「東京まで行かない新幹線」何がメリット? 「大宮駅始発・終着」市が国へ要望 かつては臨時で存在

現在、JR東日本の東北・上越方面へ向かう新幹線で、大宮駅を始発・終着駅とする列車はありません。その実現をさいたま市が国へ要望しました。果たして実現するのでしょうか。

さいたま市が新幹線「大宮駅始発列車」の復活を要望

 さいたま市は2024年6月、国への2025年度に向けた要望に「新幹線の大宮駅始発復活に向けた支援」などを盛り込みました。市が掲げる「東日本の中枢都市」の実現に向け、定期便も含めた大宮駅始発列車を国交省に対して要望していくとしています。

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東北新幹線(画像:写真AC)。

 大宮駅の新幹線ホームは3つ(3面6線)もあり、東日本の新幹線駅では最大規模です。東北・上越新幹線の開業当初は、全列車が大宮駅始発・終着でしたが、東京駅までの延伸が実現した現在、定期で大宮駅を始発・終着とする列車はありません。
 
 北海道・東北・秋田・山形・上越・北陸の新幹線列車が集中する東京~大宮間は、線路容量が逼迫し、繁忙期はひっきりなしで列車が走るボトルネック区間となっています。
 
 市は、首都圏が果たすべき役割や方向性を定めた国交省・関東地方整備局の指針「首都圏広域地方計画」において、大宮が「東日本の玄関口」に位置付けられたことから、駅の機能強化が必要と指摘。さらに高速交通網を活用するために、大宮駅を始発・終着とする列車復活に向けた支援を求めていく方針を示しています。
 
 臨時便では過去に大宮駅始発列車が設定されたことがあり、2017年度に6本、2018年度に13便、2019年度に20便、2020年度に13便が運行されています。特に、大宮を6時ちょうどに発車し、新函館北斗に9時41分に到着した「はやぶさ101号」は、到着地での滞在時間を長くとることができ、利便性が高い列車でした。

実現のカギは新幹線の荷物輸送か

 ただ、その後はコロナ禍もあり、大宮駅始発列車に関しては設定されない状態が続いています。東京発着の定期列車と比べると訴求力が落ちるため、臨時列車も基本的に東京発着で運行されているのが現状です。
 
 東海道新幹線では、新横浜駅を始発駅とする定期列車「ひかり393号(現在は533号)」が2008年に誕生。その後、2023年3月の相鉄・東急新横浜線開業に合わせ、同じく新横浜駅を始発とする「のぞみ491号」が新設されましたが、現時点では定期化に至っておらず、臨時列車にとどまっています。東京駅発着でない新幹線は、需要面で課題もあるようです。
 
 一方で追い風となる要素もあります。2023年6月には、JR東日本が推進する新幹線荷物輸送「はこビュン」による多量輸送トライアルとして、盛岡新幹線車両センター青森派出所発・大宮駅終着の「はやぶさ72号」が運転されました。
 
 この列車は、10両編成のうち3両が荷物輸送用、客扱いは5両のみ、グランクラスやグリーン車は営業停止という異色の形態。大宮駅終着となった理由は、大宮駅ホームや屋上駐車場での荷捌きを検証するためです。
 
 JR東日本は将来的に大宮駅屋上駐車場での荷捌きの実現を目指すとしています。今後、「東京まで行かない」ことがネックとなる大宮駅始発・終着列車を実現させるカギは、このような新幹線荷物輸送に合わせて客扱いを行う形かもしれません。
 

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