整備士も戦闘機で飛ぶことがある!? 南国の最前線で見た空自プロフェッショナルの気概
航空自衛隊で戦闘機に乗るのは一般的にパイロットだけと思われがちですが、なかには整備員でも乗れる場合があるとのこと。どうすれば戦闘機に乗れる整備員になれるのでしょうか。そこにはスキルアップも絡んでいました。
パイロットが安心して乗れる航空機を準備
航空自衛隊には戦闘機や輸送機、練習機、さらにはヘリコプターなどさまざまな航空機があります。これら航空機の整備は、これまで点検整備を行う飛行隊所属の整備小隊と、専門的な整備を行う整備補給群に分かれて行われていましたが、作業の効率化を図るため2024年3月に飛行隊から整備小隊がなくなり、「整備補給群」内の整備隊へ統合、一元化されました。
これにより、フライトに関わるライン(エプロンなどでの点検整備)の指揮が、所属長の飛行隊長から整備のプロである整備隊長と修理隊長へ移りました。では、実際の現場は普段どのような仕事をしているのか、スクランブルの回数が桁違いに多く、最前線の基地と称される那覇基地の航空機整備員、いわゆる「APG(Air Plane General)」として働くベテランの染川1等空曹と新人の岩吉1等空士に整備士について話を聞きました。
そもそも、航空機の整備と一口に言っても、その役割は多岐にわたります。航空機は複雑かつ多くのシステムで構成されているため、エンジンやレーダー、計器などそれぞれのシステムを整備する専門の隊員がいます。
一方、こういった専門員が実施すること以外の広い範囲の整備と、航空機の総合的な管理を担っているのが航空機整備員です。
「航空機整備員は、整備の最後の砦としてパイロットが安心して搭乗できる航空機を準備し飛行安全を支えることが主な役割です」(染川1曹)
小さな異物も見逃さない心がけ
航空機の整備を大まかに分けると、任務で戦闘機が飛ぶ前後に行う日常的な整備と、一定の時期が来ると行う専門的な定期整備の2つに区切られます。
整備隊が行う整備について聞いたところ「日常的には飛行前、飛行後点検や計画外整備などを行っています。定期整備は、飛行時間や日数によって管理される計画整備が行われます(染川1曹)」ということでした。
それでは、日常的に行われるF-15の整備とはどのような内容なのでしょうか。岩吉1士いわく「実施しているのは、F-15の飛行前後の点検、タイヤの交換、燃料やエンジンオイルなどの補給、機外燃料タンクの脱着などになります。また、飛行前後に航空機のエンジンが異物を吸い込まないように、航空機の駐機場の小さな石などを拾ったりもしています」ということでした。
F-15には多くの点検箇所があり、整備士は全体的に点検を行うものの、それぞれ受け持ちが異なるのだといいます。
「(航空機整備員は)機体全般を点検しますが、主に燃料系統、エアコン系統、射出系統などの点検整備を受け持っています。燃料系統は、機内と機外の両方タンクに入っている燃料をF-15 の機動を最大限引き出せるように、エンジンへと送り込む役割があります。一方、エアコン系統は、コックピット内の与圧や温度調整、パイロットの耐Gスーツの加圧や電子機器の冷却などを行っています。射出系統は、普段は使用されませんが、緊急時に機体からパイロットを安全に脱出させるための重要な役割を担っています」(染川1曹)
スキル積めば戦闘機に乗れるまでに
では、航空機整備員は自衛隊内でどのようなスキルアップが図れるのでしょうか。一般的には、階級が上がることで部隊の管理職になるイメージですが、整備員としてのスキルはどのように向上していくのか聞いてみました。
「航空機整備員は、必要に応じて航空機の牽引やエンジンの地上試運転、超音波やX線を使った非破壊検査の資格などを取得します。その後は航空機の整備内容に関して合否判定ができる検査員の資格取得を目指します。ここまで至ると最終的にはパイロットとともに航空機に乗って試験飛行が実施できる搭乗検査員の資格を取得するなどといった段階を経るなどして、スキルアップしていきます」(染川1曹)
こうして整備士は、より専門的なスキルを身につけ戦闘機部隊を支えていきます。また、那覇基地第204飛行隊長のように整備士から戦闘機パイロットになった隊員もいます。皆、一様に言えるのは、何よりも「飛行機が好き」という情熱がそこにはありました。
【動画】空自F-15戦闘機 コックピットから那覇基地どう見えてる?
06/08 18:12
乗りものニュース