3国共同開発「空自の次期戦闘機」、イギリスはどう作る? 開発の要に聞く“最新手法”

日・英・伊の3国で共同開発する航空自衛隊の次期戦闘機開発プロジェクト「GCAP」 。国際共同開発に知見のある英・BAEシステムズは、どのようにこの機を作るのでしょうか。

日本はこれまで「米国と共同」だけ

 航空自衛隊の次期戦闘機は、「GCAP(Global Combat Air Programme)」として日本にとって初めて米国以外と共同開発されます。一方、パートナーとなる英・伊は欧州域内で以前より国際共同開発を行ってきました。
 
 こうした違いがある中、開発の拠点を置く英国の担当メーカーBAEシステムズは、どのような視線を開発へ向けているのでしょう。今回、そのBAEシステムズの担当者に話を聞くことができました。

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BAEシステムズが2024年7月に開催されたファンボロー国際航空ショーで公開したGCAP(グローバル戦闘航空プログラム)の次世代戦闘機に関する新たなコンセプトモデル(画像:BAEシステムズ)。

 インタビューを受けたのはBAEシステムズ将来戦闘機システム事業部のジョン・ストッカー氏です。ストッカー氏のGCAP内での役割は、開発の先行きと3か国のパートナーシップを支援するビジネス・ディベロップメント・ディレクターです。

 ストッカー氏の名刺には日本語で肩書が書かれ、その中に「FCAS」とも記されています。FCASという名称は、3か国が一緒に開発するGCAP誕生以前に、英国が「テンペスト」と名付けた機体の開発を進めていたころから使われています。このため、ストッカー氏は以前より戦闘機の開発計画に携わっていると伺えます。

――日本は欧州との戦闘機の共同開発は初めてです。調整力や開発力について、日本をどのように見ていますか?

 日本とのコラボレーションは、ポジティブなものばかりであると捉えています。特に三菱重工についてはGCAPが始まる前から一緒に仕事をしていることもあり、企業間で(GCAP完成という)同じ目標に向かって進んでいます。また、(3か国は)同じ脅威を共有し、対処の方向性も同じです。

 日本の技術力については英国が学ぶものもあり、文化についても歴史的なつながりを持っています。

 技術的な点では、日本は先進技術実証機X-2を飛行させるなど、政府も産業界も次世代機への開発にかなり力を入れていると見ています。GCAPが進んでいる理由として、パートナーのバランスがうまくとれていることがあります。日本は信頼できる強いパートナーです。

過去の国際共同開発どう活かす?

――英国がこれまでに手掛けた「トーネード」戦闘攻撃機や「タイフーン(ユーロファイター)」戦闘機の開発経験は、何が活用できますか?

 英国が過去の国際共同開発で学んだことは、もちろんGCAPに活かしています。その1つとして、今回のGCAPプロジェクトで、共同開発への協業を管理する国際機関「GIGO(ジャイゴ)」のような国際機関をつくりました。今後のプロジェクトでは「GIGO」の役割が重要になります。

 GCAPの開発は「タイフーン」戦闘機のときとは異なり、政府、企業間が統合された手法を用いています。「タイフーン」は、小さな機関を通して企業に情報が流れていたのに対し、GCAPは大きな機関としてGIGOがあり、そこで統合されています。

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BAEシステムズ将来戦闘機システム事業部のジョン・ストッカー氏(相良静造撮影)。

 ストッカー氏の回答から筆者は、日本が、F-2戦闘機開発の際に米国に振り回された「歴史」を思い出しました。英国も戦闘機の国際共同開発は、必ずしも円滑にいくことばかりではなかったはずです。それだけに、日英伊の3国と企業は、ともに「最初の1歩」となる組織固めへ慎重に臨んでいることが分かりました。

 戦闘機の開発は、そのシステムの複雑さ故に長期化し、開発費の高騰も多くの国で起きています。それだけに、GCAPをいかに計画通りに進ませるか、今後も3か国の連携と統制、スケジュールの厳密な管理が欠かせないといえるでしょう。

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