やっぱりトヨタ車がイイ! 長~い「6WDランドクルーザー」フランス特殊部隊が愛用するワケ
パリで開催の防衛見本市「ユーロサトリ2024」に、日本でも人気のSUV「ランドクルーザー」の6WDモデルが展示されていました。ただ、ここまで改造するなら別の車両でもよい気が。その理由をメーカーに聞きました。
もはやトラック、な改造ランクル
2024年6月にフランスのパリで開催された安全保障関連の防衛見本市「ユーロサトリ2024」において、防衛企業のテクナム社が、特殊部隊向けの車両「マステックT6」を展示し、会場の一角では走行展示まで行っていました。
「マステックT6」は、3軸6輪のまるでボンネット・トラックのような車両ですが、実はこのクルマ、トヨタのランドクルーザーをベースに改造されたカスタムカーです。
テクナム社は、市販車に架装や改造を施して軍や司法当局に販売しているメーカーで、その主力商品である「マステック」シリーズは、トヨタの傑作SUVである「ランドクルーザー」の70シリーズをベースに軍用車両として重機関銃を搭載できる銃座や、独自規格の開放式ロッカーなどを設置し、軍用に仕立て直したものになります。
「ランドクルーザー70」というと、オフロードに強い本格クロスカントリー車として世界規模で人気の高い日本車です。砂漠、荒野、ジャングルとあらゆる場所に対応可能な優れた悪路走破性を誇り、日本国内よりも海外での販売が主流のモデルです。
それを高く評価するのは一般ユーザーだけでなく、よりハードで時として危険な使い方をする法執行組織や軍隊も含まれており、この「マステックT6」のような特別に架装・カスタムされた「ランドクルーザー」も決して珍しい存在ではありません。
なぜランクルがよいの?
テクナム社は1987年に設立された会社で、その顧客は軍隊と、消防・法執行・治安活動などを行う政府機関となっています。扱う車両はオリジナルではなく、商用車を改造したもので、その主力商品は「ランドクルーザー70」をベースにした「マステック」シリーズです。
ボディー全体を防弾化した「アーマー B6」やピックアップトラック風に荷台部分を追加した「サバンナ」、キャビンに銃座を追加した「コマンドー」など、モデルの数は10種類を超えます。
ここまでバリエーションが多いと、「いっそのことオリジナルで作れば?」と思ってしまいますが、テクナム社の担当者によれば、そこにはしっかりとした理由があるそうです。
「ランドクルーザーをベースにしているのは、オリジナルのシャシーが極めて優れているからです。加えて堅牢で信頼性も高く、メンテナンスも簡単です。しかし、私たちの顧客である軍や政府機関にとっては、そんな優れたランドクルーザーであっても完璧とはいえず、それを補うために私たちが改造を加えているのです。デモンストレーションを行ったマステックT6については、シャシーを延長して車軸とタイヤを追加するという大きな変更を加えていますが、その一番の理由は積載量を増やすためです」
ノーマルの「ランドクルーザー70」の車重は2t程度ですが、「マステックT6」ではなんと7tにもなるとのこと。なお、荷台部分はモジュラー式になっているため任務に応じて様々な機器や兵器を搭載することが可能となっています。
改造ランクルのニーズはアフリカにあり!
「ユーロサトリ2024」の会場では、防衛関係の企業だけでなく開催国のフランス陸軍も出展しており、戦車を始めとして様々な運用中の兵器が展示されていました。その中には、テクナム社の「マステックT6」もあり、その脇にはなんと特殊部隊の隊員と称する覆面姿の隊員が立っていて、この車両についての説明までしていました。
その隊員の説明によると、「マステックT6」のフランス軍での名称は「VOS-APP」といい、用途は特殊作戦の支援だそうです。この車両は主にアフリカにおける対テロ作戦に使われていて、通常のフランス軍で多用されているグリーン系の迷彩ではなく、砂漠をイメージしたサンドイエローの塗装であるのもそれが理由とのこと。
装甲を外してオープントップにしたのも、この車両が軍隊同士で弾丸を撃ち合う正規戦での使用を想定しておらず、それよりも僻地での長距離行動を想定した結果だといいます。
じつは、アフリカにはかつてフランスの植民地だった国が多くあり、その関係で現在でもフランスとの交流や利権関係が続く地域や国が一定数あります。そのため、フランス軍はOPEX(対外作戦)の名称でアフリカ地域に一定数の軍隊を派遣しており、この地域でのテロ活動や武装勢力に対しては、たびたび武力介入まで行っています。
マステックT6のような特殊な車両を導入した理由は、フランス軍にとってはアフリカ地域での任務が自国や欧州地域の安定と並んで重要であることを示していると言えるでしょう。
07/29 07:42
乗りものニュース