世界的にも「クレイジーなJCT」!? 首都高のスーパーぐるぐるJCT「大橋」のヒミツ 大都会の“古代遺跡”が自然に還りつつある!?
都市部ならではの奇抜な道路構造物だらけの首都高で、ひときわ異彩を放つのが「大橋JCT」です。まるで古代遺跡のような見た目の円筒形JCTですが、実は本当に古代遺跡のようになりつつあるのです。
毎日クルマがグルグルしている大橋JCTの「上」も「壁」もスゴイ!
首都高速道路が2024年10月11日、大学生へ最新の点検・補修技術や道路の安全を守る取り組みを紹介する「首都高点検・補修デモ2024」を開催しました。今年の会場は「大橋補修基地」。C2中央環状線と3号渋谷線が交わる「大橋JCT」のナカにある基地です。
学生たちはここで、道路に関する最新技術を直に触れるとともに、大都会のなかにたたずむ大橋JCTのヒミツも学ぶことになりました。
大橋JCTは地下のC2「山手トンネル」と、高架の3号線を行き来するため、限られた用地に急勾配のループ状ランプを重ねた構造になっています。ランプは全て壁で覆われています。
このJCTを外から見ると、楕円形の巨大なコンクリート構造物といったところ。外観はまるでローマのコロッセオのようですが、実は本当にコロッセオ風を意識したデザインになっているそうです。
その壁の中は広い空洞になっています。壁内の地上部の約半分と、壁内に設けられた事務所が補修基地です。地上部のもう半分は目黒区のフットサルコートに、そこに隣接する壁の一部はコインパーキングにもなっています。
そしてランプすなわち壁の屋上も、一部は目黒区の公園です。夜間は閉鎖されますが、エレベーターで誰でも行き来できます。
屋上は補修基地の7階にあたります。外へ出ると、真横には3号線と大橋JCTをつなぐランプの接続部が。「何万台ものクルマが、この真下からここまでぐるぐるを行き来しているのか」と感慨に浸っていると、首都高の担当者が「地下の方が深いですよ」と教えてくれました。
C2から3号線までの高低差は約70m、ビル20階分にもおよび、このなかで1周約400mものループ(国立競技場のトラックと同じ長さ)を2周する構造になっているそう。
しかも、形状が楕円のため、ハンドルの角度を変えないでいると壁にぶつかります。実はこれ、「眠気防止のためにわざと楕円構造にしたと聞いている」とか。
視察に訪れた外国の道路会社の幹部に、こうした大橋JCTの構造を話したところ、思わず「クレイジー」と漏らしたそうです。
ハクビシンはどこから屋上に来てるのか?
屋上の換気塔付近の一部は、年に数回しか公開されないエリアです。“目黒川の原風景”を再現したという生き物の生息空間「おおはし里の杜」となっています。
ここには多数の植物が育てられているほか、田んぼが設けられており、地元の児童の稲刈り学習にも使われています。常時、水を張った状態だという田んぼをのぞくと、モツゴが元気に泳ぎ回っていました。
ここには2019年から、オオタカの飛来が確認されています。「オオタカは食物連鎖の頂点に立つ鳥です。そのオオタカが来るというのは、ここが豊かな生態系を持っていることの証なのです」と担当者。
タヌキやハクビシンもここで確認されているそう。オオタカは新宿御苑や代々木公園から飛んでくるとのことですが、タヌキやハクビシンは、一体どうやってこの屋上まで来るのか、経路はよくわかっていないとのこと。
ふと周りを見ると、この屋上は隣接するタワーマンションと直結しています。大橋JCTがあった場所にはかつて、東急バスの大橋車庫と住宅がありましました。大橋JCTの建設は、その跡地の“再開発”を兼ねた建築・緑地と一体になったプロジェクトだったのです。
ちなみに、おおはし里の杜は企業林や里山など保護地域以外の生物多様性保全に貢献している場所として環境省の「自然共生サイト」に認定され、2024年8月には、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)と国際自然保護連合(IUCN)が運営する国際データベースに登録されたそうです。
2025年でC2の全線開通と大橋JCTの全面供用から10年を迎えますが、JCTのコロッセオ風の外壁は、上に伸びていくツル植物で緑化されており、現在、壁の半分くらいまで伸びてきているところがあります。いずれ、このJCTは完全に緑で覆われるでしょう。
もしも何千年もの後、緑に覆われたなかでこの構造物が発掘されたら、未来の人はさぞ驚くのではないか――そんなことを思いました。
10/17 09:42
乗りものニュース