まるで急行「はまなす」の代わり! 東京から前泊ナシで朝イチ札幌へ 道内「夜行バス」の真価

広大な北海道。しかし夜行バスはそれほど盛んではありません。道都・札幌と、北海道3番目の人口を持つ都市・函館とのあいだでも、現状では1往復のみです。同区間を運行する「函館特急ニュースター号126便」に乗車し、道内夜行需要を見てみます。

「はやぶさ43号」から乗り継ぎ可

 北海道は日本の国土面積の約2割を占め、九州と四国を合わせたよりも広い面積があります。しかし、道都・札幌と道内主要都市を結ぶ夜行バスはあまり盛んではないようです。
 
 札幌~稚内間は「わっかない号」1往復、札幌~網走間は夜行便が運休中で、北見まで「北見特急ニュースター号」1往復が運行、札幌~釧路間は「スターライト釧路」と「釧路特急ニュースター号」各1往復が運行と、旺盛な夜行需要があるとは言い難い状態です。かつては、札幌から稚内、網走、釧路、函館に道内夜行列車も走っていましたが、いずれも廃止されたのは無理からぬ所なのでしょう。

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北海道バスの「函館特急ニュースター号」(2024年6月、安藤昌季撮影)。

 今回の主役となる、函館~札幌間の高速バスも、「高速はこだて号」は夜行便を休止。北海道バスの「函館特急ニュースター号」のみが1往復の夜行便を運行しています。

 かつては、JR北海道が夜行快速「ミッドナイト」や、夜行急行「はまなす」(青森~札幌)を運行していた区間ですが、2024年現在は「函館特急ニュースター号25便/126便」だけ。ただ25便、126便のダイヤはかなり便利です。

 札幌発函館行きの25便を例に挙げると、主な区間は札幌駅前午前0時発で、新函館北斗駅前4時53分着、函館駅前5時30分着というダイヤ。6時39分発の「はやぶさ10号」に乗り換えれば、新青森7時43分着、仙台9時31分着と、広範囲に夜行の効果があります。

 一方の函館発札幌行きの126便は、東京19時20分発の「はやぶさ43号」から乗り継げます。この列車は仙台20時54分発、新青森22時32分発、新函館北斗23時29分着で、126便は函館駅前23時40分発、新函館北斗駅前午前0時34分発、札幌駅前5時34分着です。

 かつて存在した夜行急行「はまなす」は、東京18時20分発の「はやぶさ31号」と接続し、青森22時18分発、函館1時23分発、札幌6時7分着でしたので、「はまなす」に近い使い方ができる夜行バスでもあります。

始発から利用する人はまれ!?

 では126便に始発から乗ってみましょう。「函館特急ニュースター号」の函館側の始発はJR函館駅ではなく、北海道バスの函館支店がある上湯川停留所です。路線バスもない時間なので、タクシーで上湯川に向かいましたが、コンビニもかなり遠くにあり、途中に乗客向けの休憩停車はないので、ドライブインでの買い物も不可。事前に買い物しておかないと大変なことになります。

 始発の上湯川から乗る人はいるのかとバスの乗務員に聞きくと、「ごくまれですね。札幌駅行きで乗車が多いのは、函館駅、五稜郭駅、五稜郭公園、新函館北斗で、降りるのは圧倒的に札幌駅です。上湯川行きは新函館北斗駅での下車も多いですよ」とのこと。この時点で、1+1+1列のトイレ付きバスは車内に筆者(安藤昌季:乗りものライター)1人、乗務員は2人ですが、こちらでも人員確保は大変なようです。

 着席します。リクライニングシートは十分に倒れ、肘掛けの角度や座席形状、枕の具合も良好です。最前列には鞄のような物体がありますが、これはフットレストで好きな場所に置けます。ほかの席は前席に付いています。ドリンクホルダーやUSBポート、フリーWI-FIもあり、プライベートカーテンを引けば、スマートフォンを触ってもあまり迷惑にならなさそう。この先で多くの人が乗ってきましたが、なかにはプライベートカーテンを使っていない人もいて、地域性かなと感じました。

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座席の様子(2024年6月、安藤昌季撮影)。

 一般道のため、ガクガク揺れて走ります。23時20分に最初の停留所である湯の川温泉に停車し、若い男性が1人乗車。続いて23時35分、函館駅前では14人が乗車しました。乗務員が、乗客1人ひとりの名前を確認し、座席番号や位置を丁寧に伝えます。

 事前予約のないおばあさんが現金支払いで乗車しましたが、足を悪くしているようで、段差のあるバスは大変そう。乗務員が介助して座席に案内していました。

 自動放送で「道央自動車道で札幌に参ります」と流れましたが、まだ停留所があります。

便利なダイヤで盛況

 23時51分、五稜郭公園で3人乗車。続いて日付が変わった午前0時5分、五稜郭駅前で3人、0時10分の昭和二丁目では2人が乗車しました。「PayPayで支払いました」「確認します」とのやりとりに、現代の乗務員は確認する事項が多くて大変だと感じました。

 そして0時34分の新函館北斗駅前では乗車ゼロ。終電後の駅舎内で待機はできないので、冬季は函館駅前からの乗車が推奨されています。函館支店では、事前の予約は15人と聞いていましたが、筆者を入れて乗客は24人。直前予約が多いのでしょう。定員は29人ですから、乗車率は83%。なかなかの盛況です。出発後、車内は消灯しました。

 乗務員から案内があり「途中休憩に2回停車しますが、乗務員用で、お客様の下車はできません」とのこと。うつらうつらしていましたが、1時51分と3時51分に休憩停車がありました。

 翌朝は5時5分の本社前(札幌市清田区)から停車が始まり、直前の4時47分より天井の電灯が付きます。不思議なバス停名ですが、調べると北海道バスの本社のようです。降車はなく、通過でした。

 5時14分着の月寒中央通11丁目は、札幌市営地下鉄東豊線の福住駅(札幌市豊平区)近くで1人が下車。5時20分着の豊平郵便局前は通過でした。そして、定刻である5時34分より5分ほど早く札幌駅前に到着しました。下車した15人は若い乗客ばかりで、女性も多くいました。

 早朝に札幌駅に着くことで、6時52分発の網走行き特急「オホーツク1号」や、7時30分発の稚内行き特急「宗谷」といった、通常は札幌に前泊しなければ乗車できない列車を利用できるのも126便の価値です。

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すすきの駅(画像:写真AC)。

 5時40分着の大通りバスセンター前では2人下車。足の悪いおばあさんへ乗務員が声かけし、介助されながら下車していきました。そして終着の市電すすきの前には5時48分着。残る6人が下車しました。

 バスの停車位置近くには、地下鉄すすきの駅の出口がありますが、始発前でシャッターが閉まっていました。

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