”普段は見えない”部品や技術がくるま社会を大きく変えるかも!? 「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」ブース紹介 村田製作所/NOK 編

「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(通称:人テク)が、2024年5月22日から5月24日の3日間にわたってパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されました。今回は、村田製作所とNOKブースを紹介します。

タイヤにタグを「埋め込んで」情報管理!村田製作所が提供する技術ソリューション

 公益社団法人自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(通称:人テク)が、2024年5月22日から5月24日の3日間にわたってパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されました。本イベントは「人と知をつなぎ、モビリティの未来を支える」というミッションのもとに行われる、自動車技術のための国内最大の技術展です。

 例年の開催会場であるパシフィコ横浜「アネックスホール」に今年は「ノース」も追加。ブース面積に合わせて出展社数も増加し、前年から2割増加の3日間合計で7万5972人が訪れるほどの盛況となりました。

 本記事では「村田製作所」「NOK」のブースに展示されていた製品、技術について取材した様子を紹介します。

タグが埋め込まれた位置に専用端末を近づけて情報を読み取る様子。展示したタイヤは、タクシー専用オールシーズンタイヤであるダンロップ「ALL SEASON MAXX AS1 for TAXI」

タグが埋め込まれた位置に専用端末を近づけて情報を読み取る様子。展示したタイヤは、タクシー専用オールシーズンタイヤであるダンロップ「ALL SEASON MAXX AS1 for TAXI」

 村田製作所は、セラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行う世界的な総合電子部品メーカーです。

 今回の人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMAでは、安全で快適なモビリティライフの実現に向けて、自動車の電子制御や電装化が進む昨今の自動車業界に対し、安全性や快適性、社会課題に貢献するソリューションの展示がおこなわれていました。そのなかで特に注目したのがタイヤ管理ソリューションの「RFIDモジュール内蔵タイヤ」です。

 RFIDは「Radio Frequency Identification」の略称で、無線通信を利用した自動識別管理技術のことを指します。モジュール自体の部品の大きさは長さ6mm、幅と高さは1mmと非常に小さく、タイヤ自体の性能へ影響を与えない前提のもと開発が進められました。タイヤへは、スプリングアンテナと一体化された状態で、サイドウォール部分に埋め込まれています。

 本技術を活用すると、タイヤの装着や修理された日時などの情報を、専用の端末を近づけることで読み取ることができ、車両の管理や点検の情報などをデジタル化して計測することが可能。その結果、業務の効率化に結び付けられるとしています。当日ブースでは、実際に端末を使用してタイヤにひもづく個別情報を読み取るデモンストレーションも実施していました。

 この「RFIDモジュール内蔵タイヤ」はミシュランの大型車用タイヤ、ダンロップ(住友ゴム工業)の大型車用タイヤや、タクシー用のオールシーズンタイヤに採用されています。現在、国内では主に商用車の運行管理向けとしての用途が想定されていますが、このツールや技術を今後どのような活用ができるか、村田製作所はその可能性を、タイヤメーカーの戦略に合わせて模索していきたいとのことです。

あなたの疲れとストレスが偏差値で可視化される!?「疲労ストレス計」

 また村田製作所のブースでは、「疲労ストレス計 MF100」の展示もおこなれていました。

 本製品は心拍と脈拍を計測し、その算出数値からビッグデータの分析を通じて自律神経のバランスと偏差値を示し、客観的な評価や数値化が難しい「疲労・ストレス度」を可視化する製品です。

疲労ストレス計 MF100を使用し「疲労・ストレス度」を測定中の様子

疲労ストレス計 MF100を使用し「疲労・ストレス度」を測定中の様子

 会場ブースでは、実際に記者自身の状態を測定する体験ができました。

 製品自体は少しコンパクトなドライヤーのような形で、これを正しい指の位置で両手で握りリラックスした状態で計測を開始します。しばらくすると、無線接続されたスマートフォンに測定データや情報が入り、実際に現在の自身の疲労ストレス度合いを確認することができます。

 実際に計測してみると、自律神経機能偏差値は高めに、自律神経のバランスは交感神経に、という数値が算出されました。担当者いわく疲労の総合判定と照らし合わせ、「今、お仕事モードになっていますね」とのことで、まさに取材時の状況が表示されました。

 村田製作所のブース担当者は、今後も継続してこのような技術的ソリューションの提案をおこない、展示会などを通じて自動車を中心とした各メーカーとの交流を図りながら、実際にこれらを活用してどのような価値提供の可能性があるかについて議論する場にしていきたいと話してくれました。

自ら潤滑するゴム!? ENEOSと共同開発の新素材に注目

 NOKは日本発のオイルシールメーカーで、自動車をはじめとした産業機器に使われる密封装置(オイルシール、パッキン、Oリングなど)を製造している会社です。

 NOKグループの理念として「Essential Core Manufacturing – 社会に不可欠な中心領域を担うモノづくり」をスローガンとして、今回の人テク2024の会場では「New Innovation Technology」をテーマにさまざまな展示をおこなっていました。

 

「自己潤滑ゴム」の性能の違いを実際に手で体験することができる展示

「自己潤滑ゴム」の性能の違いを実際に手で体験することができる展示

 なかでも注目されていたのは、今回の展示会で初公開されたENEOSとの新規開発品である「自己潤滑ゴム」です。

 この「自己潤滑ゴム」は、シールとしての密封機能を維持しながら、素材の配合に工夫が施されており、分子スケールで界面を制御することで、従来製品と比較して摩擦が平均30~40%低減された新しいゴム素材が使用されています。

 この新素材を用いたシール製品は、潤滑状態を維持するには厳しい環境下においても油膜が保持されやすくなる特性をもつことで、発熱が低く、また劣化しづらい性質となっているとのことで、製品の長寿命化が期待されるといいます。展示ブースでは、従来のゴムと自己潤滑ゴムでどのような違いがあるかを、実際に人の手でプレートを上下しゅう動させて体感できるような展示方法を行っていました。

 実際に試してみたところ、従来のゴムでは例えるならプレートがカチッと固定されているような状態となっており、上下に動かすには手に力をいれてしっかりと握る必要があります。一方で自己潤滑ゴムは、動き出しから明らかに軽い力でスッと上下に動かせる印象となっており、例えるなら「握る」のではなく指の力だけでプレート上を動かせるようになっていました。体感上はまさに半分くらいの力加減といった形で、摩擦力の低減度合いとも印象が合致するものでした。

 NOKは現在、この新素材に関する特許を出願中とのこと。将来的にはEVに搭載されるモーターやeアクスルなどの電動化に採用されることで、電費や航続距離の向上に貢献が期待できるとしています。

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 さまざまな最新技術や製品が紹介された「人とくるまのテクノロジー展」ですが、次回は愛知県での開催が予定されています。「人とくるまのテクノロジー展 NAGOYA」の会期は2024年7月17日から7月19日までの3日間で、場所は愛知県常滑市のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)です。

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