「ワタシの知ってるF-15じゃない!」まるで別の戦闘機「イーグルII」の機動飛行がヤバすぎた!

イギリスで行われた航空ショーで飛行展示したF-15戦闘機が、別次元の機動性を披露したと話題になりました。F-15戦闘機はアメリカ空軍や航空自衛隊も運用する名機です。それがなぜ新たに注目を集めたのでしょうか。

イギリスで披露された最新型F-15の驚愕の飛行展示

 2024年7月にイギリスで開催された世界最大の航空ショー、「ロイヤル・インターナショナル・エア・タトゥー(RIAT)」において、1機の戦闘機が観衆を驚嘆させました。その機体は見た目こそ往年の傑作機F-15「イーグル」ながら、まるで別の機種であるかのように空を舞っていたのです。

 その戦闘機は、カタール空軍向けのF-15QA「アドバンスドイーグル」。通称「イーグルII」と呼ばれる新鋭機は、圧倒的な機動性で軍事専門家をも驚愕させました。

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ロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー2024に登場したF-15QA(画像:ボーイング)。

 F-15「イーグル」は、1972年の初飛行以来、長らく「空の覇者」として君臨してきた名機で、母国アメリカだけでなく、日本を始めとして世界各国に採用され、いまだ第一線で運用されています。同機はRIATでも常連機の1つで、その雄姿を目にするために多くの人々が集まります。しかし、今回の「イーグルII」の飛行は、これまでのF-15の常識を覆すものでした。

 従来のF-15は強力なパワーと重厚な機体といった印象が強く、速度の速い高G旋回や直線的な機動を得意としています。しかし、F-15QA「イーグルII」の飛行は、まるでロシアのスホーイSu-27のような軽快さと機敏さを兼ね備えたものでした。高い迎え角を維持した小さな半径のターン、舵の効きにくい低速でも失われない機体の制御、その一連の動きは、従来のF-15とは何もかもが異なっていたといっても過言ではありません。

 なぜ、イーグルIIは同じF-15であるにも関わらず、これほどまでに進化を遂げることができたのでしょうか。その最大の要因は操縦装置に「フライ・バイ・ワイヤ(FBW)」を採用したのが大きく影響していると考えられます。

同じF-15なのに動きが全然違うワケ

 従来のF-15「イーグル」は、舵面を動かす油圧アクチュエーターとパイロットが操作する操縦桿が機械的に接続されていました。補助的に「制御増強装置(CAS)」という飛行制御装置が使われていましたが、基本的にはF-15は「人間が操縦する戦闘機」でした。

 一方、新型の「イーグルII」ではパイロットの入力信号がコンピューターによって処理され、電子信号に変換されてアクチュエーターを動かすことで、コンピューターが機体の姿勢を緻密に制御することが可能となり、人間には不可能である高度な機動性を実現できました。イーグルIIは「コンピューターが操縦する戦闘機」と言えるでしょう。

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既存のF-15「イーグル」では無理な、計12発のミサイルを吊り下げて飛ぶF-15QA(画像:ボーイング)。

 F-15はもともと保守的な思想の飛行機であり、先進的なF-16としばしば比較されますが、両者における大きな違いの1つがフライ・バイ・ワイヤの有無でした。しかし、そのような戦新装備の象徴であったフライ・バイ・ワイヤも、昨今の戦闘機ではもはや標準的な技術となっています。「イーグルII」はその技術を用いることで、原型の「イーグル」が持っていた機動性のポテンシャルを最大限に発揮できるようになったと考えられます。

 現代戦闘機どうしの戦いでは、多少の機動性の差はあまり意味を持ちませんが、「イーグルII」のフライ・バイ・ワイヤ化はF-15の搭載武装強化というメリットももたらしています。具体的には、これまで安定性の問題から事実上使用不可能だった主翼下外側の兵装搭載ステーション(Sta1/9)に、武装を施すことが可能となったのです。

 これにより「イーグルII」は、空対空ミサイルの装備数が8発から12発へ1.5倍増加しています。こうした搭載量の増加は、近年増えてきたドローン対処に有用であることが判明しています。

 F-15「イーグル」は、初飛行から半世紀以上経つ長い歴史の中で多くの改良が重ねられてきました。その集大成ともいえる「イーグルII」の登場は、F-15の歴史における1つの大きな転換点となるのは間違いないでしょう。

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