信号機の長~い「フード」もう要らないの? 最近あまり見なくなったワケ 災害時は“あった方が”よい?

街なかの信号機を見ていると、庇のあるものと、ないものがあることに気付きます。自動車教習所も、この点について疑問なようです。庇の役割は何なのでしょうか。

庇の役割は主に2つ

 名古屋市にある自動車教習所「城北自動車学校」が2024年9月初旬、公式Xへ以下のように投稿しました(絵文字略)。
 
「ちょっと前の信号機にはついてたコレ(傘みたいなの)、最近のには付いてないな。。いらなくなったの?」

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庇のある信号機とない信号機(乗りものニュース編集部撮影)。

「傘みたいなの」とは、赤や青など灯火の上に付けられる帽子の“つば”のような部分で、庇(ひさし、フード)のこと。従来の電球式の信号機ではまず付けられていますが、最近のLED式では付いてないものも見られます。なぜ、庇は省略されているのでしょうか。

 そもそも庇の役割には、太陽光の遮断と、交差する道路からの灯火の誤認防止があります。電球式の信号機はレンズそのものに色がついているため、太陽光が当たると消灯している灯火が点灯しているように見えてしまうことがあります。またLED式でも、点灯している灯火のレンズが太陽光を反射することで白っぽくなり、見づらくなることもあります。

 誤認防止は、見えて欲しくない方向の道路へ対し、あえて灯火を隠すというものです。特に鋭角的に交わる交差点で顕著ですが、筒型の長い庇を取り付けて、灯火が正しい方向以外へ漏れないよう対策されています。

 では最近数を増やしている庇のない信号機は、これらの懸念はないのでしょうか。

強風で曲がった際に露呈したデメリットとは

 信号機のサイズや灯火の明るさなどは、警察庁が定める仕様によって細かく決められています。2017(平成29)年度以降は、LEDの性能が向上したことや製造コスト削減の観点から、従来よりも小型化し、庇も取り払った信号機が仕様として定められました。

 小型信号機は全てがLED式ですが、LED自体の性能向上に加え表面のレンズも改良し、さらにやや下向きに角度をつけて設置することで、太陽光による影響を軽減。誤認防止については、レンズの内側に特殊な加工を施し、ある一定の角度から外れると灯火が見えなくなるようになっています。

 こうすることで、灯火の外側に突起物としての庇を設けなくても課題を克服した信号機は、積雪しづらくなる、強風の影響を受けにくくなる、軽量といったメリットも生んでいます。しかし一方で、まさに強風により曲がってしまった場合に、思わぬデメリットも見えてきました。

 それは2018(平成30)年9月、台風21号が関西を中心に大きな被害をもたらした際のことです。大阪府内では停電により多くの信号機が消灯したうえ、強風により“明後日の方向”を向いてしまいました。やがて停電が復旧し信号機が点灯しても、小型信号機は多くが使い物にならない状態でした。

 というのも従来の信号機は、たとえ曲がってしまっても庇の隙間から灯火が漏れ、何色が点灯しているかは分かるのですが、小型信号機の場合、前出の通り一定の角度から外れると灯火がほとんど見えません。そのため再点灯しても、消えているのとほぼ変わらない状態にしか見えなかったのです。誤認防止の性能が裏目に出てしまったともいえるでしょう。

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