基地内に保育園あります!「女性自衛官のパイオニア」出産・育児を巡る心情を吐露
神奈川地方協力本部のトップに女性自衛官が就任しました。その本部長は、イージス艦や練習艦の艦長も務めてきた経験豊富なヒトだとか。ハードな仕事と子育ての両立、家族との絆などについて聞きました。
かなり進んだ女性自衛官の「働き方改革」
横浜市にある自衛隊神奈川地方協力本部。2024年8月現在、ここの本部長を務めているのが大谷三穂1等海佐です。
防衛大学校の女子第1期生であり、海上自衛隊初の女性護衛艦長にもなった大谷1佐は、その後イージス艦「みょうこう」や練習艦「かしま」の艦長などにも就いており、艦乗りとしても経験豊富です。家族と離れて過ごす日々の励みとは。全3回にわたった貴重なお話の最終回をお届けします。
これまで大谷1佐からは、女性自衛官としてのキャリアについても多く伺ってきましたが、ひとたび仕事を離れれば母親としての顔もあります。自宅と護衛艦、そして官舎を行き来する生活はとてもハードで、災害派遣や長期航海などの際は自分の親に子どもを預けることも多かったそう。
現在は防衛省・自衛隊における勤務環境の整備の一環で、両親とも自衛官で艦艇職域の場合は、どちらかが陸上勤務にするなどといった人事的な配慮や、基地内に保育園を併設するといったことが行われるようになっています。
こうした施策によって、ここ10年で劇的に共働き家庭へのフォローが手厚くなっており、女性自衛官が出産や育児でキャリアを諦めずとも済むように変わってきた模様です。
コロナ禍で料理に開眼!
家族のお話にちなんで、乗員家族へのフォローについても伺いました。出港などでどうしても家族と長期間離れるケースが多い海上自衛隊。それゆえに、隊員家族を大切にしているなと、夫が海上自衛官である筆者(たいらさおり:漫画家/デザイナー)は実感しています。
実際、入港時には「アットホーム」という家族向けの艦内見学イベントを企画するなど、家族の仕事内容を知るきっかけも作ってくれます。確かに私自身、海上自衛官の妻として、夫が家を長期不在にする際には不安を感じたこともありますが、少しでもその不安を和らげられるよう部隊側が苦心しているのは感じるので、そのおかげもあって安心感を持って送り出すことができています。
ほかにも、ここ数年のコロナ禍のお話も伺いました。コロナ禍ではイベントもままならず、自衛隊でも苦労の連続だったそう。
特に大谷1佐は、コロナ禍がイージス艦「みょうこう」の艦長時と重なったこともあり、感染予防にはこれ以上ないほど気を使って官舎と艦を往復するだけの日々だったとか。家族とは離れて暮らすため、ビデオ通話でのやりとりのみ。休みの日の外出も食材を買うための商店のみというストレスフルな生活の中で、自炊という楽しさに目覚めたと語っていました。
通販で調理道具をひと通り揃え、やがてはハンバーガーをパンから作るほどに料理の腕が上達したそうで、困難の中にも楽しみを見出せる工夫はさすがです。離れているあいだに会得した暮らしの工夫が、家族と再会したときにも生きてくるのでしょう。
報道などで拝見するキリリとした横顔とはうって変わって、料理のお話をする大谷1佐の、さまざまな経験を乗り越えた先にある飾らない素顔が素敵でした。
09/06 16:12
乗りものニュース