超異例「“民間の”空中給油機」が日本に来た! 実は世界の一大勢力 いったいどこの機体?

ドイツ空軍機来日ですっかりお祭り騒ぎの北海道千歳基地。そこに、見慣れぬ塗装のKC-135空中給油機が飛来して、大きな注目を集めています。この機体、じつは“民間機”でした。

千歳にやってきた「ドイツ軍の空中給油機」そんなのいたっけ?

「本日(7月23日(火))11:20頃、ドイツ軍の空中給油機(KC135) 1機が千歳基地に着陸しましたので、お知らせします」

 これは、北海道千歳市がホームページ上で公表している北海道防衛局からの「令和6年度 日独西共同訓練及び日独共同訓練について」のお知らせ欄に掲載された一文です。じつは、このお知らせには不可解な点があります。というのも、ドイツ軍はKC-135空中給油機を保有していないのです。

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MSMが運用するKC-135(画像:Metrea)。

 KC-135「ストラトタンカー」は、ボーイング367-80をベースに開発された空中給油機で、これまでに800機以上が生産され、アメリカをはじめ5か国で運用されてきました。しかし、その運用国の中にドイツは入っていません。それでは、この謎のKC-135は一体何者なのでしょうか。

 X(旧Twitter)に投稿された画像を見てみると、どうやらこの機体はアメリカ企業「Metrea Strategic Mobility(MSM)」の保有機体です。MSMは、カリフォルニア州に本社を置く、世にも珍しい「民間の空中給油機運航会社」です。

 MSMは2024年5月時点で4機のKC-135を運用していますが、これらはシンガポール空軍で運用されていた機体を同社が買い取ったものです。ちなみに、そのシンガポール空軍のKC-135はもともとアメリカ空軍で運用されていた機体なので、ある意味で故郷に帰ってきたとも言えます。

 MSMによると、同社が請け負っているのは各国軍隊の平時の訓練や長距離移動時の空中給油の提供で、個別の契約に基づき世界各国に展開するとのこと。従って、今回はドイツ空軍が契約を結び、インド太平洋地域への展開を支援するためにMSMのKC-135が飛来したと考えられます。

民間企業としては世界最大の機数確保へ

 ところで、先ほど2024年5月の時点でMSMが保有するKC-135の機数は4機と書きましたが、今後はその数が大幅に増強されます。というのも、同社は同時期にフランス航空宇宙軍からKC-/C-135FRおよびKC-/C-135RGを合計14機購入する契約を結んだためです。2024年6月には、そのうち11機がすでにMSMへ譲渡されており、残る3機も今後順次引き渡されるとのこと。

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フランス航空宇宙軍では、KC-135に代わりA330MRTTを順次導入している(画像:フランス航空宇宙軍)。

 つまり、MSMでは将来的に合計18機ものKC-135を保有することになります。これは、民間企業が保有するKC-135の機数としては世界最大であるばかりか、KC-135を運用する各国空軍との比較においても、アメリカ空軍に次ぐ世界第2位の保有機数を誇ることになります。

 これまで、軍隊が営む機能の一部を外部の民間企業に委託する、いわゆる「アウトソーシング」化は幅広い分野で見られてきましたが、航空機を飛行させるコストを踏まえた場合、平時や訓練時に自国軍の空中給油機だけではなく、民間機も活用するメリットは大きいと筆者は考えます。今後、日本においてMSMが運用するKC-135を目にする機会は増えていくかもしれません。

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