「世界で最も危険な道路」が崩落してしまった… 経済への影響「計り知れない」 地震でさらに危険さを増す 台湾

SNSなどでは「世界で最も危険な道路」と評されることもある台湾の「中部横貫公路」。台湾西部・台中から東部・花蓮までを陸路で結ぶ「中央部唯一の主要道路(省道)」です。平常時でも夜間には閉鎖されることもある、かなり危険な道路です。

道路の険しさだけでなく自然災害も受けやすい「危険な道路」

 台湾の「中部横貫公路」(一部ネットでは『太魯閣道路』とも)は台湾西部・台中から中央山脈を越え、東部・花蓮までを陸路で結ぶ中央部で唯一の横断道路です。実はこの道、SNSなどでは「世界で最も危険な道路」のひとつと評されることもあります。

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一部通行できるようになった今ですが、それも1日3度ほどの時間制限があります(2024年・松田義人撮影)

 全長187kmほどの道路で、いくつもの山々を越え次々とカーブが続くことから、平常時でも夜間には閉鎖されることもあるため、そう呼ばれるようになりました。実際に行ってみると確かに危険なことがわかります。

 まず目立つのが、行く先々で工事中の箇所があることです。そのほとんどが補修工事で「工事していない時期がないんじゃないか」とも思えるほど、各所で頻繁に行われてきました。

 ここまで道路修繕が必要な背景には風土的な事情があります。台湾は、日本と同じかそれ以上に台風や地震の影響を受けやすい地域であり、各所でたびたび、自然災害を起因とした道路の崩落などが定期的に発生しています。

 その一方で、「中部横貫公路」は自然の趣を残す景色が人気で、台湾屈指とも言われる景勝地・太魯閣や「クルマで行ける台湾の最高地点」海抜3275mのエリアを通過することができるほか、天候・時間帯によって雲海を眺めながらのドライブも楽しめます。危ない一方で、観光客の往来もかなり多い道路なのです。

「完全復旧まで5年…」花蓮地震の大きな影響

 しかし2024年4月3日、「100年に一度」とも言われるマグニチュード7.2の花蓮地震が発生。この地震での18名の死者のうち3名は「中部横貫公路」上の太魯閣国家公園での巨大な落石によるものでした。一時は「中部横貫公路」沿いで取り残されてしまった観光客なども多くいました。

 地震発生からしばらく経過して、同公路はいくつものエリアで道路の崩落、土石流などによる封鎖が起きていたことも明らかにされました。このため台湾政府は「『中部横貫公路』の完全復旧まで、最低でも5年以上がかかるだろう」と発表。西部と東部を結ぶ「中央部唯一の主要道路(省道)」は長期間にわたり寸断されることとなりました。

 現在、「中部横貫公路」は、一部のみ通行ができる状況ですが、時間制限があり、当日の天候などによっては完全封鎖となることもあります。そのため、現実的に観光客がアクセスするのは困難で、「世界で最も危険な道路」は、予期することができない落石や土石流などでさらに危険さを増しています。

 また、「中部横貫公路」の寸断による経済的ダメージも大きくなっています。代替道路を使わなければアクセスできなくなってしまった東部・花蓮は、観光収益の多くを失い、地元住民はその影響について「計り知れない」と明かします。

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2024年6月には一部通行できるようになっていたものの、1日3度ほどの時間制限がある(2024年、松田義人撮影)。

 2024年7月現在、余震は今なお続いており、この経済的な打撃は長期間続くと予想されています。「世界で最も危険な道路」は、同時に経済的にも強い影響力を持つ重要な道路だったことも証明しました。

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