ついに公開「21世紀のコンコルド」操縦席に乗ってきた! 昔の「超音速旅客機」とは全く違うぞ!
実用化されれば「コンコルド」以来となる超音速旅客機「オーバーチュア」。そのコクピットの様子が公開されました。筆者は早速、シミュレーターで「オーバーチュア」の操縦体験をしてきました。
アメリカ製なのにエアバスっぽい…?
アメリカのスタートアップ航空機メーカー、ブーム・スーパーソニック(以下ブーム)では、超音速旅客機「オーバーチュア」の開発を進めています。実用化されれば「コンコルド」以来となる超音速旅客機。2024年7月に開かれたイギリス・ファンボロー航空ショーでは、この機のコクピットの仕様も公開されたほか、シミュレーターも展示され、来場者は実際に“操縦”ができました。
そのコクピットからは、どのような景色が見えるのでしょうか。筆者は早速、「オーバーチュア」の操縦体験をしてきました。
2029年の実用化を目指す「オーバーチュア」は、現在のジェット旅客機の約2倍となるマッハ1.7の速度で飛び、最大80人乗りを計画しています。それに先駆け2024年3月、同社は小型のテスト機となるXB-1の初飛行にも成功しました。
今回、展示されたシミュレーターはパイロットが訓練に使う本物と異なり、動かぬ台座に操縦用装置と液晶画面が付き、目の前の大型スクリーンに景色が映し出されるデモンストレーション用です。とはいえ、速度や高度の表示は刻々と変わり、一緒に大型スクリーンの景色も流れていきます。
席に座って見ると、方向舵や昇降舵を動かす操縦輪は同じ米国メーカーのボーイングと異なり、欧州のエアバスと同じように「サイド・スティック」と呼ばれる正副操縦士の左右脇に付く操縦桿形式です。スティックはほとんど動かない感圧式でなく、前後左右それぞれに約20度傾くようになっています。
実際に操縦桿を握り動かしてみると、ロンドン・ヒースロー空港への着陸最終進入中のシーンでは、液晶画面内に表示された速度と高度の減り具合、そして、流れ去る景色の速度感は既存の旅客機とほぼ同じでした。
「コンコルド」とは全く違うコクピット
同航空ショーでは韓国メーカーのKAI(韓国航空宇宙産業)も、戦闘攻撃機「FA-50」のコクピット・シミュレーターを展示していましたが、こちらは戦闘攻撃機らしく操縦桿の動きに俊敏に反応します。対して、「オーバーチュア」は全体的にゆったりとした反応で、速度こそ現代の旅客機を大きく上回るものの、“機体の動き”は旅客機らしくマイルドでした。
また、1960年代に開発が始まった「コンコルド」のコクピットとくらべると、オーバーチュアは、操縦システムもいっそうコンピューター化され操縦用画面も簡素です。この2機の差は、超音速旅客機開発の世界における“歴史”を示しているかのようです。
それに反して、超音速飛行への期待は今も色あせることはありません。ブームの報道資料の中で、ブリティッシュ・エアウェイズの元「コンコルド」首席パイロット、マイク・バニスター氏は「(オーバーチュアは)コンコルドの正当な後継者たる資格を有していると、私は強く考えています。というのも、(シミュレーターは)信じられないほどよく設計されているのが要因のひとつです」とコメントしています。
テスト機XB-1の初飛行に続き、コックピット・シミュレーターが公開された「オーバーチュア」は、次にどのような動きを見せるのかが楽しみです。ちなみに「オーバーチュア」はユナイテッド航空などが発注しているほか、JAL(日本航空)もブームに対し、開発に出資、優先発注権を保有しています。その点も将来注目されるポイントでしょう。
08/06 07:42
乗りものニュース