主翼下に謎の小物体並ぶ… 異形の「エンジン17基&2種」旅客機のメリットとは? 胴体最後部もなんかヘン!

NASAでは、主翼下に設置された左右計16基の小さなお椀のような機構と、胴体の最後部の「ペットボトルのキャップ」のような機構を組み合わせた、独特な設計の旅客機案を研究しています。この設計にはどのような効果があるのでしょうか。

「翼構成や胴体形状はフツー」…その理由って?

 NASA(アメリカ航空宇宙局)のグレン研究センターでは、「SUSAN」と呼ばれる最大180人乗りの新型旅客機案の研究を進めています。これは主翼下に設置された左右計16基の小さなお椀のような機構と、胴体の最後部の「ペットボトルのキャップ」のような機構を組み合わせた、独特な設計が特徴です。なぜこのような形状となっているのでしょうか。

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NASAが研究を進めている「SUSAN」(画像:NASA)。

「SUSAN」のスペックは、現代のジェット旅客機と同じ速度帯の「亜音速」で飛び、機体形状も主翼と垂直尾翼、そして垂直尾翼上方に取り付けられた水平尾翼を持つ、旅客機としては比較的スタンダードな翼構成が採用されています。NASAはスタンダードな旅客機らしい収容能力や胴体設計とすることで、既存の空港インフラや空域管理システムを再設計することなく、そのまま流用できると紹介しています。

 その一方で「SUSAN」には、同等の乗客収容力を持つ現代の旅客機で採用されている「ジェットエンジン(ターボファン・エンジン)」らしきものがなく、その代わりに、先述したような機構が搭載されています。

 主翼に16基並ぶお椀のような機構は小型の電気エンジンで、これで推進し飛行します。16基もあるのは「分散推進」を採用しているから。これにより、離着陸能力の向上、騒音抑制といった効果が期待できるほか、エンジン故障のときの冗長性も確保できるそうです。

 胴体最後部の「ペットボトルのキャップ」のような機構は、炭化水素燃料で駆動するターボファン・エンジンです。これを使うことで、全体の35%程度の推進力が生み出されるとともに、機体の発電機を起動させ、主翼下の電気エンジンに電力を供給する役割を担います。キャップのようになっているのは、胴体表面に流れる「境界層」と呼ばれる空気の流れを効率的に吸い込み、より効率のよいフライトを可能とする効果を狙ってだといいます。

「SUSAN」は、現代のジェット旅客機と同じ速度やサイズ、航続距離などを維持し、既存の空港インフラを生かしながら、1席あたりの燃料消費量を約50%削減する効果が期待されています。なお、現状でこの研究は実機の25%の大きさを持つ実証機の制作を目標としている段階であるため、2024年時点では、この機体がいつごろ初飛行するかなど、具体的なスケジュールは発表されていません。

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