情報BOX:英中銀、インフレ懸念で利上げ論議 コロナ対策終了で異論も

 10月11日、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は、コロナ禍が始まって以来、利上げの準備を本格化させている最初の主要中銀となったようだ。ロンドンのイングランド銀で2017年12月撮影(2021年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

[ロンドン 11日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は、コロナ禍が始まって以来、利上げの準備を本格化させている最初の主要中銀となったようだ。インフレが2%目標の2倍の伸びになる中で、利上げの圧力にさらされている。

ベイリー総裁は8日公表のインタビューで、目標を上回るインフレは定着しないよう手を打つ必要があると表明した。

金融政策委員会(MPC)のソーンダーズ委員も、市場がこれまでの想定より利上げ時期が大きく早まることを市場が織り込み始めているのは「適切だ」と述べた。

英国の利上げ見通しについて幾つかのポイントを示す。

<予想される利上げ時期>

投資家は早ければ11月4日の会合で主要政策金利が現在の過去最低の0.1%から引き上げられる可能性を見込んでいる。利上げは米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)に先駆ける形となる。ノルウェーとニュージーランドの中銀は既に利上げに踏み切っている。

金融市場は現状で、来年に少なくともさらに2回利上げがあることを織り込んでいる。

ただ、BOEがごく緩やかでしか引き締め政策を実施できないとみるエコノミストもいる。コロナ対策のロックダウンの反動で供給不足と人手不足に見舞われていることで、経済の勢いが失速するとの懸念がそうした見方の背景にある。

<なぜ利上げが議論されるのか>

英国がサプライチェーンの問題やエネルギー価格高騰、労働力不足などに直面しているのは世界中の他の多くの国と同じだ。しかし、投資家が特に指摘するのは欧州連合(EU)からの離脱という要因。EU離脱がボトルネックを悪化させていることで英国がとりわけインフレになりやすく、このため利上げに向かいやすいとみている。

特にこの数週間というもの、英国では天然ガスの在庫を増やせず、ガスの卸売価格が急騰。トラック運転手が不足し、各地でガソリンスタンドの備蓄が尽きる現象が起きた。

BOEは先月、消費者物価指数(CPI)上昇率が今年末ごろに4%を超えるとの見通しを明らかにしていた。ところがそれ以来、燃料価格と家計のエネルギーコストはさらに上昇した。

BOEに新しく加わったチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は、同行が期待していたよりも、インフレが一時的な現象では済まないことが心配だと述べている。

<利上げでインフレの上昇は即座に止まるのか>

答えはノーだ。ベイリー総裁は既に、インフレを高進させているサプライチェーンのボトルネックについてBOEができることは何もないと指摘している。エネルギー価格もBOEがコントロールする範囲にはない。

しかしBOEの一部当局者は、自分たちがすぐに動かなければ、自分たちのインフレ抑制能力に対する個人や企業からの信頼を失いかねないと懸念しているように見える。

実際、国民は物価上昇の加速をますます想定するようになっているように見える。ジョンソン首相は労働者の賃金引き上げによる経済強化を公約してきた。しかし、バンク・オブ・アメリカの最近の調査によると、賃上げの見込みは広がっていない。つまり、今のところは、1970年代に見られたような実害のある賃金と物価の上昇スパイラルのリスクは小さくて済むことになる。

<利上げへの異論>

BOEはまだ様子見でいるべきだと考えるエコノミストもいる。利上げが英経済の回復をこれ以上、遅らせないことを確かに見極めるべきだというのだ。

英政府はコロナ対応の雇用維持プログラムを終えた。しかし、終了時点ではまだ推定100万人がプログラムを利用していたし、家計のやり繰りは来年にはきっときつくなると見込まれる。

納税者にとっては、エネルギー料金の請求が高くなるだけでなく、医療や社会保障の財源に向けて増税も決まっている。一方で政府が別のコロナ対応策を終えたことで、国からの給付金は記録的な大幅削減になったばかりだ。

家計が今や、総体的に見れば支出でなく貯蓄性向を高めつつある可能性を示す兆候も出てきている。

歴史を振り返えれば、金融政策の正常化を急ぎすぎて経済回復が阻害された事例はいとまがない。たとえば金融危機後のECBが2011年に利上げしたときもそうだった。

<利上げの予想幅>

BOEは、近い将来に利上げに踏み切るにしても、歴史的な低金利水準は維持する考えを明示している。

しかし利上げ幅がどれぐらいになるについて、投資家やエコノミストの見方は分かれている。

金利先物市場は年末までに15ベーシスポイント(bp)の利上げがある確率を約90%、来年半ばまでにさらに25bp引き上げられる可能性を100%織り込んでいる。

一方、エコノミストの中には利上げペースがもっとゆっくりになるとの見方もある。

パンテオン・マクロエコノミクスのサミュエル・トムス氏は「来年第2・四半期に政策金利は0.25%まで引き上げられるが、来年に上げなければいけないのはそこまで。その次の利上げまで中銀は1年の間隔を空ける余裕がある」とみる。

しかし、元BOE当局者のアンドリュー・センタンス氏は、近い将来に1回だけの利上げでは、6%にも高進しかねないインフレをコントロールするには不十分だとの見方。「中銀は何らかの手を打つ準備をしている合図を送る必要がある。小幅な幾度かの利上げがまさに、そうした合図になる」と話した。

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