「え、ロシア戦闘機を別の国に輸出!?」海外展開を目指す “南の大国” 裏に潜む思惑とは

インドが自国でライセンス生産するSu-30MKI戦闘機の海外輸出をロシアと協議中というニュースが2024年7月中旬、現地メディアによって報じられました。この狙いはどこにあるのでしょうか。

インドで作ったSu-30MKIを第三国に輸出?

 インド国有の航空宇宙企業であるヒンドスタン航空機(HAL)が、Su-30MKI戦闘機の海外輸出をロシアと協議中であると、インドのビジネス紙である「フィナンシャル・エクスプレス」が2024年7月11日に報じました。

Large 240719 su 01

インド空軍のSu-30MKI(画像:インド空軍)。

 NATO(北大西洋条約機構)のコードネームで「フランカーH」と呼ばれるSu-30MKIは、旧ソ連のスホーイ設計局(現スホーイ・カンパニー)が開発したSu-30「フランカー」シリーズのインド向け派生モデルです。

 同機は2000年からHALでライセンス生産が決定し、2年後の2002年に最初の機体がインド空軍に納入されています。2024年現在、製造ラインは止まっていますが、これまで270機以上が生産されています。インドは、このラインを再開させ海外輸出する計画を立てており、既に複数の国との間で協議を行っているとのことです。

 フィナンシャル・エクスプレスは同機輸出で重要な市場について「ベトナム、マレーシア、インドネシア、アルジェリア」と予想し、ロシアとの交渉に関しては「この取り組みの支援についてロシアも同意しており、両国間の戦略的パートナーシップは強化されている」と報じています。

ロシア兵器の生産遅延なども後押しか?

 なぜ、Su-30MKIの海外輸出をインドが行おうとしているのか、原因のひとつとして考えられるのに、2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻があります。ロシアが特別軍事作戦と呼ぶこの軍事行動で、ロシアからの兵器納入が遅れたりキャンセルとなったりする事例が発生しています。HALのSu-30MKI生産ラインの停止後、インドは事故機などで失われた機体を補填するために、ロシアにSu-30MKIを12機発注していましたが、これが戦闘激化により2022年5月にキャンセルとなりました。

 しかし、だからといってそのままでは不足した機数を補充することはできません。そこでインドのモディ首相は、2024年7月6日のロシア訪問の際、プーチン大統領との会談でロシアの技術を活用した兵器の共同生産に取り組むことに合意しました。Su-30MKIの輸出はその一環で、再開するHALの生産ラインで12機のみならず、輸出用にもっと多数の機体を製造したいという狙いがあるようです。

 インドは2010年代後半からこれまでのロシア(旧ソ連)製兵器依存を脱却し、安定供給を図るため、アメリカやイスラエルなど西側兵器を購入しつつも、自国産業の開発力を高め、自主自立路線を模索してきました。

 さらにモディ政権はこれを発展させ「Make in India」の政策を掲げており、特にロシアとはライセンス生産や合弁事業を通じて技術移転を受け、ロシア製火器をベースとした兵器開発を行い、一部は第三国にも輸出しています。

Large 240719 su 02

国産の巡航ミサイルであるブラモスERをテストするSu-30MKI(画像:インド国防省)。

 しかし、これまで戦闘機のような大きな兵器を輸出した実績はないことから、実現すればインドの軍需産業にとって大きな節目となることは確実なようです。

ジャンルで探す