世界初「EVレッカー車」できました! パワーもバッチリで静か! ただ悩ましい課題も

三菱ふそうが開発・生産する電気トラック「Eキャンター」ベースの小型レッカー車がトラックショーに展示されました。同車は世界初の電気レッカー車になるとのこと。ほぼ完成形ですが、課題はまだ残っているそうです。

電気レッカー車が都市部で活躍しそうな理由

 2024年5月上旬、パシフィコ横浜で開催された「ジャパントラックショー2024」において、株式会社ヤマグチレッカー(以下、ヤマグチレッカー)が世界初の電動式小型レッカー車のコンセプトカー「Eレッカー」を展示しました。

 ヤマグチレッカーは、創業から30年の長い歴史と日本一の納入実績を持つレッカー架装専門のメーカーです。また本業の一環で、ロードサービス業務も行っています。

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「ジャパントラックショー2024」に出展された「Eレッカー」(布留川 司撮影)。

 コンセプトモデル「Eレッカー」は、小型レッカー機材「ホルムス440YM」を三菱ふそうの電気トラック「eキャンター」に組み合わせた特装車です。荷台部分には車両牽引のためのアンダーリフトと一体型ブームを搭載しており、レッカー作業に必須のウインチも定格3620kgのものを装備しています。

 これらは「eキャンター」の「ePTO(モーター式動力取り出し装置)」によって電気で動くため、作業中にエンジンをかけ続ける必要がありません。作動時の排ガスがなく、騒音も軽減されます。

 ロードサービスは基本的に24時間対応で、昼夜問わず、さまざまな場所で作業することがあります。深夜の住宅密集地での作業といったシチュエーションでは、「Eレッカー」の静穏性は大きなメリットになるでしょう。

レッカー車が出動しても牽引必須じゃないから

「Eレッカー」の機能は電気で動くということ以外は、従来のディーゼルエンジン駆動のレッカー車と変わりません。しかし、他のEV商業車でも問題となっている走行距離の制限があり、この「Eレッカー」も想定される走行距離は約200kmほどだそうです。
 
 通常、車両をレッカー移動する場合には、現場についてから牽引する場所(修理工場など)が決まることが多く、この200kmという距離は決して充分な距離とはいえないようです。

 ただ、ロードサービスの一番の目的は、現地での復旧対応であり、常に対象車両を牽引するわけではありません。タイヤ交換やバッテリーあがりの対応など現地で行う作業も多く、走行距離に制限のあるEV車であっても、ロードサービス業務を行うことはできるとのことでした。

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右側面の前輪後方にあるeキャンターの充電用のソケット。架装品と干渉しないようなレイアウトになっている(布留川 司撮影)。

 現時点では、この車両はまだコンセプトカーという位置付けですが、イベント用の展示車というワケでもなく、今後はヤマグチレッカーのロードサービスで実際に使っていくそうです。また、メーカー担当者は「実際にこの車両を使ってみて、そこで得た知見をフィードバックすることで電動レッカー車を改善し、最終的にはお客様にもご提案できればと思っています」と説明していました。

 今回展示された「Eレッカー」は、電動式レッカー車というまったく新しいタイプの車両です。ここで完成というワケではないので、今後は改良され性能がアップした新モデルが登場するかもしれません。

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