デカいデカすぎる!「世界最大のLNG船」誕生へ 一挙18隻「中国で」建造へ

カタールが発注した世界最大のLNG船が一挙18隻、中国で建造されます。その造船契約の規模も世界最大級。LNG輸出をめぐって日本とも馴染の深かったカタールですが、世界でLNG需要が高まるなか、中国が存在感を放っています。

今までのヤツより全然デカいLNG船

 世界最大のLNG(液化天然ガス)船が中国で建造されます。カタールの国営石油・ガス会社カタールエナジーは2024年4月、 27万1000立方メートル型LNG船18隻の建造契約を中国国有造船大手の中国船舶集団(CSSC)と結んだと発表しました。投資総額は約60億ドル。全隻がCSSCグループの滬東中華造船で建造され、2028年から2031年にかけて引き渡されます。

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日本に寄港する17万4000立方メートル型、全長約300mのLNG運搬船。カタールが発注した新造船はこれよりはるかに大きい(深水千翔撮影)。

 カタールエナジーはLNGの生産能力を2030年までに年7700万トンから1億4200万トンに増強するプロジェクトを推進しており、これに対応してエネルギー輸送を担うLNG船隊も大きく拡張します。新造整備されるLNGは122隻と史上最大規模。このうち18隻が今回、建造が決まった世界最大規模の「QC-Max型」となっています。

 新造船QC-Max型のLNG積載容量は27万1000立方メートル。これは日本にも寄港している標準的な17万4000立方メートル型をはるかに上回り、現在就航している中で最大船型となる26万立方メートル型(Q-Max型)をも超える世界最大のLNG船です。全長は東京タワーの高さを超える344m、幅は53.6mで、5つのカーゴタンクを備えています。

 LNGを燃料として使用する2元燃料(DF)エンジンを搭載するほか、船底に空気を送り込み気泡で船体を覆うことで船の推進・抵抗を少なくする空気潤滑システム(ALS)や主機駆動の発電機であるシャフトジェネレーター(軸発電機)などの省エネソリューションを採用。これに加えてスロッシング(液面振動)監視機能付きのカーゴタンクや衝突防止システムなど、さまざまな先進的な技術が取り入れられる予定です。

 世界最大のLNG船といっても、70か所以上のLNGターミナルに接岸することが可能で、カタールからのLNG輸送で使用されている主要な航路をカバーすることができます。

 カタールエナジーの社長兼CEO(最高経営責任者)で同国のエネルギー担当国務大臣も務めるサード・シェリダ・アルカービ・カタール氏は北京で行われたCSSCとの調印式で「本日建造契約が結ばれた船は、最新鋭で過去最大規模のLNG船であり、総額は約60億ドルにも上る。これは単一の建造契約としては業界史上最大のものになる。環境の持続可能性を常に優先しながら、LNGという安全で信頼できるエネルギー源を提供するという約束を果たすカタールエネルギーの決意を表明したい」と語りました。

中国とカタール まさに「蜜月」

「QC-Max型」を建造する滬東中華造船は、全18隻のうち8隻を2028年と2029年に、残り10隻を2030年から2031年にかけて納入する予定です。保有する船会社については現段階では4隻が招商局集団の招商局能源運輸(CMES)、3隻が山東海洋集団、2隻が中国液化天然気運輸(CLNG)と、いずれも中国船社が占めます。

 滬東中華造船はこれに加え、カタールエナジーからLNG船隊の整備計画の一環として、標準型となる17万4000立方メートル型LNG船12隻を受注しており、2024年の第3四半期(7-9月)中に1隻目が引き渡される見通しです。

 今回の建造契約はエネルギー分野で中国とカタールの協力関係がさらに強化されたことを示します。2023年、カタールから中国へのLNG輸出量は年間約1700万トンに達しました。

 なお、カタールエナジーが新造整備するLNG船122隻は、滬東中華造船のほか、韓国のHD現代重工業、サムスン重工業、ハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)が建造を担当します。かつてLNG船の建造で世界をリードしていた日本の造船所の姿はありません。

 日本は年600万トン規模のLNGを毎年カタールから輸入してきましたが、世界のLNG供給の不確実さを背景に長期調達契約を相次いで打ち切って以降、2023年には岸田首相が10年ぶりに首相としてカタールを訪問するなど、関係を模索しています。

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JERAが主に米国とのLNG輸送に用いる総州丸。カーゴタンク4つで全長約300m(深水千翔撮影)。

 この間、2023年に中国はカタールからLNG以外に原油、ナフサ、LPG(液化石油ガス)、ヘリウム、肥料・ポリマー・化学品なども多く輸入しており、カタールが主要な供給国となっています。

 こうした関係強化を背景に中国企業のカタール進出も進んでおり、中国はカタールが進める世界の天然ガス埋蔵量の約10%があるともいわれるノースフィールドガス田の拡張プロジェクトで権益の一部を取得しました。

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