なぜ日本の「自動車関連の税(ガソリン税)」は高い? 「見直し求める声」多し! 諸外国との差はどのくらい?

クルマと切っても切れない関係にあるのが「税金」です。日本の場合、おもに「クルマの購入」「クルマの使用」「クルマの保有」に関して税金が課され、それぞれ消費税、ガソリン税(揮発油税および地方揮発油税)、自動車税などが該当します。諸外国との差はどのくらいなのでしょうか。

ガソリンにかかる税金、日本は約70円/L!アメリカやヨーロッパは?

「高い」と感じるユーザーが多いという日本のガソリン税、諸外国との差はどのくらいなのでしょうか。
 
 また、日本のガソリン税が今後引き下げられる可能性があるのでしょうか。

ガソリンにかかる税金、日本は約70円/L!アメリカやヨーロッパは?

ガソリンにかかる税金、日本は約70円/L!アメリカやヨーロッパは?

 クルマと切っても切れない関係にあるのが「税金」です。

 日本の場合、おもに「クルマの購入」「クルマの使用」「クルマの保有」に関して税金が課され、それぞれ消費税、ガソリン税(揮発油税および地方揮発油税)、自動車税などが該当します。

 そのなかでも、この1年で特に注目を集めることとなったのがガソリン税です。

 世界情勢の変化や急速な円安の影響などにより、2023年はガソリン価格の高騰が話題を集めました。

 政府では、ガソリン価格の激変緩和措置として補助金の投入をおこなってはいるものの、依然として高水準が続いています。

 一方、日本のガソリン税の高さを指摘する声も少なくありません。

 日本のガソリン価格の内訳を見ると、1Lのガソリンに対して48.6円の揮発油税と5.2円の地方揮発油税が発生しており、そこに10%の消費税も課されます。

 ガソリンの小売価格が170円/Lの場合、そのうちのおよそ70円、割合にして約40%が税金が占めている計算になります。

 たしかに、生活に深く関わる製品のなかで、40%が税金を占めているものはガソリンをおいてほかにありません。

 ただ、「高い」や「安い」というのは相対的な評価であるため、日本の事例だけを見て判断するのは尚早です。

 では、諸外国のガソリンにはどの程度の税額が課されているのでしょうか。

 アメリカの場合、全米で平均するとレギュラーガソリン1ガロンあたり約53セントのガソリン税(物品税ふくむ)が課されるようです。日本式に換算すると、約20円/Lとなります。

 ただ、アメリカでは州ごとによってガソリン税が大きく異なる点には注意が必要です。

 たとえば、最も環境規制の厳しい州のひとつであるカリフォルニア州では約1ドル/ガロン(約38円/L)となる一方、石油産業の盛んなテキサス州では約40セント/ガロン(約15円/L)となります。

 次に、ヨーロッパの例を見てみましょう。欧州連合(EU)では、1Lあたり0.36ユーロ(約57円)の物品税を課すことを加盟国に対して義務付けています。

 ただ、実際にはそれ以上の税額を課している国も多く、ドイツでは0.67ユーロ(約106円)、フランスでは0.68ユーロ(約107円)、イタリアでは0.73ユーロ(約115円)の税金が、1Lあたりのガソリンに対して課されています。

 これらを総合すると、日本の税金が約70円/Lであるのに対し、アメリカ(全米平均)は約20円/L、ヨーロッパ(ドイツ)は約106円/Lとなります。

 たしかに、アメリカに比べると日本は割高ですが、ヨーロッパと比べるとむしろ割安です。つまり、日本の税金だけが著しく高額であるということはないようです。

 とはいえ、多くの国民がガソリン税の減税を望んでいることも事実です。

 ただ、日本が産油国ではない以上、今後ガソリン税が減税される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

ガソリン税は絶対に下がらない!? その理由とは

 現状、日本は原油のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。

 さらに言えば、その90%近くが中東諸国からの輸入となっています。

 にもかかわらず、日本は世界屈指の石油消費国家でもあるため、原油の輸入状況が国民生活を大きく左右します。

 もし仮に、このような状況のなかで中東の情勢が大きく変わったり、あるいは中東との関係が悪化するなどの事態となって原油の輸入がストップしてしまえば、日本はたちまち国家存亡の危機を迎えてしまいます。

 そのため、日本は古くから石油に頼らない政策を採ってきました。原子力発電所(原発)の建設の推進も、基本的にはそういった文脈に基づくものでした。

 ただ、東日本大震災以降原発の稼働状況は縮小し、石油依存比率はさらに上昇傾向にあります。

 国家百年の計を考えたとき、石油依存比率を下げることは必要不可欠です。

 そのため日本においては、これまでガソリン税関連税が減税された事例はまずありません。

 現在支給されている補助金も、あくまでも急速な高騰による経済活動の混乱を防ぐためのものであり、恒久的にガソリン価格を引き下げることを目的としたものではありません。

ガソリンは生活に欠かせないものであるからこそ、その税制については常に多くのユーザーの議論の対象となる

ガソリンは生活に欠かせないものであるからこそ、その税制については常に多くのユーザーの議論の対象となる

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 ガソリンは生活に欠かせないものであるからこそ、その税制については常に多くのユーザーの議論の対象となります。

 一方、そのなかでも日本が産油国ではないということを前提とした議論は決して多くはありません。

 この点を踏まえずに、政府や特定企業を批判しても意味のある議論とはなりません。

 逆に言えば、日本が産油国ではないにもかかわらず、全国各地で給油できるインフラが整っているのは先人たちの努力の成果です。

 ガソリンに関する税制については、国民全員が現状を正しく理解したうえで、建設的な議論をすることがなによりも重要です。

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