超長射程がウリ! 噂のみだった「超巨大ミサイル」米軍主催の大規模演習でデビュー 対中国の切り札か?

これまで本当に存在するのか疑わしかった超巨大ミサイルが、2024年のRIMIPACで確認されました。アメリカ海軍が運用する大陸間弾道弾迎撃用のミサイルが基になっているようですが、どんなものなのでしょうか。

F-14向けの「フェニックス」よりデカい!

 2024年7月3日、ハワイ沖で行われる国際海上演習であるRIMPAC(環太平洋合同演習)において、これまでわずかな目撃例しかなく、映像も不鮮明なものしか確認されていなかった、アメリカ海軍の空中発射型SM-6ミサイルが初めて鮮明な映像で確認され、実質的な公式デビューを果たしました。

 SM-6はイージス艦のVLS(垂直発射システム)において運用される長射程の汎用ミサイルです。その用途は航空機や巡航ミサイルなどを迎撃する対空用としてだけでなく、弾道ミサイルや水上艦艇に対しても使用可能です。空中発射型は2021年頃からF/A-18E/F「スーパーホーネット」に搭載され試験が行われていたことがわかっていますが、詳細は不明です。

 名称は、ミサイル本体に「NAIM-174B」と記載されていることから「AIM-174B」であると考えられます(Nは試験型を意味する)。これはSM-6の制式名称である「RIM-174B」を継承し、艦艇発射型迎撃ミサイルを意味する「RIM」から空中発射型迎撃ミサイルを意味する「AIM」に変更したものと推察することができます。

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F-14「トムキャット」戦闘機から発射されたAIM-54長射程空対空ミサイル。空中発射型SM-6ミサイルはこれよりも大型・長射程であることは間違いない(画像:アメリカ海軍)。

 AIM-174Bと従来のSM-6を区別できる最大の違いが、第一段ロケットブースターを備えていない点です。第一段ロケットブースターの主な役割は、静止状態から空力による制御が可能となるまでのスピードへ、ごく短時間のうちに持っていくことです。そのため、「スーパーホーネット」からの空中発射であれば、その必要がないことから省かれたものと推測されます。

 その他の変更点は不明ですが、仮に同等であるとするならば第一段ロケットブースターがないとはいえ、その総重量は700kgに達するでしょう。これはアメリカ海軍がかつて有していたAIM-54「フェニックス」長射程空対空ミサイルの450kgを大幅に上回る数値で、そのぶん射程は長いであろうことは明白です。SM-6の最大射程は約200km、AIM-54Cも同じく約200kmですから、AIM-174Bは300km以上に達するのではないかと考えられます。

進化し続ける中国への対抗か

 またSM-6はデジタルネットワークを活用したCEC(共同交戦能力)と呼ばれるコンセプトに準じた能力を有しているため、もしAIM-174Bも同等であるなら、たとえばイージス艦や空中早期警戒機(E-2D)から得られた情報を活かして、発射母機となる「スーパーホーネット」のレーダー探知距離外から射撃を行うことも可能であるかもしれません。

 アメリカ軍戦闘機が多用する従来の空対空ミサイルAIM-120「アムラーム」は、可能な限り小型化しエネルギー効率を高めることで射程を伸ばしてきましたが、AIM-174Bは物理的に巨大で、エネルギーそのものを大量に搭載することで射程を伸ばすという全く逆のアプローチである点が大きな特徴となっています。

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アメリカ海軍のイージス駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」より発射されるSM-6対空ミサイル(画像:アメリカ海軍)。

 AIM-120は実績のある極めて優秀な空対空ミサイルですが、近年では特に中国の戦闘機搭載用空対空ミサイルが大型化・長射程化するなか、射程の面で不利になる可能性があることがかねがね指摘されており、AIM-120を上回る飛距離を持つ空対空ミサイルの開発が急務となっていました。

 そのため2024年6月現在、新型の空対空ミサイルAIM-260「JATM」を開発中です。ただ、AIM-260の想定されるサイズはAIM-174Bより小さいため、やはりAIM-174Bの巨大さは破格と言えます。

 AIM-174BはおそらくAIM-120の後継という位置づけではないでしょう。AIM-174Bがどのようなコンセプトで開発されているのか、今後の公式発表に期待したいところです。

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