なぜ東海道新幹線は雪で遅れるのか ほかの新幹線との違いは? 理由は雪そのものにあらず

60年前には想定できなかったことがあります。

「氷塊」が厄介もの

 JR東海の公式X(旧Twitter:東海道新幹線〈東京~新大阪〉運行情報)が2024年2月1日(木)、「雪が降ると、なぜ新幹線が遅れるのか」について投稿しました。理由を一言でいえば、「速度を落とすから」です。

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雪の日、スプリンクラーの水を浴びながら快走する東海道新幹線(画像:写真AC)。

 東海道新幹線の沿線において降雪が多いのは、滋賀県の米原地区近辺です。JR東海は、こういった区間を走行する場合は「雪の舞い上がりを防止する」ため、速度を落とすと説明します。

 気温の低い降雪区間を新幹線が高速で通過すると、線路の雪が舞い上がり車体の床下に付着し、冷え固まって氷塊となります。そのまま走行し気温の高い区間へ到達すると、今度は氷塊が溶けて落下し線路のバラストを跳ね上げ、車体の床下を直撃します。床下には車両機器が搭載されているほか、線路には信号ケーブルやポイントなど地上設備もあるため、バラストがこれらを損傷する恐れがあるのです。

 こうしたことを防ぐため、つまり安全のため速度を落とすわけです。速度が遅くなれば雪は舞い上がりにくくなり、被害の発生を抑えることができます。しかしそれでも付着してしまった氷塊は、駅停車時に係員が人力で除去作業を行っています。

 ところで、豪雪地域を走る北陸新幹線や東北新幹線の東北エリアでは、大雪による遅延はほとんど聞かれません。なぜ東海道新幹線は雪による影響を受けやすいのでしょうか。

建設時には未知の領域だった

 東海道新幹線が“雪に強くない”理由は、高架ではない盛土区間が多いためです。東海道新幹線以降に開業した新幹線は高架やトンネルが多いことから、雪対策としてスプリンクラーで大量の水をまき、雪を溶かしています。しかし東海道新幹線では大量の水をまくと土が緩くなり、路盤に悪影響が出る恐れがあります。

 そのため影響が出ない程度の散水を行い、雪を舞い上がりにくい「濡れ雪」にしています。北陸新幹線などは線路周りがコンクリートですが、東海道新幹線が建設された当時、そうしたコンクリートによる土木技術はまだ確立されていませんでした。

 加えて世界で初めて200km/hを越える高速走行を実現した東海道新幹線において、積雪時に前出の氷塊が起点となって悪影響を及ぼすとは想定外でもありました。走行試験も、冬の米原地区で実施されたわけではありません。

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駅停車時、係員が車体床下に付着した氷塊を取り除く様子(画像:JR東海)。

 現在JR東海は対策として、前出のスプリンクラーによる散水のほか、高性能な除雪車の配備、レーザービームで降雪状況を判別する「降雪情報装置」の設置、ポイントへの電気融雪器の設置などを行い、雪の状況を正確に把握のうえ、より適切な速度制限を実施しています。

【図解】ではなぜ速度を落とす?

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