーは輸出を自粛しているため、実質的に中古車しか輸出されていない状況となっています。

「経済制裁は、国際協調の上で行われるものです。

 具体的には、米国や欧州連合(EU)などと歩調を合わせて実施しています。そして、これらの国々も同様の制裁を行っています」

 つまり日本と同様にロシアへの経済制裁を行っている国も、こうした車種を輸出しないようにしているということです。

 そして、排気量1.9リッター以下の日本製中古車が現在もロシアで多く取引がされているため、輸出先の上位に入っていることになります。

なぜロシアで日本車が人気? そのワケとは

 また、ロシアで日本製中古車が人気の理由として「従来から日本車の人気が高く、円安の為替相場も受けて、輸出されていない新車に代わって購入されている可能性があるのではないか」とのことでした。

 経済制裁が行われている以上、ロシア側が第三国を経由して日本車を入手することも考えられます。

「われわれも第三国経由での輸出に対し、警戒、注視をしています。

 自動車ではないのですが2024年7月、最終的にロシアへ運ぶことを前提として第三国を通し水上バイクを輸出した企業の代表者が警察に逮捕されました。

 中古車輸出業者を含め、事業者の方がロシア向けと知りながらこのような輸出をすると犯罪になります。

 この点は、理解していただければと思います」

2024年4〜7月は輸出仕向け先トップのロシア(画像はロシアの町並み)

2024年4〜7月は輸出仕向け先トップのロシア(画像はロシアの町並み)

 では、今後ロシアへの経済制裁が強まる可能性はあるのでしょうか、あるいは、経済制裁が終わるにはロシアに何が求められるのでしょうか。

 しかし、この質問に担当者は「ノーコメント」との回答。理由として、「予断をもってお答えすることはできないから」ということでした。

 この点からは、戦争状態が終わったとしてもすぐに、すべてが元通りになるわけではないことが読み取れます。

 国際社会の複雑さや戦争が引き起こす禍根についても実感できるのではないでしょうか。

※ ※ ※

 なお、「ロシアの経済制裁とは無関係に、経済産業省は中古車輸出という産業をどう考えているか」と質問したところ、以下の回答がありました。

「中古車は、リーズナブルに自動車を入手でき、国民、消費者の選択肢を広げるものと受け止めています。

 中古車輸出も、その一翼を担うものとして重要であると考えています」

 ウクライナやロシアの人々がかつての生活を取り戻し、カーライフを楽しめる日が訪れることを、そして日本を含め世界中の人も同様の生活をこれからも送り続けられることを、願うばかりです。

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