なぜAppleは「車の鍵」を開発? iPhoneを鍵化する「CarKey」の狙いとは

Appleが提供するキーレスシステム「CarKey」は、従来のような物理キーを持たずに、ドアロックを解除したり、エンジンを始動したりできる画期的なシステムです。今後、普及していく見込みはあるのでしょうか。

Appleの提供するCarKeyって何?

 Appleが提供するキーレスシステム「CarKey」は、従来のような物理キーを持たずに、ドアロックを解除したり、エンジンを始動したりできる画期的なシステムです。今後、普及していく見込みはあるのでしょうか。

AppleがBMWに搭載するデジタルキー「Apple carKey」。今後、Apple CarPlayのように普及するのか?

AppleがBMWに搭載するデジタルキー「Apple carKey」。今後、Apple CarPlayのように普及するのか?

 2020年6月、Appleが開催した開発者会議(WWDC20)にて発表されたiPhoneの新機能「CarKey」ですが、これは簡単にいえば、iPhoneやApple Watchがクルマのキーになるというものです。

 まずは近距離無線通信をベースに、従来のキーレス機能をiPhoneに付与するところから始まることが明らかにされていますが、その後、クルマに近づくだけで自動的に解錠できるようにするという計画も発表されています。

 これにより、手ぶらでクルマのドアロックを解錠したり、iPhoneを使ってエンジンを始動する、といった近未来的な方法でクルマを使用することができるようになると期待されています。

 2020年11月時点では、BMWの1/2/3/4/5/6/8各シリーズ、X5/X6、X7/X5M/X6M/Z4となり、2020年7月1日以降に製造されるモデルが対象。なお、45か国で利用可能にすると発表しています。

 これは、CarKeyを利用するためにはクルマ側にも専用の装備が必要であるためであり、AppleとしてもまずはBMWで実績を作り、順次他のブランドへ拡大させていくと考えているようです。

 また、従来の物理キーではできなかった「権限の付与」も可能になるため、キーを複製しなくても、iPhoneさえあればドアロックの開施錠ができるようになります。

 自車の開施錠が便利になるのはもちろんですが、この機能の真価を発揮するのがカーシェアリングです。

 物理キーの引き渡しをすることなく、カーシェアリングを利用することができるようになるため、CarKeyは自動車業界のシェアリングエコノミーの発展にも貢献すると考えられます。

 日本ではクルマを運転する際には運転免許証の携帯が義務付けられていますが、現在運転免許証とマイナンバーカードを連携させる方向で議論が進められています。

 これが実現すれば、スマートフォンに自動車運転免許を搭載することも可能になるため、CarKeyと合わせればまさに「スマホひとつ」でクルマの運転ができることになります。

 電子マネー決済も普及しつつあるため、スマホさえあれば出先での食事や買物に困ることもありません。

 一方で、新しい技術が採用されると、クルマに新しい部品が増え、故障の原因となるリスクが増えるという問題もあります。ある自動車修理工場のスタッフはこのように話します。

「プッシュスイッチ式のエンジンスターターが登場したとき、シリンダー型の始動システムでは必要なかった電子部品が追加されました。こうした電子部品の不調が原因でエンジンが始動できないといったトラブルは年に数件ですが存在しています。

 自動車メーカーやAppleは、CarKeyの搭載に際して厳しい試験を繰り返して信頼性を担保するとは思いますが、機械である以上何らかの問題が発生する可能性はあります。

 もし故障した際、CarKeyはAppleの認証が必要になる可能性が高いため、これまで以上に修理に時間がかかったり、修理費用が高額になる可能性はあります」

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 技術が進歩し、あらゆることが便利になる一方で、複雑化したシステムによって故障のリスクが増えたり、整備に時間や費用がかかる可能性もあるようです。

いまやApple CarPlayはほぼ標準化。 CarKeyも将来にはそうなる?

 通常のキーレスエントリーシステムに比べて、iPhoneなどの端末は、端末自体にパスワードや顔認証によるロックがかかっていることから、セキュリティは向上しているといわれています。

 また、将来的には超広帯域無線の技術を使い、車両とiPhoneの位置関係でもユーザーを認識するようになるため、セキュリティはさらに強化されると発表されています。

 ただ、普及という面で考えるともう少し時間がかかりそうです。そもそもCarKeyは、iPhoneやApple Watchを対象としているということもあり、全車種標準装備ではなくあくまでオプションでの取り扱いとなる予定です。

 具体的な価格などは明らかにされていませんが、価格次第ではiPhoneユーザーも様子見をするかもしれません。

いまやグローバル市場で8割以上の新型モデルに採用される「Apple CarPlay」

いまやグローバル市場で8割以上の新型モデルに採用される「Apple CarPlay」

 とはいえ、セキュリティ面やユーティリティ面から、スマートフォンをクルマのキーにするというメリットも少なくないことから、ゆるやかに浸透していくものと考えられます。

 2019年のiPhoneシリーズの総出荷台数は、1億台をゆうに超えるとされ、2019年の世界全体での新車販売台数は約9000万台であることと比べると、CarKeyを採用することでiPhoneユーザーを自社の顧客にできるのなら、多くの自動車メーカーがCarkeyを導入していくことでしょう。

 iPhoneも当初は懐疑的にとらえられることがありましたが、現在でも押しも押されもせぬスマートフォンの代表格となっています。スマートフォンの普及状況を見ると、クルマのキーがスマートフォンに集約されていくことは間違いないといえます。

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 Appleが2014年にCar Playを発表してから6年が経過しました。導入当初はBMWの一部のラインナップだけでしたが、アメリカでは97%の新車で使用可能となり、グローバルでは約80%の新車に標準装備されているといいます。

 Appleにとって、次なる成長戦略の鍵は、iPhoneをいかに日々の生活に食い込ませるかにかかっているといわれています。

 Appleが積極的にCarKeyを推進していることを考えると、CarKeyが普及して「当たり前の機能」とされる未来もそう遠くないかもしれません。

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