「旅客機ベースの空中給油機」ついに肉薄! 米空軍「KC-46A」に潜入…「核爆発にも耐える」だと!?

ボーイング767は旅客機としての生産は事実上終わりましたが、米空軍や航空自衛隊の空中給油機・輸送機KC-46Aとして生産が続いています。米空軍のKC-46Aは濃いグレーの塗装をまとい旅客機と異なる武骨さを感じさせますが、その機内はどうなっているのでしょうか。

まだ生産続く「ミリタリーな767」

 JAL(日本航空)やANA(全日空)でも使用されている旅客機「ボーイング767」、この機は旅客機としての生産は実質終了している状態ですが、767をベースにした空中給油機・輸送機「KC-46A」はまだ生産されています。その機内はどうなっているのでしょうか。今回、実際に内部を取材しました。

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ドバイ航空ショーで公開されたKC-46A(相良静造撮影)。

 KC-46Aは開発中だった767-200LRF(長距離貨物輸送機)に、航続距離を増した767-300ERの主翼と貨物型767-300Fの床面を組み合わせた設計が施されています。この機は、米空軍の空中給油機KC-135の後継として開発されました。米空軍は179機の採用を決め、76機が既に配備されています。航空自衛隊も6機を導入します。

 ボーイングはKC-46Aの生産数増加に向けて、中東地域のセールスを重視しています。このため、2023年11月に開かれたドバイ航空ショーで米空軍の協力の下、機内を公開しました。当地での関心を高めることを狙ったと見られています。

 公開時は、旅客機なら使うことのない右側後部のドアから出入りしました。そのため、給油用の長い「フライングブーム」や米海軍・海兵隊用のプローブアンドドローグ用(空中給油方式のひとつ)の送油口もつぶさに見ることができました。

 機内では後部に置かれたパレット式の座席でまず説明を受け、その後に入った貨物室はライトに照らされ明るかったものの、余計な装飾は一切なく軍用機然としていました。操縦室の後ろにある給油用の操作席は後ろを向いて設けられ、天井には、KC-46A自身が空中給油を受けた際に燃料が流れるパイプがむき出しで走っていました。胴体側面も旅客機と異なり、外板の継ぎ目もはっきりと分かりました。

 床面は貨物積載用のパレットを乗せるためのレールが走り、そのパレットは前後左右へ自在に移動できるように球体が埋め込まれています。旅客機の痕跡を残すものと言えば、ラバトリー(洗面所)の内装、前車輪と牽引車をつなぐ装置「トーバー」が載せられていたことくらいでしょうか。

KC-46A、どんな強みが?

 ボーイングは機内での説明で、KC-46Aは767から派生させる際に軍用機としてゼロから設計したとしています。そのうえで、「核爆発によって起こる電磁パルスにも耐える」「夜間でも可視光を使わずに運用できる」と、能力の高さをアピールしていました。

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ドバイ航空ショーで公開されたKC-46A(相良静造撮影)。

 KC-46Aのような旅客機から派生した低翼高床式の機体は、C-17やC-130など高翼低床式の輸送機と違い専用の機材が必要で、貨物の搭載と荷下ろしに時間はかかり、展開地域も限られるでしょう。

しかし、座席を設けたパレットを並べて人員輸送ができ、到着後は空中給油機として活動する2役を担う利便性があります。このため、米軍や航空自衛隊など世界の主だった国は、低床高翼式の輸送機とともに、空中給油機・輸送機も装備しています。

 海外の報道では、サウジアラビア空軍の使う7機のKE-3A空中給油機の平均の機齢は37.2年であるため、ボーイングはこれを念頭に中東でのセールスに力を注いでいるのもしれません。

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