「忙しすぎる福岡空港」に新滑走路オープン迫る でもやっぱりキャパオーバーの懸念 「増便のカギ」と「対策」

滑走路1本あたりの発着数がもっとも多いことで知られる福岡空港では、待望の2本目の滑走路の供用開始が迫っています。このことで、これまでの問題は解決するのでしょうか。

2本化でも「年間1万2000回」しか増えない?

 滑走路1本あたりの発着数がもっとも多いことで知られる福岡空港で、2本目の滑走路の完成が近づいています。2025年3月末の供用化予定で、これにより同空港の年間発着数も現在より増える見込みです。しかし、キャパシティーの増大で現状の課題が解決するかというと、まだそうは言い切れない状況にあります。

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福岡空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 福岡空港の新滑走路は、現在ある滑走路(全長2800m)の210m西側に平行する形で設置されます。長さは2500m。滑走路が2本体制になることで、現在の年間発着数である17万6000回から、年間18万8000回に増え、さらに地元の理解を得たうえで年間21万1000回まで増やすことができるとされています。

 その反面、同空港は運用こそ24時間可能なものの、空港周辺地域への騒音対策から、航空機の発着については7~22時に限られています。この「福岡空港の門限」は、2023年9月にフィリピンのLCC「セブ・パシフィック航空」が、22時までに着陸できず出発地のマニラへ引き返したことでクローズアップされたのは記憶に新しいところです。

 空港の発着数がどれほど増えるかは滑走路の本数によりますが、それ以外にも平行する滑走路で同時に発着が可能か、飛行コースはどれほど設定できるかも鍵を握ります。これらを福岡空港に当てはめてみると、新滑走路は現滑走路のすぐ近くに設置されるため同時発着が難しいほか、市街地に囲まれていることから滑走路をさらに増ふやすのは難しいでしょう。

「滑走路2本化」でも便数そこまで増やせないかも…となると解決策は?

 仮に飛行コースを増やすとしても、新たな騒音の懸念を市街地の住民が容認するか心もとなくもあります。今回も、滑走路が2本になるのを機会に「門限」も緩める、という話は聞かれないということです。

 このため、一部では、かつてあった「福岡市沖に24時間運用できる、新たな海上空港をつくろう」という動きの再燃を予測する声もあります。

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北九州空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 今回の福岡空港の滑走路増設は、誘導路などの工事も含めて1643億円とされています。一方、福岡市沖の海上空港論が起きた当時、こちらの事業費は7000億円と言われました。滑走路の増設後、さらに24時間運用の海上空港を建設するとなれば、公費の負担として適切かといった議論が起きるでしょう。

 福岡空港の容量アップのカギとなりそうな「門限」が、今後も緩和も望めないとなると、筆者はまず、近隣空港である北九州空港の一層の活用も視野に入れるのが現実的な方策であると考えます。

 福岡空港の「門限」遅れについて、航空会社によっては同空港の代わりに北九州空港へ代替着陸ができるよう調整が進められています。福岡市内と北九州空港はリムジンバスで1時間30分ほどかかり、福岡空港より利便性は劣りますが、この動きは、北九州空港の有効活用を加速させる可能性も秘めています。

 福岡市は韓国や中国などアジアの、かつインバウンド(訪日旅行者)の大きなマーケットがある地域に近くもあるため、今後も福岡空港の役割は重く、それだけに空港容量のひっ迫は遠からずやってくるでしょう。そのためにも、新滑走路供用開始後のさらなる将来を見通す議論、早いうちから始めることが必要かもしれません。

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