異例! 「民間機の整備士が空自のF-15戦闘機洗う」スゴイ業務、裏側は? 民間機と作業どう違う?

「民間機専門である同社の整備士が、なぜか航空自衛隊のF-15J戦闘機の胴体を洗う」という珍しい業務を担当するMRO Japan。その作業内容は民間機とどう違うのでしょうか。実際に聞いてみました。

そもそも目的が違う?

 2024年9月、沖縄・那覇空港に拠点を構えるMRO Japanが行う異例の業務が、マイルストーンを迎えました。同社は様々な民間航空会社の航空機整備事業を行う会社ですが、「民間機専門である同社の整備士が、なぜか航空自衛隊のF-15J戦闘機の胴体を洗う」という珍しい業務を担当しています。同社によるF-15J洗浄委託機数は、9月に1000機に達成したということです。

 MRO Japanの整備士が、空自の戦闘機の洗浄を受け持つにあたり、どのような違いやポイントがあるのでしょうか。

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「MRO Japan」格納庫に駐機する2機の空自「F-15J」(2024年9月20日、乗りものニュース編集部撮影)。

 MRO Japanによると、同社の整備士による洗浄作業は2021年1月に始まったとのこと。自衛隊では、那覇基地の「整備補給群」で実施されていた洗浄作業を担当する企業を探しており、これにMRO Japanが入札したことで実現したそうです。

 F-15Jの洗浄は、MRO Japanの整備士が6人1チームで実施します。まずコックピットのキャノピーと胴体の境目をはじめ、胴体中の隙間やエンジンなどをテープなどで覆う「マスキング」を実施します。この作業は、1機あたり2時間ほどにおよぶ洗浄作業のなかでも、最も多くの時間を要するほど。マスキングを丹念に施したあと、水や洗剤をかけ機体をブラシなどで磨いて、再度水をかけます。その後にマスキングを剥がし、作業は完了します。

 洗浄の目的は、美観を保つことで旅客の安心感を損なわないようにするのが主眼である旅客機とは異なり、主に機体に付いた塩分を落とすということです。海に隣接する那覇基地の戦闘機は、塩によるサビや劣化が考えられるため、それを防止すべく洗浄が行われます。

 過去の取材に対し、戦闘機が元々好きでMRO Japanに入社したという整備士は「民間会社として初の挑戦に参加できるということを、とても誇らしく思っています」と話します。同社によると、現在この業務にあたる整備士は、概ね20人から30人ほどとのこと。また、担当者によると、洗浄作業の手順は、開始時より大きな変更はないとしています。

 このほか同社ではT-4練習機やE-2C早期警戒機といった、他の自衛隊機の洗浄作業も担当しています。特にE-2Cはプロペラ機で、かつ機体上部に大型の円盤型レドーム(レーダー)を設置しているなど、明らかにF-15J・T-4とは洗浄作業の様子が異なりそうです。同社では、E-2Cの洗浄作業においては水洗いのみを担当し、洗浄液が必要な作業については自衛隊が担当するなどの運用をしているといいます。

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