再び戦略爆撃の拠点になるか? サイパン島至近の飛行場を米軍が再建へ 実は自衛隊の姿も

日本空襲の出撃拠点でした。

大戦で日米が争った激戦の地

 在沖米軍嘉手納基地は2024年7月9日、太平洋に浮かぶテニアン島で飛行場の再建工事を実施中と発表、その様子を画像で公開しました。

 テニアン島はグアム島の北方に所在し、至近のサイパン島やロタ島などとともに「北マリアナ諸島自治連邦区」というアメリカの自治領を構成しています。

 1920年から1945年までのあいだは日本の統治下にあり、その間に起きた太平洋戦争では進攻してきたアメリカ軍との間でサイパン島と共に激戦が繰り広げられています。その後、ここを占領したアメリカ軍は島内に大規模な飛行場を開設し、B-29戦略爆撃機による日本空襲の出撃拠点として用いました。

 ただ、大戦が終結すると島の基地機能は急速に失われ、アメリカ陸軍航空軍(後のアメリカ空軍)の最後の部隊が1946年に島から去ると、民間空港に転用されたウエスト・フィールド飛行場(現テニアン国際空港)以外は荒れ果てました。
 
 こうして、長年ほぼ使われずに放置状態であったテニアン島の基地機能に再びスポットが当たるようになったのは最近のことで、2010年代後半にグアム島のアンダーセン航空基地のバックアップとして再整備されることが決まると、2023年には中国の海洋進出に対抗するためにノース・フィールド飛行場の再建が決定しています。

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2012年12月、テニアン島のノース・フィールド飛行場に降りたアメリカ空軍のC-130J輸送機。再建工事に着手する前のため、滑走路は荒れ果てたままで、ものすごい量の砂埃が舞っている(画像:アメリカ空軍)。

 今回、公開された画像もノース・フィールド飛行場の再建工事の様子で、アメリカ空軍の説明によると、この再整備プロジェクトはACE(Agile Combat Employmentの略)、いわゆる「迅速な戦力展開」の考えに基づいて行われているそうです。

 すでにアメリカ空軍や海兵隊などが輸送機やヘリコプター、V-22「オスプレイ」などを用いた各種訓練を頻繁に実施しているほか、2023年7月には航空自衛隊のC-130H輸送機も同地で訓練を行っています。

 またイギリス軍やオーストラリア軍も共同訓練でテニアン島に姿を見せていることから、基地が再建された暁には、アメリカ軍に限らず自衛隊を始めとした各国軍が本格的にトレーニングで展開し始めるかもしれません。

 なお、アメリカ空軍は2024会計年度の予算要求において、テニアン島での飛行場再建プロジェクトに7800万ドル(約120億円)を計上しています。

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