まもなく延伸「東海環状道」ついに公開! 新たな終点“三重県の最北”が激変!? 鉄道が果たせなかったコト

東海環状道の“左下”がまもなく延伸。三重県最北のICが新たな終点となります。鉄道もここで終点となる県境の街はいま、産業が集積し“激変”していました。

東海環状道の新たな終点「いなべIC」

 国土交通省 北勢国道事務所は2024年10月17日、東海環状道の新たな終点となる「いなべIC」(三重県いなべ市)を報道陣に公開しました。

Large 241018 inabe 01

2024年度開通の東海環状道 大安IC-いなべIC間。一部を除き暫定2車線だが橋脚は4車線分(乗りものニュース編集部撮影)。

 新四日市JCTから北へ延伸してきた東海環状道の三重県区間は、2024年度、さらに大安IC-いなべIC間6.6kmが開通します。いなべICから岐阜県の養老ICまでの最終区間も目下、建設が進んでいます。

 三重県最北のICとなるいなべICは山に囲まれています。岐阜県はこの山の向こうです。また、西の滋賀県側を望むと、石灰岩が露出した藤原岳と、その石灰石でセメントを製造する太平洋セメント藤原工場が見えます。

 ICの最寄りは、三岐鉄道北勢線の終点である阿下喜駅です。また、員弁川の西岸には太平洋セメントの貨物輸送も行う三岐鉄道三岐線が通ります。三岐線はその名の通り、本来は岐阜県を目指したものの、市内の西藤原駅が終点となりました。

 このような立地のいなべ市ですが、実は東海環状道の整備に伴い右肩上がりの成長を遂げています。

 東海環状道の事業着手前である1996年と比べ、工業団地の企業立地は約2倍、市内の製造業従業員数は約1.5倍に。日沖 靖市長は「市民所得が四日市市を抜いて県内1位になりました」と胸を張ります。

 多くの企業は東海環状道の開業を見越し、いなべ市に進出しています。四日市港に直結していることのほか、「産業が集中する湾岸を避け、山側に拠点を設ける動きのなかで、物流の利便性と、活断層のない安定した地盤がメリットになっている」と市長は話します。

東海環状道を活かした「岐阜の前線基地」に

 東海環状道の開業を見据え、いなべ市は市役所をいなべIC近くに移転し、防災拠点を整えました。

「岐阜へも、滋賀へも、東海環状道を使ってここから物資の補給ができます。東日本大震災のときには、山あいの岩手県遠野市が三陸沿岸への前線基地となりましたが、その立ち位置を(東海地方で)担うのが、いなべ市です」(日沖市長)

 山の東の岐阜県海津市方面は、歴史的に水害に見舞われた海抜ゼロメートル地帯が広がる“輪中地域”です。災害時を想定し、そこからいなべ市へ避難する訓練も、すでに行われているのだとか。

 さらに、NEXCO中日本はいなべICに雪氷対策の基地を設けるといいます。山の北側の関ケ原は豪雪地帯ですが、いなべ市は「年に数回降る程度」とのことで、まさに冬の前線基地ともなります。

 ただ、やはり県境を越えて養老ICまでの(名神以南)全線開通が待ち遠しいところ。その時期は2026年度の予定ですが、県境を貫く養老トンネル工事で湧水が発生しており、対策を話し合っている最中だといいます。延期の可能性もなくはない、といった状況です。

Large 241018 inabe 02

日沖 靖いなべ市長。いなべICで建設中の料金所をバックに(乗りものニュース編集部撮影)。

 養老まで開通し名神高速に接続すると、たとえば「伊勢湾岸道から北陸道へ」「三重から愛知を通らず東海北陸道へ」といった、これまで考えられなかったような流れが生まれます。いなべ市がその経路になり、防災における優位性も本領を発揮することになります。

 ちなみに、東海環状道の名神以南、新四日市IC-養老JCT間で既にある3つのIC(東員、大安、養老)は全て「ETC専用化」されており、いなべICも開業時からETC専用となります。この区間は「ETCがなければ通過するしかない」となる見込みです。

ジャンルで探す