結果を出すリーダーは「い」で終わる言葉を使わない

一流の上司と非一流の管理職は何が違うのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「一流は具体的な数字をもとに考える。一方、ダメなリーダーは『安い、高い』『多い、少ない』といった漠然とした意味合いの『い』で終わる形容詞を多用する傾向がある」という——。

※本稿は、小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

浮かんでくる不安な気持ちの形容詞

写真=iStock.com/OKADA
※写真はイメージです

話に具体性がなければ、何も伝わらない、変わらない

ダメなリーダーは、漠然としたことしか言いません。例えば、営業成績が良くない部下がいたとします。「もうちょっと頑張れよ」「はい、分かりました」これは、無意味なやりとりの典型です。「もうちょっと」では、何を、どのくらい、どう頑張ればいいのか、まったく分かりません。

ぼんやりしたことしか言わない上司も上司なら、「分かりました」と答える部下も部下です。ただ分かったふりをして、この場をしのごうとしているだけです。お客さま訪問の数を増やすのか、それとも、訪問数を減らしてもいいから、提案力を上げるのか。具体性のある話をしなければ、何も変えていくことはできません。

私がよく大切だと言っている「お客さま第一」や「一歩踏み込む」も同じです。それを言って反論する人はいないので、具体化しないと「思考停止語」になってしまうのです。

形容詞を使わず、数字で考える

会議に出ていると、「もう少し価格が安ければ売れるのに」という話が出ますが、こういう発言が出ると、私は必ず尋ねます。

「もう少し、というのは、具体的にはいくらですか? あと何円安ければ売れるのですか?」

このように、「もう少し」とあやふやな言い方をするクセがついてしまうと、具体的な解決策に落とし込めなくなってしまいます。これが「あと何円」とはっきり数字にできれば、そのためにはどこをどう削る工夫をしたらいいかということを考えることができるようになります。つまり、数字で考えるクセをつけると、話は具体的に進むのです。

これと同じように、競合他社との比較を、どっちが「安い、高い」「多い、少ない」「遅い、早い」といった形容詞だけで語るのも危険です。これだけでは具体的な比較になっていないからです。

いくら高いのか、どのくらい多いのか、どのくらい早いのかというところをきちんとリサーチして数字で表現しないと、どうしていけばいいかという具体的な対応策は考えようがありません。

普段から数字で表現することを意識していない人は、的確な行動ができない人です。だからこそ、具体的にものを考える、とくに数字でものを考える、数字に落とし込んで話をする習慣づけは、経営者にはとても重要です。もちろん、部下にもそうさせるのです。会議で、あいまいな言葉が出たら、「具体的には?」と必ず質問するのです。

「なぜそう思うのか?」根拠をはっきり示す

では、とにかく数字を挙げておけばいいのか。実はそれだけでもまだ不十分です。当然ながら、そこには「なぜその数字にするのか」という根拠が必要です。なぜそうする必要があるのか、みんなが納得できる根拠を示せれば、より社員も動きやすくなります。

小宮一慶「できる社長は、『これ』しかやらない 伸びる会社をつくる『リーダーの条件』」(PHP研究所)

小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)

例えば、「ある商品の原価を5%下げたい。なぜなら、それが達成できると、ライバルの○○社より、高品質の商品を低価格で提供でき、お客さまにこれまで以上に喜んでいただけるQPS(クオリティ・プライス・サービス)を提供できるからだ」と言われたら、どうでしょうか。こういう話だったら、社員の納得度、モチベーションも上がります。

そういう具体性がないまま、ただ「原価を下げろ」と言うのでは、やる気が出ません。根拠がはっきりしていないと、数字だけが一人歩きし、空回りしてしまいます。せっかく数字で表現しても、それでは逆効果です。経営者に対する信頼感が失墜してしまう可能性もあります。

数字は明確な根拠とセットで、意味を持つものなのです。数字に強く、その根拠を論理的に説明でき、そのために何をしたらいいかを具体的に話せるリーダーが、人がついてくるリーダーなのです。

小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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