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【東芝危機】半導体売却「訴訟で恫喝」 足元見るWDに根強い不信

東芝本社が入るビル=東京都港区(原田史郎撮影)

 東芝が、「日米韓連合」を軸に東芝メモリの売却交渉に臨む方針に転じたのは、本命だった「日米連合」を主導するWDが条件闘争で譲らず、合意が難しいと判断したからだ。債務超過の解消に残された時間の少ない東芝の弱みを見透かし、強気な姿勢を貫くWDへの不信感が改めて浮き彫りになった。ただ、日米韓連合と契約しても、東芝がWDとの訴訟に負ければ売却自体が暗礁に乗り上げる。
 「訴訟で恫喝(どうかつ)し、自分たちの経済権益を取りにいっている」。関係者はWDのやり方に憤りを隠さない。
 東芝は8月中旬から日米連合と集中的に交渉を進めてきた。WDによる国際仲裁裁判所への提訴が障壁になって他陣営との交渉が進まず、期限内の売却完了が危うくなったからだ。交渉に影響力を持つ経済産業省も東芝の背中を押した。
 だが、交渉の着地が見えそうになった段階で埋めがたい隔たりがあらわになる。WDが将来的に東芝メモリの経営に大きく関与することを示唆。三重県四日市市の半導体工場で生産配分などを有利な形にすることも求め、主要顧客の米アップルから不評も買った。
 極めつきは、WDが先週の交渉で、買収資金の一部にあたる2千億円を融資の形で出すよう東芝に求めたことだ。財務状況の厳しい中で巨額の貸し付けを要求してきたことに東芝側は猛反発。交渉を後押しした経産省もさすがに閉口した。
 WDにも事情はある。業績好調な協業相手の東芝メモリが他社に渡れば、WDの経営にも悪影響を及ぼすからだ。だが、訴訟で交渉が延び、後がなくなった東芝から有利な条件を勝ち取ろうとする姿勢は「それでも提携相手か」と東芝の拒否反応を招いた。
 こうした中、日米韓連合を主導するベインは、ネックであるWDとの係争が続いていても買収を完了できる起死回生の案で東芝を自陣営に傾かせた。
 官民ファンドの産業革新機構などは係争中の案件にはお金を出しにくいが、買収段階ではアップルなどが資金を肩代わり。係争解決後に機構などがお金を出す枠組みだ。競合するSKは融資の形で資金拠出するが、東芝は「議決権を取らないことがはっきりしている」と評価。各国独禁法の審査が通りやすくなると判断した。
 だが、WDは徹底抗戦する構えでリスクも大きい。(万福博之、井田通人)