総選挙を控え、危ぶまれるインドの財政赤字目標達成

インド市場を見る眼~現地からの報告<HSBC投信レポート>

マーケットサマリー

インド株式市場は、昨年10月下旬から原油安やインフレ率の落ち着きを背景に、ジリ高傾向にある。一方、債券市場は12月半ばまで上昇(利回りは低下)した後に下落(利回りは上昇)。本年5月までに実施予定の総選挙を控え、財政赤字目標の達成が懸念されている。

トピックス

総選挙を控え、危ぶまれるインドの財政赤字目標達成

インドでは、2018年12月下旬に発表された財政収支統計を受けて、モディ政権が2018年度(2018年4月-19年3月)の財政赤字目標を達成できないのではないかと懸念する声が高まっている。会計収支検査局(CGA)によると、2018年 4-11月の財政赤字は、既に2018年度の財政赤字目標値のほぼ115%に相当する1,019.3億米ドル(約11.2兆円)に膨らんでいる。

2018年度予算案の中で、財政赤字は国内総生産(GDP)比3.3%以内に設定されている。この目標は、同年度の残り期間で歳出を削減し、税以外の歳入を増やすことができれば、なお達成可能な範囲にあると見られる。

財政赤字の拡大は、主として間接税収入が低迷しているためである(図表1参照)。2018年4-11月期の物品・サービス税(GST)の平均徴収率は8.2%で、2017年度(GSTは2017年7月に導入)の平均よりは高いものの、2018年度予算で政府が目標としている20%強をかなり下回っている。

歳出に見合う歳入の確保に苦労しているのは中央政府だけではない。各州政府による2018年度の借入金は急増している。一方、最近の石油価格の下落と2018年末にかけての税収の改善は、財政赤字に苦しむ州政府にとっては一時の恵みの雨となっているようだ。

インド政府は毎年2月に翌年度の予算案を発表する。今回は、その発表を前に財政赤字への懸念が高まっている。モディ政権の5年の任期が5月に終わるために、2月に発表されるものは通常の予算案とは異なる。2019年度の歳入・歳出は、5月までに行われる総選挙によって選ばれる新政権の財務相によって最終的に決定される。しかしながら、モディ政権は総選挙を控えており、中産階級を対象とする所得税率引き下げや地方経済支援を目的とする所得の直接移転スキームを含む積極的な財政計画を予算案に盛り込む可能性が高い。

2月に発表される予算案についての投資家の関心は、①モディ政権が2018年度の財政赤字目標を達成できるか、②2014年総選挙のマニフェストで掲げた財政規律を新年度予算でも維持するかの2点に集中するだろう。

インド議会は2018年3月に財政責任・予算管理(FRBM)法を制定し、2025年度末の時点で中央政府の債務残高はGDP比で40%、中央政府・州政府の債務残高の合計は同60%をそれぞれ超えないものとすると定めた(現在、後者は70%)。

しかし、2018年を通して、モディ政権は、農家向けの債務返済免除、地方への所得の直接移転、銀行資本増強債券の発行、貧困層向けの健康保険制度の導入、農産品の最低調達価格(MSP)の引き上げなど、数々の歳出増の要因となる政策を打ち出してきた。その結果、新しい中期財政健全化目標が達成できない恐れが高まっている。

以上のように財政赤字の拡大要因が増えれば、インド国債の利回り、引いては経済成長へも悪影響が及ぶ可能性も考えられる。

歳出拡大による歳入不足を補うには、GST徴収率の飛躍的な上昇が不可欠である。中央・地方の債務残高をFRBM法が定めるGDP比60%以下に抑えながら、追加的な歳出の財源を確保するためには、中央政府の税収に占めるGSTの比率を現在の3分の1から大幅に引き上げる必要がある。

株式市場

株式市場は昨年10月下旬から上昇傾向

インド株式市場は2018年10月下旬から持ち直している(2019年1月25日現在)。原油価格の下落や国内のインフレ率の落ち着きなどが相場を支えている。

当社の株式運用戦略

当社ではインド株式市場に対する強気な見方を維持している。インド経済は着実に成長しており、モディ政権による構造改革の進展から、成長率はさらに加速すると見られている。また、景気拡大に伴い企業収益が改善するなど、株式市場を取り巻く環境は良好と考えられる。インド株式の運用では、持続的な収益性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別。業種別には、金融、一般消費財をオーバーウェイトとし、エネルギー、生活必需品、ヘルスケアをアン ダーウェイトとしている。

債券市場

12月下旬から下落(利回りは上昇)

インド国債市場は、2018年9月下旬以降、上昇(利回りは低下)傾向にあったが、12月下旬からは下落(利回りは上昇)している(2019年1月25日現在)。本年5月までに実施される予定の総選挙を前に、モディ政権が景気対策を打ち出し、財政規律が緩むとの見方がマイナス要因となっている。

インド準備銀行は12月5日の会合で政策金利を6.5%に据え置いた。金融政策のスタンスは「調整された引き締め」を維持している。しかしながら、インフレ率は落ち着いており、利上げの必要性は後退していると見られる。

当社の債券運用戦略

インド債券市場は、グローバル投資家にとり、良好な投資機会を提供していると見ている。インド経済はインフレ率を歴史的低水準に抑えながら高い成長を続けており、ファンダメンタルズは良好である。最近の原油価格の下落もプラス要因(インドは国内石油需要の約8割を輸入に依存)。また、インド国債は投資適格級ながら、利回りは7%台の高水準にある点も注目される。

インド債券の運用においては、流動性の高い残存期間5年から10年のルピー建国債の組入れを引き続き高めに維持。また流動性の高いルピー建て社債も選好している。

為替市場

インドルピーは12月以降は弱含み

インドルピーは2018年10月半ばまで下落した後、原油価格の下落などを受けて、対米ドル、対円で反発したものの、12月以降は再び弱含んでいる(2019年1月25日現在)。

ルピー相場は、中長期的には、良好な経済ファンダメンタルズ、潤沢な外貨準備高が下支え要因になり、底堅い動きになると予想。

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