国産潜水艦、初輸出なるか? カナダが日本の最新鋭艦に熱い視線 要件ピッタリ?

カナダでは2023年現在、新型潜水艦の導入計画が進行中です。ただ、同国特有の事情から、どうも海上自衛隊が運用する最新の潜水艦、たいげい型に注目しているとか。初の日本製潜水艦の輸出につながるのでしょうか。

カナダが進める潜水艦リフレッシュ計画

 海中に潜み、静かに標的に忍び寄ることから「海の忍者」とも呼ばれる潜水艦。探知手段が向上した現代においても、水上艦艇にとっては引き続き大きな脅威であり続けています。

 そのため、日本周辺の国々は軒並み新型潜水艦を就役させるなどしており、国家戦略と密接にかかわる兵器の1つにもなっています。そのような中、日本と太平洋を挟んで北に位置するカナダにおいても、潜水艦の話題が盛り上がりを見せています。

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2014年のリムパック(環太平洋合同演習)に参加したカナダ海軍の潜水艦「ヴィクトリア」。後方は海上自衛隊の護衛艦「いせ」(画像:カナダ海軍)。

 カナダ海軍では2023年12月現在、4隻のヴィクトリア級通常動力型潜水艦を運用しています。ヴィクトリア級は、1980年代にイギリスで建造され、1990年代にイギリス海軍で就役したアップホルダー級を、カナダが中古艦として購入したのち再就役させたものです。

 こうした経緯から、カナダ海軍での就役は2000年代前半ではあるものの、実際の艦齢はすでに40年近くに達しています。加えて、ヴィクトリア級は不具合や事故、乗員不足なども影響して、運用体制に大きな問題を抱えています。

 たとえば、2019年と2020年には、4隻すべてのヴィクトリア級について、作戦行動を行うことができていなかったことが明らかにされています。

 そうした事情もあり、軍内部ではヴィクトリア級を更新すべく、後継艦の導入検討が持ち上がったのです。そして、実はこれに関しては日本も他人事ではない模様です。

カナダいったい何隻の潜水艦がお望み?

 まずは、カナダ海軍の潜水艦更新計画について、現状判明している内容を少し整理しておきましょう。カナダ軍では、2021年から「カナダ哨戒潜水艦プロジェクト(CSRP)」が始動しました。これは、将来保有すべき潜水艦の性能や要件などについて、諸外国の潜水艦に関する情報を収集しつつ検討しようというものです。

 なお、カナダ海軍としては最低でも8隻、理想としては12隻の潜水艦導入が望ましいとしています。というのも、1隻の潜水艦を常に運用可能な状態に置こうとする場合、短期および長期整備のためドック入りする艦や、乗員の訓練にあたる艦も考慮すると、最低でも4隻が必要になるからです。そして、カナダは太平洋および大西洋という2つの海に面しているため、それぞれの防衛のために2隻を常時展開させる体制が必要となります。

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2011年、定期整備後に公試中のカナダ潜水艦「コーナーブルック」(画像:カナダ海軍)。

 さらに、最近では北極海におけるロシア海軍や中国海軍の活動に目を光らせる必要性が高まっており、その観点からカナダ海軍による北極海方面での作戦能力向上が求められています。そこで、こちらにも潜水艦を差し向けるとなると、さらにもう1隻を常時展開させる必要があるとして、そこから合計12隻という数字が導き出されたと考えられます。

 ただし、この海軍主導の潜水艦更新計画に関しては、費用高騰に伴う予算面の問題に加え、最低でも現在の2倍の規模の潜水艦戦力を運用するだけの人員を確保できるかがネックになっているようです。こうした点が不透明ということもあり、実際にこうした規模での更新計画がカナダ政府によって認められるかどうかは未だ不明確です。

日本にとってカナダの計画が他人事でない理由

 現在のところ、近代化改修によってヴィクトリア級は2030年代までは運用が継続される予定ですが、いずれは更新が必要となります。そこで注目されているのが、日本の潜水艦です。

 現在のところ、カナダ海軍が次期潜水艦に求める能力としては、以下の4点が重要視されています。
1、 ディーゼルエンジンと発電機、バッテリーなどからなる通常動力型(非原子力)
2、 優れた長距離航行性能
3、 北極海での運用能力
4、 アメリカ製の兵器および戦闘システムの搭載が可能

 そして、これらの要求を満たす潜水艦の1つとして、関係者のあいだでは海上自衛隊の最新鋭潜水艦、たいげい型の名前が挙がっているのです。

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海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」(画像:海上自衛隊)。

 従来の鉛蓄電池と比べて長期間の潜航を可能とするリチウムイオン電池を搭載していることから、たいげい型の航行性能は既存の通常動力型潜水艦と比較して大きく向上しています。また、アメリカ製の各種システムについても、日米間の緊密な協力関係を背景として、問題なく搭載することができると考えられます。

 こうした理由から、たいげい型に注目が集まっているというわけです。実際に、カナダ海軍協会(NAC)が刊行する海軍専門誌「STARSHELL」(2023年冬号)においても、次期潜水艦候補の1つとして、たいげい型の名前が挙げられています。

 さらに、現在、日本とカナダの間では軍事関連の情報漏洩などを防ぐための「情報保護協定」締結に関する協議が進められています。この情報保護協定では、国防当局間のみならず、軍事に関連する産業や技術関係の情報もカバーされるため、日本とカナダの間で防衛産業に関する連携強化が期待されています。

 機密の塊である潜水艦に関しては、まさにこの協定の存在がカギを握るといっても過言ではないでしょう。

 近年、安全保障面での関係強化を推し進めている日本とカナダですが、もしかすると将来、日本の潜水艦がカナダ防衛の中核を担っているかもしれません。

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